青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

風の名はアムネジア 原作:菊地秀行(アドベンチャーロード)

作品:風の名はアムネジア
番組:アドベンチャーロード
格付:B
分類:SF(海外)
初出:1988年1月18日~1月29日(全10回)
原作:菊地秀行
脚色:佐久間崇
演出:小木哲郎
主演:木村一八

1996年5月。
原因不明のアムネジア(記憶喪失症)が人類を襲った。
すべての人間は、道具の使い方や言葉だけでなく、文明人としての生活方法についての全ての記憶を失い、文明の残骸に取り囲まれた原始人となってしまった。

それから3年、荒廃したサンフランシスコを行く一人の少年がいた。
彼の名は“ワタル”。
ただ一人、言葉をしゃべり、自動車を運転し、銃を撃つ。
彼はなぜ文明社会の記憶を残しているのか。
他に記憶を持っている人間はいないのか。
なぜ人類は記憶を失ってしまったのか。
ワタルの旅はこれらの謎を解明することが出来るのか。

―――――――――――――――――――

「深夜アニメ」なるものが成立したのは、いつ頃だったのでしょう。
と思ってwikipediaを確認してみたところ、1996年の「エルフを狩るモノたち」の放送(25:15~の枠)、1997年の「新世紀エヴァンゲリオン」の深夜の再放送あたりが、その先がけだったようです。
それ以前のアニメと言えば、16時から20時のいわゆるゴールデンタイムに、子どもを中心とした家族で見るものでした。
それが、やや年齢の高い層を対象とした深夜アニメ枠が加わることにより、アニメ化される作品の幅は大きく広がっていくことになります。
それでは、深夜アニメが広がる以前、そのような作品のマルチメディア化の受け皿になっていたのは何か。
それが、カセットテープなどで発売されたオーディオドラマや、多くの局で作成されていたラジオドラマでした。
NHK-FMも同様で、1980年代後半に放送されていた「アドベンチャーロード」や特番のラジオドラマでは、ソノラマ文庫のようなジュブナイル作品(今で言えばライトノベル)や漫画を積極的に取り上げていました。
その面で、ラジオドラマは、深夜アニメなき時代における、マルチメディア化の受け皿という側面があったと思います。

本作品「風の名はアムネジア」も、「吸血鬼ハンターD」シリーズや「魔界都市」シリーズなどで若年層に人気だった菊地秀行さんの原作作品です。
1987年の「インベーダー・サマー」と1988年の本作品。
菊地さんの作品が、2年続けて取り上げられたのも、その象徴的な出来事であったと思います。

さて、今ここで書いた「風の名はアムネジア」と「インベーダー・サマー」ですが、この2作品にはストーリー上のつながりは全くありません。
しかし、いくつか共通した要素があります。
そのうち最大の共通点は、この2作品が後年「インベーダー・ストリート」という1冊の文庫本にまとめられていることが暗示しているのですが……ネタバレですので、この辺にしましょう。

また、両作品の2つ目の共通点は、いずれも音楽がとても印象的であること。
「インベーダー・サマー」における「金髪のジェニー」に匹敵する本作品の印象的なテーマ曲は、ボブ・ディランの「風に吹かれて」(”Blowin' in the Wind”)です。
荒廃したアメリカをさすらう主人公・ワタルとヒロインのソフィア。
その二人の心情と無常感によくあっている楽曲だと思います。
このラジオドラマ版で流れるのはボブ・ディラン版ではなく、ピーター・ポール&マリーのカバー版なのですが、いずれにせよこの作品のイメージとして強く焼き付く印象的な曲です。
同じ文明崩壊後の世界という設定である「バイオレンスジャック」と比較しても、アメリカ文明の痕跡が色濃く残った舞台であり、実際のアメリカの楽曲が良くあうのです。
この音楽が持つイメージと作品の一体性という面では、ラジオドラマは原作小説以上の効果的なメディアだと感じます。

そしてこの2作品の3つ目の共通点は、主役とヒロインに当時の人気アイドル俳優を当てていること。
「インベーダー・サマー」では坂上忍さん・伊藤つかささん・安永亜衣さんのトリオでしたが、本作品では木村一八さんと鷲尾いさ子さん。
昭和の名漫才師・横山やすしさんの息子さんとして有名な木村一八さんですが、本作が放送された18歳当時は、タレントから俳優、歌手へと活躍の場を広げ、大人気となった時期でした。
ちなみにタレント活動の自粛につながる暴行事件を起こすのは、この放送から僅か10カ月後の1988年11月でした。
本作品では純真で快活な青年、ワタルを好演していたのですが…

また、ヒロインのソフィアを演じていた鷲尾いさ子さんは、1985年に全日空水着キャンペーンガールでデビューした方でした。
サントリーの清涼飲料「鉄骨飲料」のCMでブレイクするのが1989年ですので本作品はその前年、俳優の仲村トオルさんと結婚するのが1995年ですので本作品はその7年前ということになります。
ファンに方には大変失礼ながら、本作品での演技はかな~り棒読み。
今も昔も、意外と駆け出しのアイドルや若手女優を起用することがあるNHK-FMのラジオドラマですが、正直、(よくない意味で)これほどの仕上がりになってしまっている作品はあまり出会えません。
鷲尾さんの演技の方向性がラジオドラマに合わなかったのか、準備時間がなかったのか。
NHKでは数少ない。不幸な例だったと思います。

その他の出演者としては、アニメ「シティハンター」の槇村香役などボーイッシュな役で定評のある伊倉一恵さんが身体の弱い男性(ジョニー)役だったり、アニメ「うる星やつら」のメガネや「ハイスクール!奇面組」の一堂零などの変態?役で有名な千葉繁さんが殺人鬼役だったり、意外と面白い配役です。

さて、ストーリーについては、第7話で衝撃の事実が判明するのですが、ワタルが割とあっさり受け入れちゃったり、なぜかアムネジア3年で結構複雑な言語を人間が話したり楽器まで弾いていたりして、微妙に納得いかない部分もあります。
菊地さんは割とちゃんとしたSF作家さんなので、原作にあった説明が省略されているのではないかという気もします。
ただ、この作品は、そんな細かいを気にするより、「風に吹かれて」を聴き、その雰囲気を十分に楽しめればそれで十分な作品であるようにも思います。





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