青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

妖精作戦 原作:笹本祐一(アドベンチャーロード)

作品:妖精作戦
番組:アドベンチャーロード
格付:AAA
分類:SF(日本)
初出:1989年2月13日~2月21日(全10回)
原作:笹本祐一
脚色:関澄一輝
音楽:大島ミチル
演出:竹内豊
主演:長谷有洋

転校生の名は小牧ノブ。
彼女が私立星南学園高等部に転校してきた時から榊裕(さかきひろし)の日常はSFへと変わった。
超能力、謎の工作員、国籍不明の原子力潜水艦、極秘の超国家間組織、そしてUFO。
さらわれたノブを追って榊と仲間たち-沖田・真田・つばさ-は、南太平洋へ、そして・・・
高校2年生。彼ら5人の決して忘れられない半年間が始まった。

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笹本祐一さんのジュブナイルSFを原作としたラジオドラマです。
原作は、日本初のライトノベルといもいえる、多くの作家に影響を与えた作品です。
この辺については前記事を是非ご覧ください。
本記事は前記事があまりに原作のことばかりを書いてしまったため、記事を改めてラジオドラマの内容を中心に書いたものです。

さて、本作は青少年向けのSFなので話の内容は荒唐無稽ですし、基本的にライトな調子で話は進んでいきます。
重厚な話を求める方はちゃっちな印象を受けるのも事実だと思います。
ただ、原作の持つスピード感をさらに加速させるようなスピーディーな展開で、ほぼ2時間を休みなく一気に走り抜けるような作品になっており、その点で出色の出来です。
よく聞いてみると作品中にナレーションっぽいナレーションが全くなく、登場人物たちの会話と効果音を効果的につかって状況説明をしています。
効果音についてはバイク、ヘリコプター、潜水艦、宇宙船などの乗り物は効果音で表現するには最適ですし、例えば高いところから飛び降りてだんだんと声が小さくなるなど、ラジオドラマならではの演出が随所に効果的に使われています(ラジオドラマならではの表現法はこの記事をご参照ください)。
そして設定についても一部原作と大きく異なっています。
一番目立つ改変は、原作では普通の高校生である主要登場人物の一人の真田佐助が、本ラジオドラマではなぜか老人になっていることです。
これは原作ファンにはとても気になる部分だと思いますが、私はラジオドラマから入ったからかあまり違和感を感じませんでした。
もともと原作での真田は、主人公の榊や一行のリーダー的な沖田と比べて位置づけが今ひとつ不明確なキャラクターだったので、このような思い切った改変をしたのではないかと思います。
ただ正直、「カメキネシス」は少しやりすぎだと思います。

真田が大人(?)のキャラクターになったことによって、原作では一行のリーダー役を一身に担い非常識なまでの行動力があった沖田の負担がかなり減り、沖田はやや現実的なキャラクターになっています。
また、原作では(一応)主役ながら比較的影が薄くセリフも少ない榊ですが、ラジオドラマはその性格上、しゃべらないとドラマになりませんので、沖田と同じくらいよくしゃべるキャラクターになっています。
また、ヒロインのノブも原作ではあまり自己主張をするタイプではないのですが、やはりナレーションがないこのラジオドラマではしゃべらないと話にならないせいか、全般的に快活で前向きで積極的な性格になっています(あくまで原作と比較すると、ですが)。
具体的には、作品の終盤でノブが敵方の司令官に対してSCFの偽善性を追求する大演説(「人の血を流して人類の未来を語るなんて大笑いだわ」)があったりします。
その他、もうひとりのヒロイン・つばさにもノブに語りかける印象的なセリフ(「普通ってなんだ?」)が追加されています。
余談ですが、ラジオドラマのこのノブと仲間たちであれば、仮に原作4巻がラジオドラマ化されていたとしても、あのラスト(←「あのラスト」の破壊力については前記事をご参照ください)は回避できたのではないか、と思ってしまう部分もあります。感傷ですが。

また、細かい点ですが、脚本家がオリジナルで加えた会話にセンスがよい(あるいは珍妙な)ものが多いのも特徴だと思います。
一例を挙げると、「スプーンの立つほど濃いコーヒー」「10日たった鯖の刺身」「一種のマルチタレントかな」「俺は一割より全部欲しい」「道を見なさい、路上を見なさい、信号を見なさい」「脳が死ぬ、ハートが死ぬ、命が死ぬ」「ちょっと野暮用で出かけますが、後日、野暮用は何だったかなど野暮な質問はしないでくださいね」「そこのサメ公、若いのから先に食せー」「He will wet his pants!」「ゴミたちは読書しないからな」などなど。
脚本家は関澄一輝さんで、青春アドベンチャー系の番組では本作品以外に「蒲生邸事件」、「6月14日の花嫁」くらいしか担当されている作品を知らない、比較的レアな脚本家さんです。
ちなみに、この作品では作品中に関澄さんご自身の名前が登場しています。
全般的にはやりすぎの感もある脚色ですが、ここまでやってつまらなかったら原作のせいではなく、完全に脚本家の責任です。
それをわかった上で(作中に名前まで出して)ラジオドラマとして面白くしようという気概を感じます。
私はこの脚本に納得しています。

