青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

サイコサウンドマシン  作:大原まり子(サウンドドラマ)

0 Comments
Hirokazu
作品:サイコサウンドマシン  
番組:サウンドドラマ  
格付:C  
分類:SF(その他)  
初出:1997年11月24日(全1回)  
作 :大原まり子  
音楽:長生淳  
演出:工藤裕一郎  
主演:太田真一郎  

上司から命ぜられた新たな業務は、研究部門が制作した新型のリラクゼーションマシンをテストすることだった。
神宮寺なる胡散臭い開発者がいうには、この機械は「専用に開発された人工知能が対話をしながら精神分析を行う」仕組みで、「理想のリラクゼーションマシン」らしいのだが…



本作品「サイコサウンドマシン」は、「ハイブリッド・チャイルド」(星雲賞)や「戦争を演じた神々たち」(日本SF大賞)で有名な女流SF作家、大原まり子さん原作のラジオドラマです。
小説版は、2001年に光文社から刊行された短編集「超・恋・愛」に収録されているのですが、作品の発表年代及び大原さんのホームページ(外部リンク)の情報からみると、小説をラジオドラマ化したのではなく、ラジオドラマ向けに書き下ろした作品を小説としても発表したもののようです。
ちなみに大原まり子さんは青春アドベンチャー枠では「タイム・リーパー」もラジオドラマ化されています。

さて、本作品は第35回のギャラクシー賞(テレビ・ラジオ番組の賞)のラジオドラマ部門の奨励賞を受賞した作品とのこと。
お堅い賞を取る作品はお堅い作品と相場が決まっており、例えばエンタメラジオドラマ番組である青春アドベンチャーからは四半世紀にも及ぶ長い歴史の中で3度しか受賞作品が出ていません(「イッセー尾形のたゆたう人々」、「少年漂流伝」、「光の島」)。
そういった中で本作品のようなSF作品が受賞するのは快挙なのではないかと思って聞いてみたのですが…
本作品、SF作品とは言え、万人が認める娯楽作品とは言い難い作品でした。

というのもまず舞台設定が地味。
主人公の武彦が胸から上全体を覆う形式のリラクゼーションマシン(今日のフィクションの言葉で言えば「フルダイブ型のVR装置」といったところでしょうか)を使って、ヴァーチャルな世界で自己の内面と向き合うというのが舞台設定。
ただし、ヴァーチャルな世界と言っても架空の異世界で大冒険をするわけではなく、あくまで彼自身の心の内面、心象風景。
「新世紀エヴァンゲリオン」(TV版)をご覧になっている方であれば、終盤のアレの雰囲気といえば想像できるのでないでしょうか。
実際にあったのかも定かではない武彦と彼の母親との過去の出来事の再現、そしてそれについての人工知能(マシン)との対話が作品の全てです。
構成的にも、細かい場面の積み重ね進んでいくため、全体のストーリーはあってないようなものであることもエヴァ的。
おまけに母親役が林原めぐみさんなのがエヴァ感を一層、引き立てます。
正直言いますと、私、エヴァのアレ、あまり好きではなかったんですよね、自己啓発セミナーみたいで。
そもそも、冒頭の武彦の様子を聞いていると特に自己のアイデンティティ確立に悩んでいる様子もないのに、無理矢理秘めていた過去を暴く必要はあったんですかね?
バイノーラル・ステレオで作られている音響効果はなかなか聞き応えありますし(耳から***を吸われるあたりはいい意味で嫌な感じ)、心理療法監修(村井靖児さん)を付けているなど本格的な本作品。
こういうのが好きな人には受けるのだと思いますが、一言で言って私には高尚すぎました…

