青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

ウィンブルドン 原作:ラッセル・ブラッドン(アドベンチャーロード)

作品:ウィンブルドン
番組:アドベンチャーロード
格付:A+
分類:スポーツ
初出:1989年1月16日~1月27日(全10回)
原作:ラッセル・ブラッドン
脚色:佐々木守
演出:笹原紀昭
主演:豊原功補

全英テニス。
主審に抗議に駆け寄った選手に、主審が小さな声で囁く。
「すまないね。しかし、君に安全に連絡するにはこれしか方法がないんだ。私には何のことかわからないが、とにかく君に次の三つを伝えるように言われている。いいかね。
ひとつ、警察はもっと時間が欲しい。
ふたつ、審判長がコートの入り口に顔を出すまで試合を引き延ばすこと。
みっつ、協力に感謝。幸運を祈る。」
選手は疲れたように呟く。
「これ以上まだ、試合を引き延ばせ、か。」

―――――――――――――――――――

う~ん、冒頭の紹介文、書きすぎですかね。
いつもはここは、だいたい最初の2~3回分の内容をもとに書くのですが、今回は終盤のセリフを(ほぼ)そのまま採用しました。
ネタバレかもしれませんが、印象的なシーンでしたので、これで興味をもっていただける方もいるかも知れないと思い、選択した次第です。
ご容赦ください。

さて、このブログでは、作品内容によってジャンル分けし、「タグ」を付けています。
スポーツ」というタグをつけた作品は、この記事をアップした時点(2016年6月)で放送中の「七帝柔道記」を含めて9作品ですが、すべての作品が、番組が「青春アドベンチャー」になって以降に制作された作品です。
やはり「青春」とスポーツは結びつきやすいのでしょう。
本作品「ウィンブルドン」は大人向きのサスペンス作品が多かったアドベンチャーロード時代からは初めての「スポーツ」系の作品紹介となりました。

ただし、本作品も単純なスポーツものではありません。
主人公は世界ランク2位のオーストラリア人プロテニスプレーヤー、ゲイリー・キングと、ソ連から来た若き天才テニスプレイヤー、ヴィサリオン・ツァラプキン(愛称「ラスタス」)。
23歳と17歳の主人公です。
物語の前半はこのふたりのテニスを巡る物語です。
冷戦を時代背景としていることから、プレー環境の問題(東側選手の亡命)が大きな焦点になりますが、プレーへの情熱と勝負の問題、スランプ・挫折とそこからの復活など、まさにスポーツものらしいテーマで物語は進みます。
正直、このままの内容で10話分あっても良かったのではないかとも思いますが、後半は一転してサスペンス的な内容になります。
後半の大部分を費やしてウィンブルドンでの全英選手権大会、特に決勝の1試合が舞台になります。
その舞台裏で進行する事件と、それに巻き込まれていく大会関係者、そして選手。
前半のキングとラスタスの心の交流を見ていると、決勝戦が純粋なテニスの試合ではなくなってしまうのが、一面、残念ではありますが、試合の経過とともに進んでいく陰謀劇は十分にスリリングです。
この作品は、脚色が佐々木守さん、演出が笹原紀昭さんというペアなのですが、BGMからそのまま各回のエンディングに入る印象的な演出や、前半終了時のキャスト紹介が「今週の出演者」になるところなど、同じペアの「A-10奪還チーム出動せよ」と同じ雰囲気で、つくりもなかなかエキサイティングです。
このような終盤の展開や演出などからはジャンルは「サスペンス」系としたいところですが、アドベンチャーロード時代では数少ない純粋スポーツものの展開を見せる前半の印象と、後半もサスペンス調とはいえあくまでテニスの試合をベースに進むことから、「スポーツ」に分類してみた次第です。

さて、出演者は、まずゲイリー役が豊原功補(こうすけ)さん。
近年では、阪本順治監督の「亡国のイージス」や「カメレオン」などに出演されているほか、2007年には「受験のシンデレラ」で第5回モナコ国際映画祭・最優秀主演男優賞を受賞されています。
現在、50歳。
素敵なミドルとして小泉今日子さんと噂になったりもしているようですが、本作品放送時は23歳の若手俳優でした。
ゲイリーは、性格は兄貴肌で陽気で、そしてプレースタイルもまっすぐなキャラクターで、すこしぶっきらぼうでべらんめえ調の豊原さんの演技がなかなか合っています。

