青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

インベーダー・サマー 原作:菊地秀行(アドベンチャーロード)

作品:インベーダー・サマー
番組:アドベンチャーロード
格付:A
分類:SF(日本)
初出:1987年6月22日~7月3日(全10回)
原作:菊地秀行
脚色:津川泉
演出:保科義久
主演:坂上忍

それは特別な夏だった。
信州の静かな田舎町・夕笛市。
すべては、陽炎がたつ夕笛高校のグラウンドに、白いブラウスを着た少女が現れたときに始まった。
その少女の姿を一目見たすべての男子生徒の胸に切なさが溢れ、そして世界は「書き換え」られ始めたのだ。
光る蝶や竜が出現し、男子生徒が口に出した言葉は奇怪な言語に変わり、風景は輝く半透明の異世界のそれへと変貌を遂げた…
恋する者の思いは世界を変えることができる。
それはひと夏の出来事。
すべての者が切なく思い出す、あの夏の出来事。

―――――――――――――――――――

深夜アニメなどというものが、まだなかった1980年代。
今で言うライトノベルの元祖のような作品を、電波に乗せて放送していたのは、テレビではなくラジオでした。
NHK-FMのラジオドラマ番組も同様であり、新井素子さん(「グリーン・レクイエム」)、田中芳樹さん(「西風の戦記」)、高千穂遥さん(「銀河番外地 運び屋サム」)、笹本祐一さん(「妖精作戦」)、花井愛子さん(「夢の旅」)、折原みとさん(「夢みるように愛したい」)、群ようこさん(「無印OL物語」)など、「親に勧められたからではなく面白そうだから自分の意思で手に取る」類の多くの小説が取り上げられました。
菊地秀行さんもこのような娯楽小説の魁の一人です。
「吸血鬼ハンターD」シリーズはあまりにも有名ですが、ファンの間ではいくつかのノスタルジックな雰囲気が特徴の読み切りSFでも有名で、その代表作ともいえる本作「インベーダー・サマー」と、「風の名はアムネジア」も、NHK-FMの「アドベンチャーロード」で取り上げられました。
この2作は1987年6月と1988年1月というわずか半年のインターバルでラジオドラマ化されています。
2005年にこの2作品が「インベーダー・ストリート」という1冊の本に収録されたこともあり、ずっと意図して連続して放送されたのではないかと思っていたのですが、改めて調べると、本作品「インベーダー・サマー」が脚色:津川泉さん、演出:保科義久さんのコンビで制作されているのに対して、「風の名はアムネジア」は脚色:佐久間堯さん、演出:小木哲郎さんのコンビで制作されており、NHKのラジオドラマの制作体制を考えると、それぞれ独立した企画であったようです。
それだけ当時の菊地秀行さんが人気があったということでしょう。

さて、例によって脱線からスタートしてしまいましたが、本作品「インベーダー・サマー」は口笛で演奏される「金髪のジェニー」が印象的な抒情的なSF作品です。
ある日、夕笛市に東やよい(あずま・やよい)という少女が現れることにより物語は始まります。
彼女に出会った男たちは、一人残らず、どうしようもない切なさにとらわれ彼女に恋をしてしまいます。
そしてそれにつれ現れる数々の奇怪な現象。
男子生徒たちは自分たちの言動の異常さすらわからなくなってしまうのですが、そんな中、夕笛高校の剣道部員で「夕笛の麒麟児」と謳われる名剣士・片桐学だけは、ただひとり正常な判断力を保ち続けることができます。
そのため、事態の異常さに気が付いた彼は真相を探り始めるのですが…

本作品、異次元?異星?からの侵略がテーマのため一応、SFには分類できそうですが、科学的な説明は一切ありません。
ストーリーもわかったようなわからないような。
だから、昔聴いた時は、正直に言って「まっ、こんなものかな」という程度でした。
しかし改めて聞いてみると、すべての主要登場人物たちが現実との間に持っているズレのようなものを解消できないでいる苦しさ、もどかしさを、全編に漂うノスタルジックな雰囲気が丸ごとまとめ上げており、何とも言えない視聴後感を感じました。
そもそも、片桐がただ一人正気を保てていたのは、彼が正常だったからではなく、物語の開始時点ですでに壊れてしまっていたからである、なんて時点で切ないものです。
自分の侵略を自ら拒み続ける東やよいも、決して報われない恋の最中にあるもう一人のヒロイン・影野小夜(かげの・さよ)も、現実の変革を志しつつ全く違うものにたどり着いてしまった新聞記者・大友といった登場人物たちのどうしようもない思いが、おじさんから見た学生時代を包むノスタルジーという枠で強引にまとめられているのが見事なような、なんか騙されたような…
何とも不思議な作品でした。

さて、本作品で主役の片桐を演じたのは、若き日の坂上忍さん。
最近は独特のおやじキャラですっかりお茶の間の人気者に復帰した坂上さんですが、本作品放送当時は立派な「アイドル」でした。
アイドルなので演技はまあまあといいったところですが、剣士・片桐が発する気合の声などはなかなかのものです。
それにしても月日の経つのは早いものですね。

一方、ヒロインについては、東やよいを演じる安永亜依さんと、影野小夜を演じる伊藤つかささんのダブルヒロイン体制。
そういえば、坂上忍さんと伊藤つかささんのコンビは、後番組「サウンド夢工房」の「ガール・ミーツ・ボーイ」でも主演されていましたね。
正直、安永さんについては「妖精作戦」、伊藤さんについては「ビバ!スペースカレッジ」という、より印象の強い作品があるので、本作品がお二人のベストとは思わないのですが、ふたりともかわいい声をしていますよねえ。
その他、「ルパン三世」の次元大介役で有名な小林清志さんが、石川五右エ門風の役をしているのが面白いところですが、実はあまり出番はありません。
というか、あの役必要だったのでしょうかね?
なお、この「インベーダー・サマー」はソノラマ文庫からカセット版発売されていましたが、これはこのアドベンチャーロード版とは別物のようなのでご注意ください(松本保典さん、江森浩子さん、林原めぐみさんなど出演)。
ソノラマカセットは、「妖精作戦」のようにNHK版を使ったものと、本作品や「西風の戦記」のようにNHK版とは別物の場合があって紛らわしいですね。

最後に全く関係?ないことをひとつだけ。
先日(2016年3月)に漫画家の小山田いくさんが亡くなられました。
私にとっては「すくらっぷ・ブック」などいくつもの忘れられない作品を残してくださった大切な漫画家さんでした。
「すくらっぷ・ブック」も長野県(小諸市)が舞台。
長野にはほとんど言ったことがないのですが、こういった作品からなんだかやたらと抒情的なイメージを持ってしまっています。
一度、行ってみようかなあ。

【保科義久演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。



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