さて、本作品の主役である福井武彦を演じたのは声優の太田真一郎さん。
ナレーターとしても活躍されており、その方面でいえは「料理の鉄人」の冷蔵庫前レポーターやPRIDEのリングアナウンサーをされていた太った人と言えば、思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。
また、上で述べたように母親・姉などのほかに、人口知能(マシン)やラ・ムーの声を役を演じたのは、1990年代を代表する人気声優だった林原めぐみさん。
普通の人間の役とマシンの声を完全に演じ分けているのはやはり見事です。
林原さんの代表作とも言える「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイを演じたのが1995年ですので、本作品はその2年後の作品と言うことになります。
また、タテヤマ音響技術研究所の神宮司博士を演じた内海賢二さんは、「北斗の拳」のラオウ役や「Dr.スランプ アラレちゃん」の則巻千兵衛役などで有名な方ですが、NHK-FMのラジオドラマファンとしてはアドベンチャーロード時代の「遠い海から来たCOO」が印象的です。
いつ聞いてもいい声の方でしたが、惜しくも2015年になくなられています。

なお、本作品、NHK-FMのラジオドラマでは数少ないCDドラマとして一般発売されており、現在でも比較的入手しやすい作品です。
私も入手してみたのですが、封入されているブックレットには作品全部の台本が記載されており、何となく得した感じです。




★本文内のリンクについて★
本ブログは、紹介したラジオドラマからスタートして、関連している作品、していない作品、原作などの様々な作品に興味を持っていただきたいと思い、本文の随所にリンクを設置しています。
なお、アマゾンの画像リンクについてはこちらのご注意事項もご参照ください。

さよなら、田中さん 原作:鈴木るりか(青春アドベンチャー)

0 Comments
Hirokazu
作品:さよなら、田中さん  
番組:青春アドベンチャー  
格付:AA  
分類:少年  
初出:2018年7月2日~7月6日(全5回)  
原作:鈴木るりか  
脚色:中澤香織  
音楽:堀口純香  
演出:吉田浩樹  
主演:鈴木莉央  

田中花実は母親とふたり暮らしの小学6年生の女の子。
お母さんは、建設現場の“ガテン系”の仕事で一生懸命に家計を支えてくれているが、食卓に頻繁にモヤシが上がったり、ドリーミングランドに行くために自販機の釣り銭忘れを探し回らないといけないくらいには貧乏だ。
でも、明るいふたりは楽しく生活している。
本作品は、そんな花実の周りに起こる、ちょっとおかしい、けど、ちょっと心にしみるいくつかの出来事を追った連作短編である。



本作品「さよなら、田中さん」は、小学館が主催する「12歳の文学賞」の大賞を3年連続で受賞した鈴木るりかさんの初単行本をラジオドラマ化した作品です。
この「12歳の文学賞」は、締め切り時に満12歳以下の小学生であることを応募資格とした文学賞です。
「この賞を3年連続で受賞ってどういうこと?」と思ったのですが、何と初受賞時は小学4年生だったとのこと。
現在でも中学2年生・14歳ですので、恐らく青春アドベンチャーにおける最年少原作者だと思われます。
恐ろしい話です。
ちなみにこの受賞作を改稿した作品が、単行本「さよなら、田中さん」に収録されているうちの1編「Dランドは遠い」。
他に、「いつかどこかで」(小学校6年生時の受賞作を改稿)、「花も実もある」、「銀杏拾い」、「さよなら、田中さん」を併せて連作短編集として単行本化されています。
なお、本ラジオドラマの構成は以下のとおりとなっています。
各回のサブタイトルを見ると、原作の各話がラジオドラマの1回に直接対応するわけではなく、全体的に再構成されているようです。
本作品の脚色は「ミラーボール」(FMシアター)で評価の高い中澤香織さんであり、作中に「ドリーミングランド」(=Dランド?)の名前が出てきたりしているので、省略された話も一部再編成されて盛り込まれているのではないかとも感じます。
この辺はいずれ原作を読んで確認したいところです。

第1回:「いつかどこかで」
第2回:「花も実もある(前編)」
第3回:「花も実もある(後編)」
第4回:「またあう日まで(前編)」
第5回:「またあう日まで(後編)」

