青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

つばき、時跳び 原作:梶尾真治(青春アドベンチャー)

作品:つばき、時跳び
番組:青春アドベンチャー
格付:A-
分類:タイムスリップ
初出:2017年2月27日~3月7日(全10回)
原作:梶尾真治
脚色:丸山智
演出:藤井靖
主演:美山加恋

趣味で書いた小説がコンテストの優秀作になったのを切っ掛けに、俺はサラリーマンを辞め、作家になった。
といっても、駆け出しの新人作家に生活力なんて、ある訳がない。
今は、死んだじいさんの使っていた家を親から借りてただで住まわせてもらっている。
戦後に廃屋同然だったのを買い取ったというだけあり、いつ建てられたのかも分からないほど古びたわが家。
しかし、庭に肥後椿が咲き誇るこの家で、ちゃぶ台に向かって原稿を打つ生活を、実は俺は結構気に入っている。
ただひとつ気になることがある。
先日、母が急に「その家には女の幽霊がでる」と言い出したのだ。
何でもその幽霊は女性にしか見えず、新しくこの家に嫁に来た代々の女性は、この幽霊を見てはじめて「あなたもこの家の嫁になったのねえ」などと言われるらしい。
そういうことは早く言って欲しい…
?そういえば、あそこに見えるのは何だ…

――――――――――――――――――――――――――

本ラジオドラマ「つばき、時跳び」はSF作家・梶尾真治さんによる同名の小説を原作とする作品です。
もともとは、2004年から2006年に「つばきは百椿庵に」のタイトルで連載されていた作品が、2010年に改題されて単行本として出版されたのだそうです。
実は作品内容的には「時跳び」(=タイムスリップ)が重要になるのは、ヒロインの「つばき」ではなく、むしろ○の方なんですけど…おっとネタバレになりそうなのでこの辺にしましょう。

さて、青春アドベンチャーで梶尾さん原作の作品が放送されるのは、1992年8月の「サラマンダー殲滅」以来、約25年ぶりの2度目。
1992年は青春アドベンチャーの始まった年ですので、それ以来ということなります。
もっともこの「サラマンダー殲滅」はもともとは番組名が「サウンド夢工房」だった時代の1991年に放送されたのが初出で、青春アドベンチャーでは再放送でしたので、青春アドベンチャーでの梶尾さん作品ははじめてと言っても良いかも知れません。

さて、原作者の梶尾さんは熊本市のご出身で、1970年代から様々なジャンルのSF作品を書き続けている古参のSF作家さんです。
1971年の「地球はプレイン・ヨーグルト」で第10回星雲賞、1991年には「サラマンダー殲滅」で第12回日本SF大賞を受賞しているほか、2016年にも「怨讐星域」で5回目の星雲賞を受賞しており、今も現役です。
一般的には2003年に草彅剛さん、竹内結子さん出演で映画化された「黄泉がえり」が有名でしょうか。
様々なジャンルと書きましたが、NHK-FMでラジオドラマ化された2作品を見ても、「サラマンダー殲滅」が復讐とその代償(そして塩沢兼人さんの演技)が強烈な印象を残すのに対して、本作品はタイムトラベルというSF要素はあるものの、基本的にはラブロマンス。
それもいわゆるジェットコースタードラマのような劇的な展開が続くわけではなく、概ね淡々とストーリーは進んでいきます。
タイムスリップの効果といった面で見ると、タイムスリップものでは定番の何度かの出会いと別れを繰り返して、最期には(一応の)ハッピーエンドに至るのですが、最後の惇の決断はそれなりに重いものではあるのですが、あくまで個人の話で、歴史に介入するといったたぐいのものではありません。
また、タイムスリップもの楽しみでもある「時間の行き来を利用したトリックの謎解き」といった面でも、「りょじんさん」の正体を明かすなど一応の展開はありますが、基本的には予想の範囲を超えるものではなく、また、そもそも最初につばきが現代に幽霊のような形で現れたのは何だったのかなど、よくわからない仕掛けも残りました。
全体的に薄味なつくりで、どちらかというとタイムスリップは味付け程度で、穏やかに流れる雰囲気を楽しむ作品だと思います。
雰囲気といえば、青春アドベンチャーで、「売れない文士」+「ぼろい家」+「幽霊」というと、梨木香歩さん原作の「家守綺譚」を思い出すのですが、全体の雰囲気も何となく似ています(作品ジャンルは違いますが)。
主人公の駆け出し小作家・井納惇(いのう・じゅん)の一人称で物語が語られるのも「家守綺譚」と似た雰囲気になっている理由のひとつかと思います。
…って、改めて公式ホームページを見てみると出演者の最初に書かれているのは、つばきを演じる美山加恋さんですね。
主役はつばきという扱いなのかな?
この美山加恋さん、青春アドベンチャーでは2015年の「シブちゃん」と2016年の「エド魔女奇譚」への出演歴がありますが、徐々に重要な役になり、今回、ついに初主演。
もともとは8歳の頃に出演したTVドラマ「僕と彼女と彼女の生きる道」(草彅剛さん主演)で注目を浴びた子役さんで、同じく元人気子役の福原遥さんとともに、この2月からTVアニメ「キラキラ☆プリキュアアラモード」で主役を演じています。
ちなみに美山さんが「キュアホイップ」で、福原さんが「キュアカスタード」とのこと。毎年よく考えるなあ。
美山さん、「シブちゃん」では「できた妹」、「エド魔女奇譚」では妖艶な魔女でしたが、本作品では、言葉遣いは丁寧だがしっかりした意見をもった美少女、とまた少し違った役どころを演じています。
いずれもしっかり演じわけられているあたり、さすが元天才子役です。
それにしても「蒲生邸事件」や「1492年のマリア」、「ピエタ」などもそうなのですが、くだけすぎた今の女性のしゃべり方に慣れていると、丁寧な敬語がとても新鮮です。

一方の事実上の主役である井納惇を演じる川口覚さんも、「人喰い大熊と火縄銃の少女」、「白狐魔記 源平の風」、「星を掘れ!」など(「星を掘れ!」のみ特集オーディオドラマ)でお馴染みの方です。
惇のしゃべり方がかなりくだけているのは、つばきのしゃべり方とのギャップを狙っているのかもしれませんが、惇は性格自体はとても素直なキャラクターですので、丁寧なしゃべり方をさせた方がつばきとの会話が気持ちのいいものになったのではないかと思い、その点では少し残念でした。

ところで、wikipediaによれば本作品の舞台となった「百椿庵」(ひゃくちんあん)は、原作者の梶尾さんの家がモデルなのだそうです。
でも作中の「百椿庵」はかなり古くて傷んだ設定の建物。
先日の熊本の地震は大丈夫だったのでしょうか?


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