青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

白狐魔記 天草の霧 原作:斉藤洋(青春アドベンチャー)

作品:白狐魔記 天草の霧
番組:青春アドベンチャー
格付:A
分類:伝奇
初出:2016年4月6日~4月15日(全10回)
原作:斉藤洋
脚色:藤井香織
演出:藤井靖
主演:成河

奥州の深山、白駒山(しらこまさん)には仙人が住むという。
その仙人に弟子入りすれば、多少はまともな法力を得て、藩主・板倉重正さまのお力にもなれるかもしれない。
そうして白駒山に旅立った、彼、三河深溝藩の密偵「南蛮堂煙之丞」は、思惑どおり不思議な力を使う男に出会った。
しかし彼は「自分は仙人ではない」という。
さらに世の中の雑事にかかわる気もないそぶりもしているのだが…
いやどうみても、世の中の動きに興味津々だ。
性格もお人好しであるのが透けて見えている。
そして、ある男が彼のことを「白狐大仙」(びゃっこたいせん)と呼んでいるのを聞いた。能力も凄そうだ。
漏れ聴くところによれば正体は狐だそうだが。そんなことは関係ない。
こうなったら押しかけてでも弟子にしてもらうしかない。
そう、九州は島原で大きな一揆が起きようとしている。
板倉さまがその討伐に派遣されそうなのだ。
一刻も早く板倉さまのお役に立てる力を得なくては。

―――――――――――――――――――

平安時代末期を舞台にした「白狐魔記 源平の風」で始まったこのシリーズも、本作品「白狐魔記 天草の霧」でついに江戸時代に突入しました。
武士という存在の不思議さ(あるいは愚かさ)に拘ってきた主人公の化け狐・白狐魔丸(しらこま・まる)ですが、武士という存在が成立した時代に生まれた彼も、ついに最後の武士時代を迎えたことになります。
シリーズもいよいよラストスパートです。
原作小説の「白狐魔記」シリーズは、この後、第6弾の「元禄の雪」まで発刊されているのですが、「元禄」で「武士」とくればアレです。
意外と気の利いた放送スケジュールを採ることがある「青春アドベンチャー」。
例えば「226事件」を扱った「蒲生邸事件」は実際に2月末に放送していました。
この「天草の霧」自体が、島原の乱の終結した4月に放送しているのも意識的かもしれません。
次作のテーマがアレであるならば、放送時期はずばり年末と予想します。
当たるでしょうか?

さて、第6弾の話ばかりしていても仕方がないので、本作品の話に戻ります。
本作品の舞台は、作品タイトルからもわかるとおり「島原の乱」。
白狐魔記シリーズは、今までは基本的に「武士=悪」または「武士=愚か」という図式で戦いを描いてきました。
しかし、本作品でクローズアップされるのはカルト集団のカリスマ指導者・天草四郎時貞。
島原の乱は、過去にキリシタンによる宗教戦争という側面を強調しすぎた反省からか、最近は、虐げられた被支配層の反乱という側面が強調されがちです。
しかし、実際は、これらの要素以外にも、食い詰めた旧領主の配下武士による暴発、ポルトガルの植民地獲得活動などさまざまな側面があったようです。
本作の作中でも、圧制者(=武士)に対する抵抗者として徒に天草四郎を持ち上げることはなく、むしろ天草四郎の狂気や、一揆側のやりすぎ(寺社の打ちこわし)なども描いています。
というより、本作における天草四郎は、シリーズでは恐らく初めての明確に設定された悪役として描かれています。
振りかえって考えてみると、このシリーズ、白狐魔丸の各時代の友人に敵対する登場する人間たちは、愚かであったり、狡猾ではあったりしても「悪人」としては描かれていなかった気がします。
「源平の風」では結局、源頼朝は登場しませんでしたし、「蒙古の波」の黒幕は人間ではなかった。
「洛中の火」の後醍醐天皇や足利尊氏(両者とも作品には出なかったかも)も悪意があってしていることではなかったでしょうし、「戦国の雲」では魔王・織田信長すら比較的好意的に描いていた。
しかし、今回の天草四郎は完全にクロ。
最後まで一切、反省なし。
むしろ清々しいくらいです。
そして、言い訳をしなかったという面では、原作者を始めとする制作陣も同様。
登場人物は歴史上の人物ですので、一方的に悪役にするのは、後世の視点から断罪しているようでもあり、勇気が必要なところでしょうが、今回はきっちり悪役に仕上げています。
自ら数百年間も私情だけで生きてきたにも関わらず、天草四郎を「私怨で動いている」と断罪しているツネ姫よりよほど潔いと思います。
そう、ここまで考えて、私がこの白狐魔記シリーズに抱いてきた「もやもや」の原因のひとつが何だったのか分かったような気がしました。
このシリーズ、とにかく「悪人」がいなかったんです。
「誰も本当は悪くない」といった少女漫画的な甘さが何となくもやもやしていた原因だったのだと思います。
その点で、本作品はこのシリーズでは今までのところ一番すっきりした作品でした。

