青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

笹本祐一「妖精作戦」シリーズ

特集【お勧め作品⑥】笹本祐一「妖精作戦」シリーズ

転校生の名は小牧ノブ。
彼女が私立星南学園高等部に転校してきた時から榊裕(さかきひろし)の日常はSFへと変わった。
超能力、謎の工作員、国籍不明の原子力潜水艦、極秘の超国家間組織、そしてUFO。
さらわれたノブを追って榊と仲間たち-沖田・真田・つばさ-は、南太平洋へ、そして・・・
高校2年生。彼ら5人の決して忘れられない半年間が始まった。

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ラジオドラマのブログなのにラジオドラマ化されていない作品を取り上げる、このシリーズ
しかし、今回取り上げる「妖精作戦」はシリーズ第1作がアドベンチャーロード時代にラジオドラマ化されています。
実は、この記事、最初はこのラジオドラマ版「妖精作戦」についての通常の紹介記事を書いていました。
しかし、原作に関連する事項の紹介だけでひと記事分の分量になってしまい、ラジオドラマの紹介としてバランスの取れていない記事になってしまったため、その原作関連の部分だけを独立させて「お勧め」シリーズとしたのが本記事なのです。
そのため、本記事は、①原作4巻のうち1巻がすでにラジオドラマ化されており、しかも、②その放送から20年以上が経過し続編が作られる見込みがほとんどない、という状況でありながら青春アドベンチャー化をお願いするという変な記事になってしまっています。
このような経緯で書かれた記事であり、特別に思い入れのある作品ということでご了解ください。

さて、本題に移ります。
2012年9月にスタートしたこのブログ。
実は最初の紹介作品はその「妖精作戦」にしようとも考えたのです。
しかし、ブログの最初の記事から青春アドベンチャーで放送されたものではない作品(前身番組のアドベンチャーロードの作品)を取り上げるのもどうかと思ったことと、当時、東京創元社から原作のシリーズが再出版中で最終第4巻の発売待ちの状況であったことから、後回しにしました。
そして記事を書くためには読まなければいけないと思っていたいくつかのもの、具体的には、

・秋山瑞人さんの「イリヤの空、UFOの夏」
・有川浩さんの「レインツリーの国」(FMシアターでラジオドラマ化もされています)
・早狩武志さんの「イノセント・ボーイズ」
・創元版妖精作戦の1~3巻の末尾に書かれた有川浩さん(第1巻)、小川一水さん(第2巻)、谷川流さん(第3巻)の解説

の4つに加え、すでにラジオドラマ化されている部分の原作「妖精作戦」(シリーズ第1巻)を読み、最後に、恐らくこの20数年間ほとんど読み返すことのできなかったシリーズ完結篇第4巻「ラスト・レター」を読んで、やっと、この記事に取り掛かることができました。
ここで挙げた各作品は、妖精作戦のファンの皆さんなら大抵ご存知のものばかりかと思いますが、知らない方もいると思うので一応簡単に説明します。

「イリヤの空、UFOの夏」はライトノベル史上屈指の名作と評判の作品ですが、全編が妖精作戦へのオマージュともいえる作品です。
作者の秋山さん自身が妖精作戦の影響を認めているようです。

「図書館戦争」・「阪急電車」などで知られる有川浩さんの「レインツリーの国」では、作中で重要な位置づけをされている架空の小説「フェアリー・ゲーム」がでてくるのですが、これは妖精作戦シリーズそのものです(巻末に参考として妖精作戦の名が挙がっている)。
ちなみにレインツリーの国のヒロインはある「個性」を持っているのですが、その「個性」が妖精作戦のヒロイン・小牧ノブの「個性」に重ね合わせられる形で物語が進みますので、妖精作戦のストーリーはレインツリーの国のテーマ上も重要な要素になっています。
ちなみに有川さんは、妖精作戦第1巻の解説で「私たちの年代に『妖精作戦』がもたらした衝撃」という言葉で妖精作戦の自身への影響を語っています。
なお、有川さんの作品では「三匹のおっさん」が青春アドベンチャーになっています。

