天下城 原作:佐々木譲(青春アドベンチャー) - 格付:A

0 Comments
作品:天下城  
番組:青春アドベンチャー  
格付:A  
分類:歴史時代  
初出:2017年11月13日~11月24日(全10回)  
原作:佐々木譲  
脚色:小林克彰  
演出:藤井靖  
主演:横田栄司  

落城の光景が忘れられない。
もし城さえ落ちなければ、侵略者の武田に囚われて、奴隷のような毎日を送るようなこともなかったはずだ。
だから、虜囚の立場からようやく抜け出した私、戸波市郎太(となみ・いちろうた)がやりたいことと言ったら、城を作ることしかなかった。
それも決して落ちない「不落の城」をだ。
石積み職人になったのもそのためだ。
そして、目の前の傲岸な男はそれをやらせてくれるという。
「天下人となる意思を示す城」、すなわち「天下城」。
それは決して落ちない「不落の城」でなくてはならない、その男、織田信長はそういったのだ。



本作品「天下城」は、戦国時代の石積み職人集団「穴太衆」(あのうしゅう)を題材とした佐々木譲さんの小説をラジオドラマ化した作品です。
本作品は2014年に同様に青春アドベンチャーでラジオドラマ化された「獅子の城塞」の前日譚的な作品で、「天下城」の主人公である戸波市郎太(となみ・いちろうた)の息子が「獅子の城塞」の主人公である戸波次郎左(となみ・じろうざ)という関係にあります。
ただし、世代が一世代違うため次郎左以外の登場人物は全く被りませんし、舞台がヨーロッパに広がる「獅子の城塞」と比較して、本作品「天下城」はあくまで戦国時代を舞台とした日本の歴史ものですので、基本的にはシリーズものではなく別作品と考えてよいと思います。
それにしても「獅子の城塞」放送時に、このブログで「天下城もラジオドラマ化したら面白そう」と書いていた私としてはちょっと嬉しい作品チョイスだったりします。
また、佐々木譲さんは「廃墟に乞う」「笑う警官」「警官の血」などといった警察小説でも有名な方でもあります。
ちょうど少し前に「警官が主人公のラジオドラマ」という記事をアップしたところでもありますし、次は警察小説のラジオドラマ化なども期待したいところです。
アドベンチャーロード時代の「檻」(北方謙三さん原作)みたいなガチガチなハードボイルドもたまにはいいんじゃないでしょうか(注:実際に次にラジオドラマ化されたのは本作品と同じ歴史ものの「武揚伝」(2018年)でした)。

さて、話が脱線してしまいましたが、本作品は警察ものではなく歴史ものです。
舞台は戦国時代末期、いわゆる織豊時代。
近江で寺社の石垣を施工していた「穴太衆」(あのうしゅう)を取り上げた作品です。
戦国時代は戦乱が続いていた時代ですので、現代の我々からすると、さぞかし勇壮なお城がたくさんあったのだろうと想像しがちですが、実際は自然の地形を利用した山城や、塀や堀、土塁(土製の堤防)、城門などを設置した館の延長線上にある建物が、いわゆる「城」でした。
そのため手間のかかった石垣や巨大な天守閣といった、現代のわれわれが想像する城的な要素は少なかったのが、戦国時代までの城の常識であったようです。
その常識を覆したのが織田信長の「安土城」。
増加する一方の銃器対策、経済政策の重要性の増大、そして城主の権威付けの面から、以降の城はこのような形態が一般化していくわけですが、この安土城の石垣を施工して一躍、名を挙げたのが穴太衆というわけです。
本作品は、その穴太衆が活躍していく歴史を、戸波市郎太の個人史と重ね合わせ、さらに織田信長を準主役級で登場させることによって、ドラマチックなフィクションに仕立てあげた作品です。
ただ、「長篠の合戦」の着想(夜戦築城による騎馬隊の侵攻阻止)まで、いち石積み職人である市郎太の功績にしてしまうのでは少しやり過ぎだとは思いますが。

物語は少年時代の市郎太が、武田のもとから逃げ出すところから始まります。
この少年時代(青年時代?)の市郎太を演じたのは、平埜生成(ひらの・きなり)さん。
アミューズに所属する24歳の俳優さんで、舞台を中心に活動されている方のようです。
市郎太役としての平埜さんの出番はおおむね第4回終盤までなのですが、後半には別の役で平埜さんは再登場します。
なんの役かって?
ここでは未視聴の方のために伏せますが、お察しのとおりと考えて結構です。
また、市郎太のいとこで、武田からともに逃げ出すものの、市郎太とは別の方法で過去に向きあうことを洗濯する中尾辰四郎(青年時代)を演じたのは大久保祥太郎さん(22歳)。
大久保祥太郎さんって、2006年に「精霊の守り人」でチャグムを演じた方じゃないですか。
「まあ、こんなに大きくなって…」と感慨もひとしおに感じる反面、「守り人シリーズ続行は無理だなあ」とちょっと複雑な気持ちにもなったりします。

そして第4回終盤からはいよいよ大人の市郎太の登場。
すなわち主演の横田栄司さんの出番でもあります。
横田さんは文学座所属の46歳の舞台俳優さん。
彫りの深い顔の二枚目ですが、声は少し飄げた感じで、声だけのラジオドラマでも埋もれない個性があります。
ただし、本作品、横田さんの演技をもってしても市郎太の活躍を存分に描けていないという印象が強いのが残念。
これは本編が実質的に6回分しかないことに起因していることは明らかだと思います。
もともと「獅子の城塞」以上にボリュームがある作品を15分×10回に押し込むこと自体に無理があり、全般的にダイジェスト作品感は否めません。
哀感が漂うラストも、ハッピーエンドではないものの、戦国の世を自分なりの価値観で生き抜いた市郎太からすれば決して悪くない
結末だと思いますが、特に「長篠の合戦」以降の年代も飛び飛びであることもあり、あまり深みにつながらず。
飛び飛びといえば「獅子の城塞」につながる次郎左の船出も省略されています。
この辺は、「獅子の城塞」を聞いてくれということなのかもしれませんが、それならば本作品のすぐに後に「獅子の城塞」を再放送する、なんていう工夫があると嬉しかったように思います。

なお、本作品で織田信長を演じているのは、元劇団四季のミュージカル俳優である岡幸二郎さん。
なんと青春アドベンチャーでは「白狐魔記 戦国の雲」(2015年)に次いで2度目の織田信長役です。

関連記事

★本文内のリンクについて★
本ブログは、紹介したラジオドラマからスタートして、関連している作品、していない作品、原作などの様々な作品に興味を持っていただきたいと思い、本文の随所にリンクを設置しています。
なお、アマゾンの画像リンクについてはこちらのご注意事項もご参照ください。

Hirokazu
Posted byHirokazu

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply