青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

文学少年と運命の書 原作:渡辺仙州(青春アドベンチャー)

作品:文学少年と運命の書
番組:青春アドベンチャー
格付:A
分類:伝奇
初出:2016年11月14日~11月25日(全10回)
原作:渡辺仙州
脚色:さわだみきお
演出:吉田努
主演:上村祐翔

今から約500年前、中国は明の時代。
中国最高の霊山・泰山の頂上に安置されていた金篋(きんきょう=金の容器)から、一冊の書物が盗み出された。
盗み出された書物の名は「玉策」(ぎょくさく)。
玉策には、古今東西、すべての人の生死が書かれているという。
盗賊は何のためにそのようなものを盗んだのか。
しかし、その後の玉策の行方は杳として知れない…

その頃、講談が大好き各地の講談本をまとめる仕事がしたいとで密かに考えている少年・阿恩(あおん)のもとに、一人の少女が現れる。
むしゃむしゃと本を食べる不思議な少女。
彼女は自らの名を「玉策」と名乗るのだが…

――――――――――――――――――――――――――

本作品「文学少年と運命の書」は、渡辺仙州さんの小説(児童文学)を原作とするラジオドラマです。
青春アドベンチャーでは、「封神演義」(1998~2000年)や「妖異金瓶梅」(2003年)の系譜に連なる「中華ファンタジー」です …ってアレ?「妖異金瓶梅」はファンタジーではないですね。
何はともあれ、舞台となっている時代は「妖異金瓶梅」と同じ中国の明代で、暗君として名高い正徳帝(在位1505年~1521年)治世下にあたります。
ちなみに、「妖異金瓶梅」の記事でも書きましたが、明代は庶民文学が花開いた時代として知られ、「封神演義」の成立もまた、明代とされています。
原作者の渡辺仙州さんは、母親が台湾人の方で、中国の大学で日本語の教師をされている方です。
「封神演義」「西遊記」「白蛇伝」「三国志」なども翻訳されているそうですので、渡辺さんにとってはお馴染みの「物語の故郷」ともいうべき時代を舞台に選んだ作品といえると思います。
ちなみに本作品の主人公の名は阿恩といいますが、「阿」は名前の前につけて親しみを現す言葉で、本名は呉承恩です。
この呉承恩は西遊記の作者とされている人物(異説あり)です。
それを踏まえて聴くとまた楽しみも増えるかと思います。

さて、本作品は、文系少年の阿恩と、不思議少女・玉策を中心とする物語です。
文系の少年の成長物語であり、彼が自分の運命(人生の方向性)を見つけるところで話が終わる点など、「いまはむかし~竹取異聞」と対といっても良いほど似た流れの作品です。
ただ、この作品の特徴は「文学少年」より、やはり「運命の書」の方。
ネタバレではありますが、冒頭の粗筋で書いたとおり、謎の少女・玉策の正体は書物。
萌え擬人化ブームの中、「軍艦」(艦隊これくしょん-艦これ-)や「国」(Axis powersヘタリア)、「海洋生物」(侵略!イカ娘)、「ロボットアニメ」(ロボットガールズZ)、果ては「終電」(終電ちゃん)、まで擬人化(主に女性化)させてしまった驚異の国、ニッポン。
ロボットといえば、そもそも「SDガンダム」も擬人化の一種ですな。うわー1980年代からやっていたんだ… すごいぞ、クールジャパン。
本作品中で阿恩が「本を食べる少女の講談を聞いたことがある」といっているので、中国の講談に元ネタがあるのかも知れませんが、一方で、明確に日本の萌え文化の伝統を受け継いだ作品とも言えるかも知れません。
いずれにせよ、少女の姿をした書物が様々な書籍をむしゃむしゃと食べる姿は何とも言えない迫力があります… って、改めて調べてみると、日本には、ヒロインが本や小説の原稿を食べる「文学少女」なる人気ライトノベルのシリーズがあるとか…
自由だな日本… 自由の国、万歳…

いかんですねえ。
何だか今回は本作品の紹介をしようとすればするほど脱線して他の作品の話ばかりなっていきます。
「いまはむかし~竹取異聞」同様、本作品も少年の成長物語として、なかなか好印象の作品になっており、その辺を上手く説明したいところではあるのですが…
ただ、今日はどうもストーリーを追っても脱線ばかりしていきそうなので、少し切り口を変えることとして、出演者の紹介に移りましょう。
まず、主人公の阿恩を演じているのは、2016年は「クラバート」に次いで2作品目の主演となる上村祐翔さん。
青春アドベンチャーには恐らく2002年の「アクアリウムの夜」が初出演。
翌年の「光の島」で主演されており、この頃はまだ子役でしたが、「僕たちの宇宙船」で久しぶりに主演されたときは20歳になっていらっしゃいました。
成長途上の少年の繊細さを表現させたらピカイチの上村さん。
主演された4作品(「光の島」、「僕たちの宇宙船」、「クラバート」、本作品)のディレクター(演出家)が全て異なるのは、上村さんのスタッフの間で評価の高さを示しているように感じます。
また、ヒロイン?の玉策を演じたのは女優の高木珠里さん。
本作品と同じ吉田努さん演出の「スピリット・リング」では主演されていました。
その他、美貌の暗殺者で棍の達人・白華(はくか)を演じる小林愛さんは「仮想の騎士」、腕自慢の山賊・常坤(じょうこん)を演じる東地宏樹さんは「スピリット・リング」という、それぞれ海外伝奇もので主役級を演じた方を脇に据えています。
そして銀河万丈さんのナレーションも安心感があります。
銀河万丈さんは「ごくらくちんみ」、「スペース・マシン」、「七帝柔道記」など、青春アドベンチャーでのナレーション実績は十分なのですが、この安心感はそれだけではなく、銀河さんが「開運!なんでも鑑定団」で、中華調の音楽に乗ってナレーションをしていることとも無縁ではない気がします。
細かいところまで狙っているな、青春アドベンチャースタッフ。
なお、銀河万丈さんと言えば、昨年の人気投票で「銀河万丈さんの『スペース・マシン』のナレーションが忘れられない」との声がありましたが、これには全くの同感です。

なお、私の勝手な認識かもしれませんが、最近の青春アドベンチャーでは、「(AのB)と(CのD)」というパターン(及びその類似パターン)で、しかも必ず少年又は少女を示す言葉が入っているタイトルの作品が多いように感じます。
泥の子と狭い家の物語」(2013年)、「砂漠の王子とタンムズの樹」(2014年)、「人喰い大熊と火縄銃の少女」(2015年)、「文学少年と運命の書」(本作品)。
偶然か意図的は分かりませんが、いずれにも外れはなかった印象です。
良いジンクスが今後も続くことを祈っています。




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