さて、本作品は小学校6年生の女の子の日常を描いた作品です。
そのため「青春」とも「アドベンチャー」とも言いがたい面もあります。
そもそもこういった子供の日常を淡々と描いた作品があまり好きではない私としては全く期待していなかったのですが…割といいじゃないですか。
そもそも(あからさまではないにしろ)描かれている事象が「横領」、「保険金殺人」、「いじめ」、「自殺未遂」など意外とどぎつい内容ですし、主人公の母親やクラスメート三上君のお母さんなどあまりにも戯画化されていて少し引いてしまう部分もあります。
ストーリー展開からもいささかあざとさを感じるのですが、逆に単純に「淡々と」ではないことが良いアクセントになっています。
そして、それに加えて言葉選びのセンスがやはりいい。
貧乏を「モヤシを絶賛する生活」なんて表現するなんていいじゃないですか(そこか?)
どうしても中学生(一部は小学生)が書いた文章という色眼鏡で見てしまうため、無意識のうちに「中学生にしてはすごいなあ」という目で見てしまうのですが、それを抜きにしてもとても気持ちの良い筆致だと思います。
ただ何となく、私立中学に通う子がこれを書くのか、と考えると微妙な気分になるのも否めませんが。
実際にはモヤシも絶賛されるほどの栄養価はないみたいですしね。

そしてそのフレッシュな素材に加え、ラジオドラマになれている中澤さんの脚本がいつもながらいい感じです。
上記のとおりオリジナル脚本であった「ミラーボール」の評価が高く、個人的にもオリジナル短編であった「あの人のカナリア」も結構好きなのですが、「王妃の帰還」、「リテイク・シックスティーン」といった小説原作を中澤さんが脚色をした作品の印象もよく、今、NHK-FMに脚本を書いている方の中では有数に安心して聴ける脚本家さんです。
物語の最後、作品タイトルにつながる流れは、原作通りなのか脚色の妙なのかわかりませんが、なかなか見事です。
ちょっと「びりっかすの神さま」を思い出してしまいました。
それにしてもどの作品も現代日本が舞台なのが不思議です。

さて、主役の田中花実を演じたのは、放送時点で13歳の鈴木莉央さん。
原作者の鈴木るりかさんと同姓で同年代。
鈴木梨央さんのデビューは2012年のテレビドラマ「カエルの王女さま」ですので、早くも芸歴6年と、こちらも早熟。
すでに大河ドラマ(八重の桜)と連続テレビ小説(あさが来た)の両方で、主役の子供時代を演じた経験があるとのこと。
どおりで上手いと思ったら…
その他の子供たちも100人近いオーディションから選ばれた(公式サイト参照)とのことで、女性声優が演じるのとは又違った意味で上手いです。
藤原寛輔さん(三上君)、長島すみれさん、秋枝一愛さん、斎藤さくらさん、小泉柚奈さん 池田優斗さん、板原慈永さん。
この子役さんたちの中から10年後、有名な俳優・女優・声優になる人が出てくるのかも知れませんね。

最後に、本作品は1992年に「14歳のエンゲージ」でスタートした青春アドベンチャーの400作品目の作品ということに言及したいと思います。
この400という数字は、①再放送を除く、②他の番組で放送済みの作品(「悲しみの時計少女」、「空色勾玉」など)を除く(ただし再編集された「ドラマ古事記 神代編」は含む)、③15分の枠で放送された作品に限る(「アルジャーノンに花束を」、「ダーク・ウィザード」、「神々の山嶺」を除く)、という当ブログの独自集計のため、制作側(NHK)がどのように認識しているかはわかりません。
しかし、「14歳のエンゲージ」でスタートした番組の「400番目」の作品の原作者が「14歳」だなんて、ずいぶんよくできた偶然?だと思います。
いずれにしろ400作品という事実が、歴代のスタッフが約26年をかけて達成した偉大な記録であることは確かだと思います。




★本文内のリンクについて★
本ブログは、紹介したラジオドラマからスタートして、関連している作品、していない作品、原作などの様々な作品に興味を持っていただきたいと思い、本文の随所にリンクを設置しています。
なお、アマゾンの画像リンクについてはこちらのご注意事項もご参照ください。