「イノセント・ボーイズ」はネット上で公開されていたパロディ小説で、実在しない「妖精作戦の第5巻」という位置づけです。
コアなファンとしては展開・結末についての異論があるかもしれませんが、文体等、違和感のないよくできている作品だと思います。
この作品、400字詰め原稿用紙換算で約558枚という大作です。
一銭の得にもならない(?)同人小説を558枚分も書かせてしまったということに妖精作戦の影響の大きさが窺われるかと思います。

第2巻の解説を書いている小川一水さんについてはすでにこのブログで何回も紹介している(イカロスの誕生日お勧め1お勧め2)ので省略しますが、小川さんについてはそもそも小説を書こうと思ったきっかけが「ラスト・レター」の衝撃のラストだったという話も聞きます。

第3巻の解説の谷川流さんは「涼宮ハルヒの憂鬱」シリーズの著者として有名な方ですが、この解説では妖精作戦シリーズの自分および自作への影響を語った上で、「この『カーニバル・ナイト』(注:第3巻のタイトル)の解説を拝命できたのは一生物の喜びです」とまで書いています。

「妖精作戦」シリーズは現在、「ライトノベルなる、今ひとつ定義が不明な小説群」(谷川流)の原点あるいは原典の一つとみなされているようです。
特に最終巻において「容赦なく描かれた苦さ」(有川浩)が多くの人たちに大きな影響あるいは傷跡を残したことは、本シリーズが30年ぶりに復刊されていることからも明らかだと思います。
私がこのシリーズを知ったのは第1作のラジオドラマが最初でした。
そしてすぐに原作小説に続編があることを知り、あっという間に読み終えました。
今思えば各巻とも相当、荒削りな作品ではありましたが、当時、私自身、「容赦なく描かれた苦さ」に打ちのめされて、何とか日常生活に完全復帰するまでに1ヶ月ほどかかった記憶があります。
ただ、同じ思いをした人たちがいることは全く知らず、上記のような、その後小説家になった方々に大きな影響を与えたという話を知ったのはごく最近のことです(小川一水さんの小説はほぼすべて読了した後でした)。
だからレインツリーの国の主人公の伸行君がヒロインにメールしてみた気持ちはすごくよくわかるのです。
それにしても、あのラストを読んだ当時の若者達はあれをどう捉えたのか。
そして恐らく今、中年になった彼らはあれをどのように咀嚼しているのか。
それは恐らく人それぞれ違うはずであり、上記の方々の作品を読んでいても、あの最後のノブの選択やSCF(敵組織)の大義を認めるなど大人になった今でも少しずつ違いがあるように感じます。
そういったことを含めてこの作品の魅力だと思います。

という訳で、「妖精作戦」シリーズへの評価は4巻の衝撃のラストを含めた作品全体への評価によるものですので、是非とも2巻以降の続編もラジオドラマ化して欲しかったので、ここで「お勧め作品」として妖精作戦「シリーズ」として紹介させていただきました。
現実的に困難なことは承知していますが。

ところで、ラジオドラマ化されている1巻部分についてですが、1巻は、特にクセ癖のある2巻や、重苦しく苦い(部分もある)3・4巻と比べると単純な冒険活劇です。
しかし、だから1巻の価値が損なわれることはありません。
1巻こそが、日々の生活とSF世界との転換、日常生活描写とマニアックな知識の混在に象徴される、当シリーズが切り開いた作風の原点であり、エンターテイメントとして最も楽しい巻は1巻であるといって過言ではないと思います。
ラジオドラマ版はこの1巻をもとに、アドベンチャーロード作品の中でも特に独特な脚色がなされた作品であり、原作のスピード感を損なうことなく、大胆な設定の変更、セリフの大幅な追加がなされています。
その辺を中心に、改めて仕切りなおしてラジオドラマ版の記事を書きたいと思います。

読者の皆様(及びNHKのスタッフの皆様)よかったら参考にしてみて下さい。

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アドベンチャーロード「妖精作戦」の紹介に続く
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次の特集は、お勧め作品の尾瀬あきらさんの
「とべ!人類」です。こちらの記事をご覧ください。
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【過去のお勧め作品シリーズ】
お勧め作品①:小川一水「天涯の砦」「疾走!千マイル急行」
お勧め作品②:小川一水(その他)
お勧め作品③:佐藤賢一「カエサルを撃て」
お勧め作品④:佐藤賢一(その他)
お勧め作品⑤:梅原克文「二重螺旋の悪魔」









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