蒼のファンファーレ 原作:古内一絵(青春アドベンチャー) - 格付:AA

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作品:蒼のファンファーレ  
番組:青春アドベンチャー  
格付:AA-  
分類:職業  
初出:2018年5月7日~5月18日(全10回)  
原作:古内一絵  
脚色:池谷雅夫  
音楽:川崎良介  
演出:吉田浩樹  
主演:朝倉あき  

報知杯フィリーズレビュー、そして桜花賞での激闘から1年。
鈴田競馬所属の女性騎手・芦原瑞穂はくすぶっていた。
勝てない。
中央競馬のGⅠに挑戦した瑞穂とフィッシアイズのペアなのに、場末の鈴田競馬ですら満足に勝つことができなくなっていた。
原因はフィッシュアイズではなく瑞穂にある。
なんで自分はこんな場末の地方競馬にいるのか。
なんでその場末でさえ勝てないのか。
騎手を続けていく意味すら見失いかけていた瑞穂に、突然のチャンスが訪れる。
中央競馬にすらめったにいない超良血馬ティエレン。
この馬体500kgを超える勇壮な牡馬がなぜか鈴田に、それも「藻屑の漂流先」と称される瑞穂所属の緑川厩舎にやってきたのだ。



2017年10月に放送をされ好評を博した(当ブログの2017年人気投票で第3位)、古内一絵さん原作の競馬ドラマ「風の向こうへ駆け抜けろ」の続編が早くも登場しました。
タイトルは「蒼のファンファーレ」。
もともとはJRA発行の「優駿」に連載されていた本格競馬ドラマ(膝の故障はジョッキーには致命的、とか知りませんでした)なのですが、原作が発刊されたのは2017年6月ですので、1年経たないうちのラジオドラマ化されたことになります。
やはりNHKにも前作が好評との声が届いていたものと思います。

さて、この「芦原瑞穂シリーズ」ラジオドラマの最大の特徴といえば、やはり出演陣。
本作品も前作のキャストがそのまま引き継がれています。
まずは、近年の青春アドベンチャーにおける女性主演者で最もリスナーに受け入れられたといっていい朝倉あきさん(「放課後はミステリーとともに」、「幻想郵便局」など)が主演。
前作の演技が良すぎたために、序盤は正直「本作品は普通だなあ」と思っていたのですが、第5話の感情が乱れるあたり、そして第10話終盤の叫びまくりの演技はさすがです。
「どんなに苦しくても、歯を食いしばって駆け抜けろ!」

そして芸能界を代表する競馬好きとして有名な、俳優の東幹久さんやお笑いの土屋伸之さん(ナイツ)をメインキャストに据え、競馬専門チャンネルの小林雅巳アナに大レースの「実況」をさせるという成功方程式は本作品でもそのまま引き継がれています。
前作を聞いていたリスナーにとっては、緑川厩舎の厩務員たちを演じる政岡泰志さん、野村昇史さん、永嶋柊吾さんの演技を再び聴けるのも懐かしくてよいもの。
キャストは万全です。
さて、内容は?

前作における瑞穂が全くの新人ジョッキーであったのに対し、本作品の瑞穂は、まだ経験は浅いとはいえ(なにせティーンエイジャーですから)、曲がりなりにもGⅠを戦った経験を持つ立派な職業騎手。
そこでドラマを発生させるとなると、やはりなにか挫折や事件といった波乱を設定せざるを得ません。
本作品では、瑞穂自身が燃え尽き症候群的な状態にある(厳しく言えば単なる慢心なのですが)ことに加え、色々な出来事が次々と起きます。
まず、女性誌などで人気の謎の風水師ワン・ユーティ(ミスター・ワン)が「世界の競馬界を席巻するフランケル産駒」の超良血馬ティエレン(ただし真面目に走らない)を鈴田競馬に持ち込み、なぜかフィッシュアイズにぶつけることを提案してくる。
「風水」?「世界的な良血馬」?
これだけでもぶっ飛んだ展開なのに、さらに様々な要素がてんこ盛りになっていきます。
例えば、日本中の女性騎手を集めたアマテラス杯の開催。
例えば、緑川調教師の過去(オ・ン・ナ関係)。
例えば、今まで全く言及されることのなかった緑川厩舎の先代女将(つまり緑川調教師の母親)の影。
例えば、木崎調教師の毒親問題。
極めつけは、瑞穂の恋?
よく考えるとすべて「女性関係」という点では統一されているのですが、いずれにしろいくらなんでも盛り過ぎだったように感じます。
というのも、アマテラス杯と木崎の母親の話は、話の展開上、必要不可欠なのですが、緑川調教師の過去の女関係と瑞穂自身の恋の話はそうではなく、実際のラジオドラマでも結局、深く掘り下げることなく終わっています。
しかも、前作での第5話折り返し地点は、鬱展開を抜け目標に向かってまっしぐら!という段階だったのに、本作品ではチャレンジの方向性(国内ダートレースの最高峰「チャンピオンズカップ」)が固まるのは後半戦に入ってからです。
さらに、第9回はチャンピオンズカップ当日の朝(スタートまで)だけ、第10回は同じ日のレーススタート以降表彰式まで、と一日を描写するのに全10回のうち2回を使っています。
そのため、第6回から第8回、すなわち瑞穂が決意を固め、チャンピオンズカップに到達するまでの過程が、イベントをこなしただけのような、唐突感が残るものになってしまったように感じるのが少し残念でした。
GⅢ「みやこステークス」なんて随分あっさり勝ってしまいましたし。
「私たち勝たなきゃダメなんです。勝つことが守ることです。それがきっと私にとって勝つ意味なんです。」
メッセージはストレートに伝わってくるんですけどね。
ただ、上に書いたようにチャンピオンズカップ当日に2話をつぎ込む構成は大胆です。
この2話でチャンピオンズカップを競うことになる4人の騎手と4頭の馬をなんとか事前に顔見世させられただけでも大成功なのかもしれません。

なお、今回全10回のサブタイトルは以下のとおりです。

第1回 : 謎の男ミスター・ワン
第2回 : 予言的中?
第3回 : 三角関係の出現?
第4回 : 女の戦い
第5回 : これって恋?
第6回 : ふたりの母
第7回 : 負けない
第8回 : ミスターワンの呪縛
第9回 : いよいよ決戦
最終回 : 戦いの果てに

スタッフについては、今回、脚色が大河内聡さんから池谷雅夫さんに変わったものの、演出の吉田浩樹さん、音楽の川崎良介さんといったその他の主要スタッフは変わらず。
ドラマパートの終了間際からかかり始めた音楽がそのままキャスト紹介につながっていく演出、私大好きなのですが、この作品では毎回、終盤のシーンにあった音楽が選択されており効果はひとしおです。
特に第3回の「なんなの!こォれィ!」には笑いました。

さて、本作品の原作は、今のところラジオドラマ化されたこの2作品だけのようですが、古内さんは3作品目も構想されているそうです。
いつになるかわかりませんが、是非聞いてみたいですね。



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Hirokazu
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