青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

人魚の森 原作:高橋留美子(ミュージカルファンタジー)

作品:人魚の森
番組:FMシアター(ミュージカルファンタジー)
格付:B
分類:幻想(日本)
初出:1989年11月3日(全1回)
原作:高橋留美子
脚色:大久保昌一良
音楽:奥慶一
演出:保科義久
主演:野口五郎

ついに“人魚の里”を見つけた。
400年かかった。
長い長い時間だった。
その間に多くの人間の生き死にに立ち会った。
多くの人間の欲望と悲しみを見てきた。
今度こそ終わらせる。
今度こそ人間に戻る方法が見つけるのだ。

――――――――――――――――――――――――――

「人魚の森」あるいは「人魚シリーズ」は、高橋留美子さんが1984年から1994年の10年間に亘って書き継いだ一連の伝奇漫画のシリーズで、星雲賞のコミック部門を受賞しています。
「うる星やつら」、「めぞん一刻」という、それぞれスラップスティックSF、恋愛コメディの金字塔ともいうべき傑作を世に送り出した高橋留美子さんですが、活躍している期間は長期に亘ります。
定期連載作品だけでも、1979年の「うる星やつら」の連載開始から、「めぞん一刻」、「らんま1/2」、「1ポンドの福音」、「犬夜叉」を経て、現在連載中の「境界のRINNE」まで40年近く第一線で描き続けているという化け物のような方です。
まあ、ホノオモユルによれば「高橋留美子は…タイミングだけで生きている!!!」らしいのですが(島本和彦著「アオイホノオ」より)。
さて、その高橋作品(いわゆる「るーみっくわーるど」)の系譜の中で、本作品が描かれたのは、「らんま1/2」の連載と同時期に当たります。
現代を舞台にしたコメディ色の強い連載作品が続いた高橋さんの作品にあって、初めてのホラー色が強いシリーズでした。
しかも、一部の作品は遠い過去の日本を舞台としています。
この作品傾向は後の「犬夜叉」へと引き継がれて行くことになるわけですが、調べてみると、もともと高橋さんは日本女子大の文学部史学科を卒業されており、卒業論文は「江戸幕府の無宿人対策」とのこと。
もともとの高橋さんの興味が伝奇ものにあったということなのかも知れません。
ちなみに、この論文、年代的にみると「うる星やつら」連載中に描かれたことになります。
「うる星やつら」を書きながら大学に通って、卒論まで書いたのか。
やはり、化け……(以下自主規制)。

さて、いきなり脱線してしましましたが、この記事はその「人魚の森」を原作としたNHK-FM版のラジオドラマを紹介する記事です。
1989年11月3日に全1回・75分、番組名「ミュージカルファンタジー」として放送されたのですが、その直前の10月30日から11月2日までのほぼ同時間帯(ただし1回30分と短い)に諸星大二郎さん原作・錦織一清さん主演の「西遊妖猿伝」が放送されていましたので、漫画原作作品としてセットで企画されたのではないかと思います。

ちなみに、本ラジオドラマは「人魚の森」というタイトルですが、厳密に言うと原作におけるシリーズ第1作「人魚は笑わない」(初出1984年)を中心に、一部、過去の出来事として第2作「闘魚の里」(初出1985年)のエピソードを挿入した構成になっており、タイトルに採用されている第3作「人魚の森」(初出1987年)は使われていません。
、本作品放送の前年に出版された単行本のタイトルが「人魚の森」であったことから、このようなタイトルにしたのだと思われますが、紛らわしいですね。
ちなみに、その後の1991年、1993年、2003年の3度のアニメ化でもすべて「人魚の森」というタイトルであり、やはりシリーズものとして「人魚の森」を本ラジオドラマのタイトルにしたのは正解だったと思います。

さて、本シリーズ全体の内容は、人魚の肉を食べて不老不死になってしまった湧太(ゆうた)と真魚(まな)のカップルが、様々な人と出会いながら放浪を続ける物語です。
大半は真魚が人形の肉を食べて(「人魚は笑わない」)以降の話しですが、湧太が不老不死になってから真魚に出会うまでの過去のエピソードも多く含まれます。
本ラジオドラマはその触りの、湧太と真魚が出会うエピソードであり、特に複雑なストーリーではありません。
しかし、聴いていて何となく混乱します。
それは、本作品の「人魚」に独特の設定があり、これがちょっとややこしいことに起因しているのではないかと思います。
具体的には、このシリーズの登場人物(?)は大きく分けて5種類に分けることができます。

