毒見師イレーナ 原作:マリア・V・スナイダー(青春アドベンチャー) - 格付:A

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作品:毒見師イレーナ  
番組:青春アドベンチャー  
格付:A+  
分類:異世界  
初出:2018年1月29日~2月16日(全15回)  
原作:マリア・V・スナイダー  
脚色:荒木敏子  
音楽:坂東邑真  
演出:真銅健嗣  
主演:内堀律子  

「イレーナ、君に選択肢を与えようじゃないか。」
悪名高きヴァレク、謀略で暗殺でこの国を支えてきた防衛長官が、イレーナに告げたのは意外な提案だった。
「死刑か、それとも最高司令官アンブローズの新しい毒見役になるか、どちらか選びなさい。」
孤児だったイレーナを育ててくれた第五軍管区の将軍ブラゼルの一人息子レアードを殺したイレーヌ。
暗い地下牢に投獄されてもう1年。
極刑は免れない。
いや、でもチャンスがあるならやはり生き延びたい。
たとえそれが死ぬより過酷な運命だったとしても。



アメリカの作家、マリア・V・スナイダーの処女作「毒見師イレーナ」をラジオドラマ化した作品です。
ジャンルは一種の「異世界ファンタジー」。
王政の打倒後、一種の軍事独裁政権が支配している「イクシア領」なる架空の国が舞台となっています。
イクシア領の支配者は「最高司令官」の称号を持つアンブローズで、その側近として防衛長官のヴァレクが首都に詰めています。
また、地方部は5つの軍管区にわかれ、それぞれに「将軍」が配置されているようです。
イクシア領には「行動規範」と呼ばれる法律のようなものが制定されており、この行動規範の厳密な運用により一種の恐怖政治が敷かれています。
そしてこの世界には「魔法」というものが存在するのですが、なぜか「イクシア領」で魔術師は迫害され、ほとんどが隣国シティア領に亡命しているという設定です。
本作品はまずこの世界観の説明と、イレーナが毒見役になるまでの経緯で、第1週の5話を使っています。
そしてイレーナに最初の危機が迫った状態でいよいよ第2週・第3週へと移っていくのですが…
残念ながら残り10回を使っても国家間の存亡をかけるような大戦争は起きず。
もちろん、特殊な生まれ・過酷な育ちで人を信じることが難しいイレーナが、さらに裏切られながらも、自分を信じ、人を信じて成長して姿はなかなか聞きごたえがあります。
また、終盤には最高司令官アンブローズの身に重大な危険が迫るなど、大きな事件も起きます。
ただそのほとんどが首都の一角と、第五軍管区の一部で起きる陰謀劇・内乱劇であるため、爽快さにはやや欠ける展開であったと言わざるを得ません。
そしてこれは、同時に世界観の多くの部分が明かされないまま終わったことも意味します。
他の4つの軍管区とそこを統治する将軍の姿は全く示されませんし、魔法の意味や周辺諸国の実情も同じく。
さらに最後の最後に「サルタナの血統」などどいう意味深なワードを出してくるなんて、ずる過ぎます。
やはりこれは「大きな物語の途中の小さな結末」に過ぎない終わり方といえるでしょう。

さて、出演者の紹介に移ります。
まず昔からのNHK-FMのラジオドラマファンとしては、どうしても松田洋治さんのことに言及せずにはおられません。
松田さんは1980年代からNHK-FMの常連で、「シュナの旅」、「645~大化の改新・青春記」、「オルガニスト」などなどなど、数々の話題作(?)に出演されてきました。
その縁を買われたのか2015年の「今日は一日ラジオドラマ三昧」のMCをされたのは記憶に新しいところ。
2017年にはFMシアター枠の「異人たちとの夏」に出演されていますが、青春アドベンチャー枠へのご出演は2009年の「ふたつの剣」以来なのではないかと思います。
それにしても松田さんの声は変わっていない。
今でも「アルバイト探偵」のリュウができそうです。
それでいて、今回の役どころである防衛長官(いわゆる内務大臣的な治安警察の長?)という陰惨な人物も違和感なく感じられるのはさすがです。
その他、最高司令官アンブローズを演じる高戸靖広さんの中性的な声もよく役にあっています。
それにしてもアンブローズとヴァレクって、独裁者とその走狗なんだよなあ。
作中では、統治に私心なく、政策は良心的で、主人公にも好意的ではあるのですが、カストロやホー・チ・ミンのような例外を除いて、暴力で政権を奪った軍人って堕落していくのが世の常。
彼らもイレーナに見せるの違う一面があるのでないかと思うとなかなか複雑です。

そして、その主人公イレーナを演じるのは内堀律子さん。
もともとサッカー選手(U-17、U-19日本代表)という異色の経歴の持ち主で、現在は文学座の準座員。
NHK-FMでは2016年の「I want to be.ケンジノウタ」への出演経歴がありますが、主演はもちろん初めて。
長期シリーズになるといいですね。
そう、先ほども書きましたが、この作品の原作はすでに日本語版が三部作(「毒見師イレーナ」、「イレーナの帰還」、「最果てのイレーナ」)として発表されているうえに、新シリーズの刊行も続いているようです(「イレーナ、失われた力」以下続巻)。
実は本作品の演出は青春アドベンチャーの「守り人シリーズ」を2巻(闇の守り人)までラジオドラマ化した真銅健嗣さんです。
先ほど書いたとおり本作品のストーリはまだ途上。
個人的には、ご都合主義がすぎるロマンスは不要な気もしますが(「私は君という毒にやられた只の男だ」にはちょっと苦笑)、
守り人シリーズ同様、本ラジオドラマもまた続きが必要な物語だと思います。

そして守り人シリーズといえば、守り人シリーズでバルサを演じた唐沢潤さんも魔術師アイリス役で本作品に出演されています。
正直なところ、アイリスが登場したあたりでは「この作品に魔法要素はいるのか?」という思いが強かったのですが、魔術要素はほどほどに抑えられており、許容の範囲内かと思います。
そしてアイリスというキャラクター自体も登場当初は相当胡散臭く、いけ好かない性格だったのですが、だんだんバルサ風になったというのは変な表現ですが、(女性だけど)男気のある言動が多くなっり、好ましいキャラクターになっていきました(あんな優しい性格で潜入諜報員が務まるのだろうか)。

他にも、「いまはむかし~竹取異聞」や「魔岩伝説」と同様のいつもの朗々たる美声で、性格の歪んだレアード(物語冒頭で死ぬ割には全編で登場する)を演じる細見大輔さんや、作品一のいいコンビ・アーレンとジェンコを演じる羽場涼介さんと茶花健太などが衣装的な出演者です。

それにしてもなぜクリオロは二人にだけ特別に効果があったのでしょう?
原作には書いてあるのかな?

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Hirokazu
Posted byHirokazu

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