青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

北村想の怪人二十面相・伝 (青春アドベンチャー)

作品:北村想の怪人二十面相・伝
番組:青春アドベンチャー
格付:AA
分類:活劇
初出:1992年9月7日~9月18日(全10回)
原作:北村想
脚色:高橋卓子
演出:角岡正美
主演:日比野正裕

昭和20年、太平洋戦争終戦。
敗戦、闇市、浮浪児、特攻隊崩れ。
東京は混乱の最中にあったが、それでも庶民はたくましく生きていた。
そして終戦とともに「彼」も戻ってきた。
「彼」、そう、戦争へと向かっていた暗い時代に、肥え太る金持ちを狙って大胆な盗みを何度も成功させ、世間をアッと言わせた世紀の大怪盗。
名探偵・明智小五郎と何度も大立ち回りを演じて世間の喝采を浴びた希代の怪人。
国立博物館の上空で爆発する気球とともに消息を絶った「怪人二十面相」が東京に帰ってきたのだ。
しかし東京の庶民達は知らない。
復活した二十面相は、二十面相であっても戦前の二十面相ではないことを。
師匠の思いを継ぐための遠藤平吉の冒険が始まったのだということを。

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脚本家・北村想さんの「少年探偵団シリーズ」(江戸川乱歩)のパスティーシュ作品を原作としたラジオドラマです。
元ネタである「青銅の魔人」はアドベンチャーロード時代にラジオドラマ化されています(記事はこちら)。
佐藤賢一さんの「二人のガスコン」でも書きましたが、本歌取り、パスティーシュなど色々な呼び方がありますが、先人の作品を上手く取り込む手法は日本人の得意とするところだと思います。
もともと江戸川乱歩が描いた「怪人二十面相」には、①登場当初の戦前期と戦後とで行動が一貫しない、②戦前から戦後への長期間に亘って活躍し年を取った形跡がない、という謎があったそうですが、本作では二十面相は二人いた、という解釈でこの謎を説明しています。
これにあわせて明智小五郎も二人いたことになっており、二代にわたる怪盗と名探偵の宿命の対決の物語になっています。
本ラジオドラマではこの辺について第1話の冒頭で原作者の北村想さん自身が着想を説明をする珍しい構成になっています。
なお、原典の少年探偵団シリーズは「推理系」の作品ですが、本作は泥棒側が主人公で、盗みの手段は犯行時に説明済みで推理要素は少ないので、本ブログでの分類は「活劇」としました。

さて、上記のように書くと、本作品は二十面相と明智の二人のスーパーマンが大活躍する話しだと思われるではないでしょうか。
しかし、本作品は2代目二十面相こと遠藤平吉が二十面相になることを決意し、初仕事(いわゆる「青銅の魔人事件」)が終わるまでの話しであり、才能はあるもののあくまで泥棒初心者である平吉が、他人の力を借りながら何とか仕事を成し遂げる話しです。
そのうえ、平吉は小声でぼそぼそと話すキャラクターであり、平吉の養女・葉子役の「佳梯かこ」さんのナレーションもとても地味です。
しかも音楽がまた、やけにもの悲しく、どう考えても爽快感に欠ける作品なのです。
これを初めて聞いた20年前の私も「どうにもパッとしない話しだなあ」という感想を持ちました。
当時もしもこのブログをやっていて格付けを付けたなら、良くて”A”、恐らく”B”だったのではないかと思います。
しかし、20年間ぶり聞いてみると、これが妙に印象深い作品なのです。
もちろん「ピエタ」の時と同じように「9歳の孤児」が登場することがエモーショナルに作用していることも確かだと思います。
しかし昔は地味に感じたジプシーキングスの「インスピレーション」(ギター)の旋律と、葉子が楽しかった時代を懐かしみながら話しているという設定のナレーションがとても心に染みいります。
平吉と丈吉、それに葉子や初代明智、太宰治などの思いが絡み合って、苦しい時代を懸命に生きた人たちの物語が印象深いものになっています。
平吉と葉子の関係は「ハッピーエンドの火垂るの墓」とも言える関係であり、火垂るの墓をまともにみられない私にはちょっとした救いでもありました。
最近、このブログを書くにために青春アドベンチャー等の昔のラジオドラマを聞きなおしてみて、印象が変わった作品がいくつかある(「暗殺のソロ」など)のですが、この「怪人二十面相・伝」が最も印象が変わった作品でした。

ちなみに二十面相は一般的に「正体不明の謎の怪人」というイメージだと思いますが、実は本名が「遠藤平吉」であるということは江戸川乱歩の作品上にもきちんと書かれている公式設定です。
とすると、江戸川乱歩の原典における明智も、二十面相の本名を知りながら敢えて彼を「遠藤」ではなく「二十面相」と呼んでいたのかも知れません。
魔術師」の記事の中で、私は明智が二十面相との思い出を懐かしむ本作中の台詞を引用しましたが、江戸川乱歩も心の底では明智が二十面相を、思い出を共有する”友人”だと思っていたと考えながら執筆していたのではないかという気がしていなりません。

なお、本作にはTBSの「ラジオ図書館」で放送された別バーションのラジオドラマもあります。
そちらは50分×2回で放送され、前編は初代二十面相(武井丈吉)の物語、後編は二代目二十面相(遠藤平吉)の物語になっています。
そのため、NHK-FM(青春アドベンチャー)版では作品中で徐々に明らかになる初代二十面相時代の物語が、最初から順序だって述べられておりかなり異なった構成です。
また、TBS版の二十面相はより正義漢の造形がされています。
結果として両作品は同じ原作とは思えないほど雰囲気が異なります。
全般にNHK-FM版の方がノスタルジックな雰囲気が漂い強烈な個性があり、個人的にはお勧めです。
また、2008年には「K-20 怪人二十面相・伝」というタイトルで金城武さん主演で映画化もされています。
私は未聴なのですが、こちらも「怪人二十面相・伝」が原作とはいえ、ずいぶんと設定が変更された作品のようで、ストーリーも全く異なるようです。
ご注意を。

最後に出演者ですが、葉子(語り)役の佳梯かこさん、二代目明智役の小林正和さん、太宰治役の田井順三さんなど、原作者である北村想さんが当時主催していた名古屋の劇団「プロジェクト・ナビ」のメンバーが主要キャストを支えています。
その他、主人公・平吉役の日比野正裕さん、初代二十面相役の榊原忠美さんなどを含め名古屋関係者でキャストは固められており、作品全体に原作者の強い影響が窺えます(ひょっとしてNHK名古屋局制作なのでしょうか)。
特筆すべきは初代明智役(←他作品で明智小五郎を演じた役者はこちら)。
何と原作者の北村想さん自身が務めていらっしゃいます。
この「怪人二十面相・伝」に対する世間の批判として、「明智側が悪く描かれすぎており、原典(乱歩版)を侮辱している」というものがあるようですが、北村さんに明智を貶める意思がないことは、ご自身で演じていることからもわかる気がします。

なお、青春アドベンチャーでは他にも原作者が出演している作品があります。
それらについては、こちらの記事をご参照ください。
また、本作品と同様に、作品タイトルに原作者の名前が入っている作品は、こちらにまとめています。
併せてご参照ください。





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