I want to be. ケンジノウタ 作:樋口ミユ(FMシアター) - 格付:A

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作品:I want to be. ケンジノウタ  
番組:FMシアター  
格付:A-  
分類:幻想(日本)  
初出:2016年7月9日(全1回)  
作 :樋口ミユ  
音楽:澁江夏奈  
演出:小宮山佳典  
主演:水石亜飛夢  

聞こえただろ、歌だよ。
ほら、あの歌、ケンジの歌…

高校3年生の時、親友が死んだ。
死んだけど悲しくはなかった。
なぜなら、ケンジの声は相変わらず聞こえていたから。
彼は聞いてきた。「いつまでも覚えていられる?」
すっとそばにいる彼を忘れるわけがない…
でも、その10年後、くだらない毎日を過ごす僕はあっさり忘れていた、ケンジのことを、ケンジの歌を。



本作品「I want to be. ケンジノウタ」は、NHK-FMのラジオドラマ番組「FMシアター」で、全1回50分で放送された作品です。
FMシアターでは2016年7月に「宮沢賢治生誕120年企画 劇作家競作シリーズ・賢治の声を探して」と題して、4回連続で宮沢賢治をトリビュートしたオリジナル作品を放送しました。
本作品はその第1弾として放送された作品で、脚本は女性劇作家の樋口ミユさん。
ちなみに、樋口さんは、本ブログで主として扱っている帯ラジオドラマ番組「青春アドベンチャー」でもオリジナル長編が2作品採用されている数少ない脚本家さんです。
この2作品のうち特に2013年の「僕たちの宇宙船」は、脚本:樋口ミユ、音楽:澁江夏奈、演出:小宮山佳典と主要スタッフが一致し、内容的にも複数の若い男性のやり取りを主とした作品であるという点(両作品に上村祐翔(うえむら・ゆうと)さんが重要な役割で出演)や歌を積極的に使った作品である点で類似しています。
ただし、「僕たちの宇宙船」が未来を舞台としたSF的な作品であったのと比較すると、本作品の舞台は現代の日本なので、一見した雰囲気はかなり違うのですけどね。

さて、冒頭に書いたように本作品は宮沢賢治トリビュート作品ではあるのですが、ストーリーに直接影響を与える宮沢賢治要素は、「雨ニモマケズ」の詞だけです。
舞台は現代の日本。
水石亜飛夢(みずいし・あとむ)さんが演じる主役のトシは、高校の入学式の日、屋上で偶然に出会ったケンジ(演:上村祐翔)と親友になりますが、卒業式を待たずしてケンジは死んでしまいます。
そして、卒業して社会人として暮らしていくうちにいつしかケンジのことを忘れてしまうトシ。
しかし、何もかもうまくいかず人生が行き詰まりかけたときに、ようやくトシはケンジのことを思い出します。
このトシとケンジが初めて出会ったときにケンジが屋上で歌っていた歌の歌詞が「雨ニモマケズ」なのです。
ただし、英訳された歌詞“I will not give into the rain. I will not give into the wind.”(=雨ニモマケズ、風ニモマケズ)なので、聞き流してしまうとまるでわからなのですけどね。
本作品でまず印象的なのは、このナイーヴな青年ケンジを演じた上村祐翔(うえむら・ゆうと)さんの穏やかな口調と優しい歌声。
青春アドベンチャーでは2003年の「光の島」でデビューした上村さん。
「光の島」の頃は子役だった上村さんですが、その後の声変わり後に主演された「僕たちの宇宙船」、「クラバート」、「文学少年と運命の書」といった作品でも優しげ雰囲気は変わらず。
特に登場人物が若い男子ばかりという設定の「僕たちの宇宙船」は、(twitterでみるかぎり)そっち方面の女性に人気だったようですが(青春アドベンチャーでこのファン層は予想外だった!)、本作品もトシとケンジの何とも言えない距離感に限れば、「僕たちの宇宙船」に優るとも劣らない、その手の方々に訴求しそうな要素を持つ作品といえると思います。
ただ、内容はあまり女性向けではないかもしれません。
モニター越しに人を殺す「未来型の傭兵」は、芝村裕吏さんの小説「マージナル・オペレーション」などでも取り上げられえているモチーフですが、あくまで指揮官である「マージナル・オペレーション」の新田とは違って、本作品では主人公はスナイパーとして直接手を下す立場ですので生々しさが違う。
終盤、その重さに耐えられなくなったトシの錯乱の演技はなかなかショッキングで、あのあたりの展開は少し重すぎるかもしれません。
なお、いつものこのブログならこの辺で「マージナル・オペレーション」の話に脱線していくのですが、今回は「マージナル・オペレーション」については以下の2点だけ意見を述べておくにとどめましょう。

①最近始まった続編はやっぱり蛇足なのではないか。
②新田がロリコンではないのはよくわかった。ところで作者は?

さて、話を「I want to be. ケンジノウタ」に戻し、最後はそのほかの出演者について。
まず印象的なのは「死神」(本物の死神ではなく、そういうあだ名のやくざ的な人物)を演じる石橋徹郎さんの、奇矯でいやらしい笑い声。
女性の出演陣としては、2018年に「毒見師イレーナ」で主演することになる内堀律子さんがヒロイン(?)中森を、「走れ歌鉄!」でシドウ役だった大浦千佳さんがケンジの妹・としを演じていらっしゃいます。

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Hirokazu
Posted byHirokazu

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