カーミラ 原作:シェリダン・レ・ファニュ(青春アドベンチャー) - 格付:A

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作品:カーミラ  
番組:青春アドベンチャー  
格付:A-  
分類:ホラー  
初出:2018年3月5日~3月9日(全5回)  
原作:シェリダン・レ・ファニュ  
脚色:吉田小夏  
音楽:日高哲英  
演出:藤井靖  
主演:大塚千弘  

深い森に佇む古城に住む少女ローラは、ある日、カーミラという名前の女性と出会う。
同年代の友人を渇望していたローラは、若く美しいカーミラを熱狂的に敬愛し、ふたりは実の姉妹のように仲むつまじく暮らし始めた。
しかし、甘やかな時間は永くは続かなかった。
城の周辺で次々と若い女性の怪死事件が起こっていたのだ。
そしてローラ自身もまた徐々に健康が蝕まれていく。



「吸血鬼」に関する伝承は、ヨーロッパを中心に世界中でみられるそうですが、今日の吸血鬼のイメージを決定づけたのが、ブラム・ストーカーが1887年に発表したホラー小説「吸血鬼ドラキュラ」であることは論を待たないところでしょう。
そしてその「吸血鬼ドラキュラ」に多大な影響を与えたと言われているのが、今回ラジオドラマ化されたシェリダン・レ・ファニュに「カーミラ」(1872年)。
奇しくもファニュとストーカーはトリニティ・カレッジ(現在のダブリン大学トリニティ・カレッジ)の先輩後輩同士なのだそうです。

さて、青春アドベンチャーは20年以上前の1995年に「吸血鬼ドラキュラ」をラジオドラマにしていますが、その際にドラキュラ役を演じたのは大御所声優の柴田秀勝さんでした。
今回、吸血鬼であるカーミラを演じたのは元タカラジェンヌの野乃すみ花さん。
野乃さんの青春アドベンチャーへのデビューは2016年の「雨にもまけず粗茶一服」でしたが、印象的なのはやはり圧巻の演技で気の強い大公妃ゾフィーを演じた「帝冠の恋」(2017年)。
ゾフィーの存在感が強すぎて、野乃さんのことも勝手に堂々たる洋風の美人を想像していたのですが、you-tubeの動画などを見ると、どちらかという和風の美人で、しゃべり方も少しシャイな感じであるのが少し意外でした。
それはさておき、本作品のカーミラは吸血鬼という強烈な属性を持つ割には、ゾフィーのような確固たる自己を持つキャラクタ-ではなくではなく、割と状況に流されるタイプです。
そのため野乃さんの演技もゾフィーとはかなり違う感じ。
そして、大塚千弘さんが演じる主役のローラは、それに輪をかけて、よく言えば素直な、悪く言えば自分がなさそうな、育ちの良いお嬢さんです。
大塚千弘さんも「海に振る」などでは我の強い現代っ子を演じていましたので、それに比べると随分と猫を被った演技です。
野乃さん、大塚さんの、既存作品のキャラクターとの演じ分けもなかなか興味深いところでした。

何はともあれ、本作品はこの女性お二人の関係を軸にお話が進む作品なのですが、この「女性お二人」というのが本作品の最大のポイントなのです。
というか、はっきり言っちゃうと、本作品を特徴づける最大の要素は、青春アドベンチャーではかつて見たことがないほどの「百合」っぽさ。
いやーこんなのNHKでやっちゃっていいのかなあ、と思わずにはいられないほどの怪しい雰囲気。
「初めての痛みと白い肌の夢のようなぬくもり…」ってオイ!
以前、放送された「僕たちの宇宙船」がBL的な意味で一部のファンに人気があるのを知ったときは、「ああそういう受け取り方もあるのね」としか感じませんでしたが、本作は狙ってやっているようにしか見えません。

さて、本作品の原作はローラの手記という形態を取っており、少女であるローラの視点のみから事件が描かれるため、謎解き的にはあえて曖昧な部分を多く残しているのが特徴なのだそうです。
それに加えて、本ラジオドラマも通常の10回枠の半分の5回枠で放送された小品であり、説明不足な点が多々あります。
例えば、吸血鬼の生態自体がわかったようなわからないような状態(花でかぶれるという設定はどこへ?カーミラの母親はどうなった?どういう場合に吸血鬼になるの?)ですし、全体の展開もストーリーがシンプルな割にはわかりづらい。
しかし、本作品では小品であることを逆手にとって、主人公ふたりの関係性にだけ焦点を当てる脚本になっています。
なにせ第4回の終盤まで大きな動きもなくひたすら百合百合しい展開が続きますし、その後の肝心の「吸血鬼退治」もごくあっさりしたものです。
ホラーやサスペンスといった要素は最低限に抑えて、一品丸ごと使って、百合ものをやることに特化するというのは、ある意味すごいこと。
制作陣のチャレンジングスピリットには素直に敬意を払いたいと思います(実はそこまで考えていなかったりして)。



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Hirokazu
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