そのゲイリーに「ヤツのフィームは美しすぎる…」と言われ、「ウォーミングアップで拍手が起こる」ほどの天才プレイヤー・ラスタスを演じるのは宮川一朗太さん。
そもそも「ツァラプキン」なのになぜ「ラスタス」なのか?
外国人の愛称はよく分かりません…
誰かご存知の方がいらっしゃいましたら教えて下さい。
名前と言えば、ラスタスは、同行するマネージャーたちからは「ヴィサリオン・ヴィサリオノヴィッチ」と呼びかけられるのですが、あれは一体何なんだ?
と思って調べてみたら、スラブ系の場合、目上の人に対する呼びかけでは「名・ミドルネーム」が使用されることが一般的で、ミドルネームは父親の名前をもとにして作るものなのだそうです。
つまり、ラスタスの父親はラスタスと同じ「ヴィサリオン」という名だったことと、現実には立場が上のマネージャーたちですが一応選手であるラスタスを尊重した呼び方をしていることが分かります。
…さてさて話が脱線してしまいましたが、宮川一朗太さんといえば、なぜだかNHK-FMのラジオドラマでは女性主人公の相手役が多かった方。
時はそよ風、時はつむじ風」、「空色勾玉」、「夢みるように愛したい」、「ビバ!スペースカレッジ」などが皆、このパターン。
そしてこの「ウィンブルドン」でも、相手役はゲイリーという歴とした男性でありながら、ラスタスは何となく女房役といった雰囲気のキャラクターなのです。
というか、今で言えば「腐女子」向けの要素が満点、というのもこの作品の一面ではあります。
「腐女子」という言葉がつかわれだしたのは2000年ごろからだそうですが、「ボーイズラブ」は1990年代から、「やおい」に至っては1970年代から使われていた言葉だそうです。
本作品の放送当時は、これらの趣味は今ほど公認されてはいなかったと思いますが、本作品をその面から熱い気持ちで聴いていた女性視聴者もひょっとしたらいたのかも知れません。
もちろん原作者のラッセル・ブラッドン(オーストラリア人)やNHK-FMのスタッフがそこまで意識していたとは思いませんが。

その他、「機動戦士ガンダム」のシャア・アズナブル役で有名な池田秀一さん、「新世紀エヴァンゲリオン」の冬月コウゾウ役で有名な清川元夢さんなどが出演されているのも面白いところです。
特に清川元夢さんは、「ゲイリーの父」という、いい加減な役名ですが、前半を中心に実はかなり出番の多い役だったりします。

【笹原紀昭演出の他の作品】
アドベンチャーロード期を中心に多くの傑作アクション作品を演出された笹原紀昭さん。
演出作品はこちらに一覧を作っています。



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テーマ:ラジオドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

コメント

はじめまして はんべといいます。
高校時代にアドベンチャーロードを聞いてました。
数年前から小学生の子どものために「お話でてこい」を録音してたのですが、もう高学年。そろそろ次のステップにと思ってました。
「そういえば自分が高校生のころは、アドベンチャーロードって番組があったなぁ」と思っていたら、青春アドベンチャーと名前が変わって、今も続いてるではありませんか!
ということで、ここ数日、ニコ動からDLしまくってるのですが、自分の中で1番良かった作品は「ウィンブルドン」なんです。
「ダメもとでリクエストしてみようかな」なんて
思ってたりしてました。ヒットする訳ないと
ぐぐって見たら、2日前に記事がアップされてるではありまんか! あまりにタイムリーなんで、
本当にびっくりしてしまいました。

確か、試合中にキーワードをロシア語で
叫ぶんでしたっけ?
放送終了後に、原作を探しに大きな書店や
図書館などに行きました。

Re: タイトルなし

はんべさま

コメントありがとうございます。
アドベンチャーロード後期は硬軟取り混ぜたなかなかのラインナップだったと思います。
私にとっても「ウィンブルドン」は印象的な作品でした。

ところで私も最近、娘にラジオドラマを聴かせています。
まだ小学校低学年なので、如何に最近低年齢向きになったといって青春アドベンチャーはまだ難しいようですが、「びりっかすの神さま」や「カモメに飛ぶことを教えた猫」は好評でした。
次は「クラバート」と「走れ歌鉄!」の予定。
まだちょっと早いでしょうか。

  • 2016/06/04(土) 16:28:55 |
  • URL |
  • Hirokazu #-
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> 確か、試合中にキーワードをロシア語で
> 叫ぶんでしたっけ?

そうです!
あまり書くとネタバレになってしまうのですが、客席にいるロシア語のわかる選手に向かって叫ぶんですよね。

  • 2016/06/04(土) 16:35:19 |
  • URL |
  • Hirokazu #-
  • [ 編集 ]

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