さて、本作品のキャスト、スタッフは概ねいつもどおり。
主役の白狐魔丸を演じるのは俳優の成河(ソンハ)さん。
本作品でも第1話の冒頭で「ケーーン」という年季の入った鳴き声を披露されています。
それにしても、白狐魔丸のお人好しぶりはあいかわらずですねえ。
本作品でも自ら渦中に首を突っ込んで行っているとしか思えません。

また、白狐魔丸の師匠の「仙人さま」が、「蒙古の波」以来、久しぶりの本格復帰。
当然、キャストもいつもどおり今井朋彦さん。
でも後半には全く登場せず結局、大した活躍はしませんでした…
なお、今井さんが本格的に青春アドベンチャーに出演されたのは2001年の「ダブル・キャスト」あたりからだと思うのですが、さすがにお声は随分、老成されたように感じます・

その他、ツネ姫役の坂本真綾さん、ナレーションの坂口理恵さんといったように、常連さんもいつもどおりの配役です。
過去には「ランドオーヴァーシリーズ」や「CFギャングシリーズ」のように、シリーズ途中で配役が変わってしまった作品もあるのですが、やはり継続していただきたいものです。

一方、今回一番のゲストは、日本史の授業でも主役級として扱われる天草四郎時貞を演じた声優の緒方恵美さんでしょう。
TVアニメ「幽☆遊☆白書」の蔵馬役で声優デビューした緒方さんですが、蔵馬以外にも「新世紀エヴァンゲリオン」の碇シンジ役(青春アドベンチャーでは珍しい庵野秀明監督作品の主役経験者)、「遊☆戯☆王」の武藤遊戯(遊戯王)役、「美少女戦士セーラームーンS」の天王はるか(セーラーウラヌス)役など、少年役や男っぽい女性の持ち役が多い方です。
この天草四郎の配役も演出の藤井靖さんが明らかに狙って配役したものと思われます。
アニメ声優さんらしい、ケレンミたっぷりの演技が素敵です。

また、スタッフも概ねいつもどおり。
演出の藤井靖さん、脚色の藤井香織さん、音楽の日高哲英さんのトリオは、第1作の脚色以外はいつも同じです。
なお、この放送に併せて?、脚色の藤井さんがラジオ日本の「カフェ・ラ・テ」にゲスト出演されました。

さて、いよいよ次は「元禄の雪」。
もちろんまだ放送が決まっているわけではありませんが、この「天草の霧」で「武士たるもの散り際を心得ていたい」などというセリフが出るたびに、「これは次回作の前振りか」と思ってしまいました。
「戦国の雲」、「天草の霧」とだんだんと陰惨な内容になってきたこのシリーズ。
まさか最後に「武士の美学」などで締めることはないとは思うのですが、さてどうなるのか。
原作を読まずに待ちたいと思います。

【白狐魔記シリーズ】
第1作 源平の風
第2作 蒙古の波
第3作 洛中の火
第4作 戦国の雲
第5作 天草の霧(本作品)



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  • 2016/09/02(金) 01:59:00 |
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