青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

昨日の海は 原作:近藤史恵(青春アドベンチャー)

作品:昨日の海は
番組:青春アドベンチャー
格付:A
分類:少年
初出:2016年1月11日~1月22日(全10回)
原作:近藤史恵
脚色:さわだみきお
演出:佐々木正之
主演:横浜流星

大江光介は、四国の寂れた町・磯ノ森(いそのもり)に両親と3人で暮らす少年
進学校に入学したころから「将来は磯ノ森を出ていくかも知れない」と漠然とは思っていたが、他人に誇るものも、他人から隠さなければいけないものも、いずれも持っていない、ごくごく平凡な高校生…だと思っていた。
しかし、母の姉である芹(せり)伯母さんが東京から戻ってきたときに、芹の両親、すなわち光介の祖父母が実は心中で他界していたということを聞いてしまう。
光介にとっては噂でも聞いたことがなったが祖父母の心中事件。
しかし、それが噂にならなかったのは、地元の人間ならだれでも知っていることだったからなのだ。
そしてそれを契機に、光介は周りの人達が心中事件について胸に秘めていた思いを知るようになる。

―――――――――――――――――――

本作品「昨日の海は」は、近藤史恵さん原作作品としては「さいごの毛布」に続いて青春アドベンチャーで2作品目の作品です。
前作「さいごの毛布」は、老犬ホーム(飼い主が世話をできなくなったと老犬を引き取って余生をみとる施設)を舞台にした作品で、女性の成長物語的な要素が強い作品でした。
しかし、近藤さんは「サクリファイス」で第10回大藪晴彦賞を受賞した推理小説家でもあり、本作品は推理小説としての側面がより出ている作品です。
とはいえ、それは、あくまで「ほんのり推理小説風」といった程度の味付けです。
具体的には、祖父母の心中事件に関して、彼らの娘2人(すなわち光介の母の夢(ゆめ)と伯母の芹)が抱えてきた思いが少しづつ明かされたり、写真家をしていたという祖父と当時、付き合いのあった人々、カメラ屋のおやじや祖父の弟子だった女性の登場し曖昧に当時の事情を明かしていきます。
そして、光介が「~だったんだろうか?」と考えて各回が終わる形で回が積み重なっていきます。
基本的には、淡々と、そしてちょっとだけ抒情的に時間は過ぎていき、大きな事件は起こらない作品です。
なお、推理劇のキーとなるのは天井裏で段ボールに入って見つかった古い写真。
段ボールは汚れていないのに、中に入っている写真だけ汚れている。
汚れてしまった写真を段ボールに入れて保管していたのはなぜか。
そして保管したのは誰か?
前半最後にこの写真に絡んだあるシーンが展開され、それまでの回で流されていた落ち着いたエンディング曲とは趣の違う、ちょっと不穏で落ち着かない曲調のエンディング曲で前半5回を終わります。
そのため、2週目(第5回~第10回)はがらりと雰囲気が変わるかも、と思ったのですが、結果としては大きくは変わらず、最終回を迎えました。
一応、「心中事件」の真相はおおむね明かされるのですが、本作品も「さいごの毛布」と同様に本質的には若者の成長物語といってよいと思います。

ところで何となくモヤモヤが残る本作品の謎解き。
謎解きといっても犯人探しというより、過去に何があったかを探る趣向す。
一応、最終回での「発見」で当時の事件の背景が明かされ、何となく起こったことの推測はつくようになっているのですが、明言されているわけではありません。
また、事件直後に東京に出たままなぜか磯ノ森に帰りたがらなかったという芹伯母さんの長年の行動、前半最後の芹伯母さんの涙などを考えると、実はもっと語られていない真相があったのではないかという気がしてなりません。
この辺は、「冷凍人間の復活」でやったように、勝手に真相を憶測してみようかとも思ったのですが、よく考えたら本作品は原作のある作品。
まずは原作を読んで補完を図ってみたいと思います。(※)

本作品の主役である大江光介を演じるのは俳優の横浜流星さん。
光介は普通の高校生ですので、積極的に謎解きをする探偵的な行動も一部でするものの、基本的には「主人公」というよりは、語り部的な位置づけの役です。
そのため、横浜流星さんによるモノローグのナレーションが多い作品になっています。
横浜流星さん(本名らしい)は、もともとファッション雑誌「ニコ☆プチ」や「nicola」のモデルを務められたモデルさんで、2014年2月スタートの「列車戦隊トッキュウジャー」でヒカリ(トッキュウ4号)で人気になった方だそうです。
実は本作品の初回放送日である2016年1月11日のNHK-FMでは、「イケメンボイス」の楽曲をひたすら流す「今日は一日“イケボ”三昧」が、青春アドベンチャーが始まる直前の22時45分まで放送されていました。
当然、アニメや特撮のファンの方がその三昧を聴いていらっしゃったと思うのですが、その三昧MCの草尾毅さん(青春アドベンチャーでは「太陽の簒奪者」、「オルファクトグラム」、「トリガー」などに出演歴あり)の囁きから(結果的に)シームレスに青春アドベンチャーにつながるような状況になっており、「随分久しぶりに青春アドベンチャーを聞いた!」「横浜流星さんが青春アドベンチャーにでている!」「このまま青春アドベンチャーも聴こうかな」などのつぶやきがTwitterのタイムラインに溢れていました。
丁度、第1回の放送日だったのも良かったのだと思います。
休日の月曜日だから起こった現象ですが、ファン層拡大には「月曜日の三昧あと」は馬鹿にできない効果があるのではないかと思いました。
もっとも青春アドベンチャースタッフもすでにこの効果を見越しての横浜流星さん起用だったのかも知れませんが。



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(※)2016/3/1補足
原作本を読んでみました。
細かい点を言えば、祖父祖母が心中した事実を作品開始時点で知っているといった細かい設定の変更や場面の入れ替え、セリフとモノローグの組み換えなどはみられます。
また、ラジオドラマで前半最後の山場と設定された「写真に絡んだあるシーン」が原作では3分の2程度の位置にあることからもラジオドラマは原作の終盤を重視した構成になっています。
ただし、以上を踏まえても、大まかな展開やセリフは全く同じで、肝心の「ミステリーの核心」も全く同じであり、全体の雰囲気も良く再現していますので、原作に忠実なラジオドラマ化といってよいと思います。
しかし、原作とラジオドラマはほとんど同じなのに、原作を読んでラジオドラマを聴いたときのようなモヤモヤ感は感じませんでした。
それはなぜかと考えると原因は二つ思い浮かびました。
ひとつは「ミステリーの核心」(心中だったのか無理心中だったのか、無理心中だったとして祖父と祖母はどちらがどちらを先に殺したのか、娘を愛していたのは祖父なのか祖母なのか)の表現の仕方。
ラジオドラマでもほぼ完全に材料は提示していますが、言葉ではっきりとそうだと言っていないのに対して、原作でははっきりと文章にしています。
もうひとつは、先ほども書いた「写真に絡んだあるシーン」の描き方。
ラジオドラマでは芹おばさんが泣きながらあることをしているのですが、原作ではそれほど劇的な描かれ方をしていません。
この芹おばさんの様子を見て少し裏読みしすぎてしまったのかも知れません。

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