①通常の人間
基本的には定命。人魚の肉を食べることにより不老不死になる可能性があるが、体質にあう人とあわない人がいる(食べてみるまでわからない)。
②不老不死の人間
人魚の肉を食べて不老不死になった人間で極めて珍しい。湧太と真魚はこれだが、実は本作中にもう1人出てくる。姿は人間のままで見た目では不老不死か判別はできない。大怪我をしても死なないが、頭を切り落とすと死ぬ。
③「なりそこない」
人魚の肉を食べたが体質に合わない場合、すぐに死ぬか、この「なりそこない」になる。
理性がなくなり、姿もゾンビ系のバケモノに。
④海の人魚
上半身は人間、下半身は魚風で、西洋の伝説上の人魚に近い。ただし美しくはなく基本的に見た目はバケモノ。
⑤陸の人魚
見た目は人間と変わりがない。④が歳月を重ね陸に上がるとこれになるらしい。長命だが不老不死を続けるために時々②を食べないといけない。一定時間、水に入っていると④に戻ってしまう。

このうち、見た目で言うと、①(人間)と②(不老不死の人間)と⑤(陸の人魚)が区別がつきません。
また、人間ベースの③(なりそこない)と、人魚のベースである④にバケモノという点で共通点があります。
食物連鎖(?)的にみると、①(人間)が②(不老不死の人間)または③(なりそこない)に変化するために④(海の人魚)の肉が必要な一方で、⑤(陸の人魚)が不老不死でいるために③(不老不死の人間)が必要という状況…
多分これであっていると思いますが、私自身今一つ自信がない(コミックスを読んだのはずいぶん昔なので…)くらい複雑です。
混乱してしまうのは私だけでしょうかね?

さてさて、ストーリーや原作との関係はさておき、本作品のラジオドラマとしての最大の特徴は番組名どおり「ミュージカル」であること。
最近でも「走れ歌鉄!」のようにミュージカル風の作品もありますが、1980~1990年には「マージナル」、「黒猫ルドルフの冒険」、「ビバ!スペースカレッジ」、「マドモアゼル・モーツァルト」などミュージカル風の作品が今より多かったように感じます。
その中でも本作品はかなりミュージカル色が強い。
達観ですが、全体の半分くらいが奥慶一さん作曲の歌で、むしろストレートプレイの部分の方が少ないのではないかと思います。
ここまで歌の割合が高いと聴く人を選びます。
確かに終盤の、「海の人魚」と「なりそこない」の歌が交互に流れる場面や、そのあとの湧太と真魚が声を合わせて歌うシーンは、作品展開にうまく合っていると思います。
ただ、正直、映像のないラジオドラマで歌に気持ちをこめられすぎると、効果が強すぎ、最近劇団四季の「ライオンキング」でミュージカルへの偏見がかなり解消された私でさえもちょっと引いてしまうくらいです。
好きな人にはいいんでしょうけどね。
なお、本作品、脚色の大久保昌一良(おおくぼ・しょういちろう)さんは、正確には「脚色・作詞」になっています。
確かにこれだけ歌が多いと作詞は脚本と一体にせざるを得ませんね。
ちなみに、この大久保昌一良さんは1991年版のオリジナルビデオアニメ版の「人魚の森」でも脚色を担当されています。

最後になりましたが出演者を紹介しますと、まず主役の湧太を演じたのは野口五郎さん。
いわずとしれた1970年代の日本を代表する男性アイドルだった方です。
当時すでに30過ぎでしたのでアイドルとは言えなかったとは思いますが、セットで放送された「西遊妖猿伝」の錦織一清さんとともにちょっとミーハーなキャストではありますが、歌手でもありますので敵役ではあったと思います。
しかしそれ以上に本作の特性を踏まえた起用と思われるのが、本編のヒロイン真魚と過去(戦国時代)編のヒロイン鱗(りん)の双方を演じた、女優・歌手の島田歌穂さん。
本作品の前々年の1987年に「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役でミュージカル俳優として脚光を浴び、国際的にも高い評価を受けました。
最近の青春アドベンチャーでは、2017年8月に放送した「斜陽の国のルスダン」で「レ・ミゼラブル」でマリウスや「ライオンキング」でシンバ&ヤングシンバを演じた海宝直人さんが起用予定です(過去にも「タランの白鳥」など)。
また、9月放送予定の「また、桜の国で」では「ミュージカル界のプリンス」こと井上芳雄さんを起用予定。
今もミュージカル俳優の活用に余念がありませんが、80年代から注目していたんですね。

【保科義久演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。


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