青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

遥かなり、ニュータウン 作:伊佐治弥生(FMシアター)

作品:遙かなり、ニュータウン
番組:FMシアター
格付:B-
分類:日常
初出:2016年10月8日(全1回)
作 :伊佐治弥生
演出:佐藤謙
主演:奥田瑛二

妻の七回忌に、42歳になる息子がわが家に帰ってきた。
子どもたちと足並みを揃えるように成長していった夢の街。
しかし今、この街に子どもたちの声はなく、戻ってきた息子もしょぼくれたおじさんになっていた…
40年前、昭和40年代にニュータウンの一角に建てられたわが家で、父と息子の共同生活が始まる。

――――――――――――――――――――――――――

ニュータウンとは、一般に郊外に建設された新しい市街地のことを言い、わが国においては戦後の昭和30年代以降、急速な人口増加と生活水準の向上に対応するために、新住宅市街地開発法や土地区画整理法等を活用して大量の整備されました。
典型的なイメージとしては、駅から離れた丘陵部に切り開かれた、大規模で区画整然とした街区に公団住宅や戸建て住宅が建ち並んでいる街、でしょうか。
具体的には首都圏では「多摩ニュータウン」や「千葉ニュータウン」、関西圏では「千里ニュータウン」などが有名です。
本作品「遙かなり、ニュータウン」はNHK名古屋局の制作です。
作中では、作品の舞台は名古屋の近郊であること以外は明らかにされていませんが、番組ホームページをみると愛知県春日井市にある「高蔵寺ニュータウン」と明示されています。
私は知らなかったのですが、この「高蔵寺ニュータウン」は、多摩や千里と並ぶ黎明期の代表的なニュータウンなのだそうで、中京圏に暮らす方にとってはとても有名な街なのだと思います。
恐らく作中に登場する「駅へ行く道の途中にある長い滑り台」も実在するのではないでしょうか。

さて、本作品「遙かなり、ニュータウン」はそんなニュータウンを舞台とした父と子の蹉跌と再生の物語です。
高度成長期には夢の象徴であったニュータウンですが、街自体と住民双方の高齢化が進み、今やその扱いが社会問題となりつつあることは皆さんご承知のとおりです。
本作品はそんなニュータウンの現状と、ニュータウンで家庭を育んだ家族の現状を重ね合わせて描いていく作品です。
そのため、基本的に爽快感などとは無縁な展開。
歳を取った人がやたらとゴミ(良く言ってガラクタ)をため込んでいる姿は、現実でもよく見かけるのですが、これは思い出があって捨てられないのか、捨てる決断をする気力がなくなっているからか。
とにかく、男やもめの父親「田村コウジ」が管理する家は、少なくとも内部はゴミ屋敷状態です。
一方の息子「田村ケンイチ」も会社が倒産する憂き目に遭ってからは職を転々。
すっかり荒んだ性格になっており、久しぶりのわが家で吐く言葉も、とても不惑の男性のものとは思えません。
このふたりがぶつかり合いながら、かつて見た夢の行く末を探していくことになります。
コウジを演じる奥田瑛二さんの円熟の演技と、「シュレミールと小さな潜水艦」、「know~知っている」などで青春アドベンチャーではおなじみ、ケンイチを演じる加藤虎ノ介さん(本作品が放送された約2週間後にケンイチと同じ42歳に。)の若々しい?演技ぶりが本作品の聴き所でしょうか。
本作品、「オーバー・ザ・ハポン」、「珊瑚の島の夢」など幻想的な作品が多い伊佐治弥生さんの脚本であることもあり、ミシンやワープロ、カメラがしゃべり出すという浮き世離れした要素もあります。
また、「あの」名古屋局の作品ですので、全般に幻想的でアンニョイな雰囲気を持っていることも事実です。
しかし、作品の主題は、極めて現代的な家族の問題であり、そのためこのブログでのジャンルは「日常」とさせて頂きました。

さて、その極めて現代的の問題を取り上げているという面で、少し食い足りないと感じたのがニュータウンの扱い。
冒頭からニュータウンのイメージを強烈にリフレインさせるのですが、途中からの展開はニュータウンが舞台であることの必然性があまりないように感じました。
昨今、確かにニュータウンは人口減少に伴う負の側面が描かれ方がされることが多いのですが、例えば首都圏で大規模ニュータウンがドーナツ状に存在する、国道16号沿いをひとつの文化圏として捉え再評価する動きもあります。
そういえば、NHKのドキュメント番組「72時間」にも「オン・ザ・ロード 国道16号の“幸福論”」という回がありましたね。
多摩学を提唱する評論家の寺島実郎さん(日本総合研究所会長・多摩大学学長)は、この地域(特に多摩から神奈川に掛けて)をどうするかが日本の将来に直結するとまで言っています。
作品名に「ニュータウン」と入っている以上、是非、その辺まで踏みこんだニュータウン論を展開して頂きたかったところです。

最後に出演者についてひとこと。
奥田瑛二さんが主演するなど、相変わらずFMシアターは青春アドベンチャーより出演者が豪華です。
でもやっぱり一番気に入ったのは、三重県出身の女優・地主芽生(じぬし・めい)さん。
カモメに飛ぶことを教えた猫」のフォルトゥナータ役がとてもキュートだった地主芽生さん。
本作品では若かりし日の母親も演じているのですが、1999年生まれなのでまだ17歳なのだということが驚きです。


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