最後に、スタッフにもう一つだけ付け加えるならば、オリジナル音楽を提供している大島ミチルさんを挙げざるをえないでしょう。
大島さんは本作の後、本格的に劇伴を手掛けられるようになり、第31回日本アカデミー賞に「眉山」で最優秀音楽賞を受賞されるほか、日本アカデミー賞の優秀音楽賞は5回(第24回「長崎ぶらぶら節」、第26回「陽はまた昇る」「模倣犯」、第27回「阿修羅のごとく」、第29回「北の零年」、第30回「明日の記憶」)も受賞されることになります。
その他にも大島さんはNHKスペシャル「大英博物館」などの多くのテレビ番組、映画、アニメの劇伴を手がけられることになるのですが、それらの原点ともいえる、20代の大島ミチルさんの仕事。
それがこの「妖精作戦」のひとつの側面です。


さて、本作品の出演に話しを移しますと、まず主役の榊が長谷有洋さんで、ヒロインのノブが安永亜衣さん。
沖田が知念正文さん、真田が田の中勇さん、つばさが石丸有里子さん。
そして5人をサポートする私立探偵・平沢千明が塩沢兼人さん。
敵組織であるSCF側はジルベスター博士が久米明さん、司令官キーラーが西村淳二さん。
すべて、役のイメージにあった素晴らしい配役だと思います。
安永さんは「インベーダー・サマー」のヒロイン・東やよい役などこの時期のアドベンチャーロードにいくつか出演していた記憶があります。
容姿もかわいらしい方でしたが、声もとても素敵でした。
また6人目の味方として全編を通じて大活躍する平沢探偵を快活に演じている塩沢さんも素晴らしい。
さらに、ジルベスター博士役の久米さんは近年の青春アドベンチャーでも「失われた地平線」の大僧正役のような高齢の役をやっているのですが、20年以上前の当作品でも高齢の「博士」の役をやっていたわけです。
実際、ご本人も相当なご高齢だと思うのですが、2012年のFMシアター「ほんとうの音」にも主演されており現役でいらっしゃるようなのがうれしい限りです。
その他、主役の榊裕役を演じた長谷有洋さんはTVアニメ「超時空要塞マクロス」で主役・一条輝を演じられた方ですし、4人組の残りのふたり、沖田とつばさを演じられたのは、学生時代からつかこうへいさんと演劇活動をしていた知念正文さんと、「ひらけ!ポンキッキ」の6代目お姉さんの石丸有里子さんおいう、劇団「鳥獣戯画」の立ち上げメンバー。
何とも豪華でバラエティに富んだ配役陣です。
この配役で是非、続編を!といいたいところなのですが、大変残念ながらこの8人のうち4人(長谷さん、田の中さん、塩沢さん、西村さん)が鬼籍に入られています。
ご高齢の田の中さん、西村さんはやむをえない面もあると思いますが、早世された長谷さんと塩沢さんは本当にご冥福を祈るばかりです。

さて、前記事に書いたとおり、この作品の原作には続編があります。
現実問題として30年前の作品に続編ができるとは思えませんし、出演者の現在の状況からも無理でしょう。
ただ、このラジオドラマの中で、原作第3巻で登場する「第三のヒロイン」和紗結希の名前がでていたりするのを聞くたびに、このスタッフ、このキャストで続編が作られていたらなあと思ってしまいます。
とはいえ、原作4巻のラストのことを思うと作られたほうがよかったのか、そうでなかったのか、微妙な感覚にも囚われてしまうのですが。





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テーマ:ラジオドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

コメント

褪せない良作。

今となっては、5人以上の方が亡くなられてしまっています、キーラー司令官の西村さん、亡くなられてたんですね・・・。
5人目はマスターの及川ヒロオさんです、だいぶ前ですが・・・。

漠然と感想を言ってしまうと、「声優さんってイイよね、やっぱり」と思わせてくれる作品ですね。
とても聴いていて小気味好く、オシャレだし、元気をもらえます。
テンポも良いですよね。
笹本祐一さんのデビュー作なので、いろいろ脚色が入ったのかな?と、変に勘ぐってしまいますが、私はラジオの方が好みですね。
本当にこの元気があれば、ラストレターは違っていたかもと思ってしまいます。
さすが良作だけあって、当時もカセットブックになりましたし、(でも、当時のおこずかいでは買えなかった汗)今では考えられない配役で、豪華ですよね。
大元に、音源が残っているのを切に願います。

これからも良い作品が生まれますように(^人^)♫

  • 2017/08/20(日) 15:24:09 |
  • URL |
  • 雨音 #fZamKmr2

Re: 褪せない良作。

雨音さま

コメントありがとうございます。
マスターは及川ヒロオさんだったんですね。
ご指摘されるまで気が付きませんでした。

平沢「スプーンの立つほど…」
マスター「濃いコーヒー。わかってまさぁ。」

塩沢兼人さんとの掛け合いが懐かしいですが、お二人とも鬼籍に入られているとは。

それにしても音源の問題は深刻です。
NHKですら昭和期のものは全然残っていないという噂も聞きます。
「空色勾玉」(2009年再放送)が残っていたので、他もあると信じたいところですが…

  • 2017/08/21(月) 06:34:22 |
  • URL |
  • Hirokazu #-

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