青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

新宿鮫・氷舞 原作:大沢在昌(青春アドベンチャー)

作品:新宿鮫・氷舞
番組:青春アドベンチャー
格付:AA-
分類:推理
初出:1997年11月3日~11月14日(全10回)
原作:大沢在昌
脚色:西山務
演出:保科義久
主演:阿部寛

新宿警察署生活安全課の刑事・鮫島。
エリートとして警視庁に入庁しながら、公安上層部に関するある秘密を知ったがゆえに、出世レースから外され新宿署で飼い殺しにされている男。
しかしその秘密故に警察組織もまた鮫島に軽々しく手出しをすることができない。
鮫島は新宿をねぐらとして、自らが信じる正義のありか、ひとりの刑事としてのあるべき姿を追い続ける。
彼には上層部からの圧力は関係ない。
一旦、事件に食いついたら決して離れない。
そう彼は、キャリア出身の新宿署員、制度の中のはみ出し者、「新宿鮫」。

―――――――――――――――――――

ハードボイルド作家・大沢在昌さんの代表作「新宿鮫シリーズ」の第6作目「新宿鮫・氷舞」を原作とするラジオドラマです。
アルバイト探偵」の記事でも書きましたが、今でこそ日本を代表するハードボイルド作家として認知されている大沢さんですが、この新宿鮫シリーズがヒットするまでは売れっ子とは言えませんでした。
新宿鮫シリーズの第1作が発表されたのは1990年。
同年、「このミステリーがすごい!」の第1位になりそのまま流行作家となった大沢さんは、ハードボイルドの枠にとどまらず、2006年から2009年まで日本推理作家協会理事長を務めることになりました。
本作品はあまり謎解きの要素が大きくはないのですが、大沢さんの推理小説業界全体に対する貢献も含めて本ブログでは「推理」のジャンルに分類しました。
なお、大沢さんにとってのハードボイルドとは、「『惻隠の情』であり、『傍観者のセンチメンタリズム』である。自分の生き方を貫き、自らが傷つきながらも闘うことを選ぶ男の心情を描く物語である。」(出典:wikipedia)のだそうです。
本作品もハードボイルドといいつつ、決して暴力や殺人にあふれている作品ではなく、ジャンルも「活劇」とするにふさわしい作品ではありません。
その意味でも「推理」で妥当だったと思います。

さて、青春アドベンチャーでラジオドラマ化された新宿鮫シリーズは、この「氷舞」だけです。
ただし、鮫島の立ち位置のバックボーンにある「公安上層部に関するある秘密」については、本作品でストーリーに絡んでくることはなく、前後の作品を知らなくても作品を楽しむ上での支障はほとんどありません。
青春アドベンチャーでハードボイルドものといえば、20年に及ぶ歴史の中でも、桐野夏生さん原作の「顔に降りかかる雨」、逢坂剛さん原作の「あでやかな落日」、グレイズ・スミス原作の「レディ・スティンガー」程度しかありません。
奧慶一さんの手による、いかにも「昭和の刑事ドラマ」的なBGMを楽しみつつ、青春アドベンチャーで数少ないハードボイルドものとして、鮫島のカッコよさ、あるいはそれと同居するやるせなさを素直に堪能すれば良い作品だと思います。

さて、「鮫島のカッコよさ」といえば忘れてならないのは、本作品で鮫島を演じている阿部寛さんの演技。
阿部寛さんといえば、TVドラマ「TRICK」・「結婚できない男」や映画「テルマエ・ロマエ」の演技があまりにも印象的で、最近ではすっかり3枚目のイメージも強くなってしまいましたが、もともとは「ノンノ」や「メンズノンノ」でカリスマモデルといて活躍していらっしゃった方。
その誰もが知るルックスと渋い声はともに鮫島に適役だったといえるでしょう。
まあ、その渋い声ゆえに、ラジオドラマである本作品の序盤では、ややセリフが聞き取りづらい気もするのですが…
そういえば「新宿鮫」は映画やTVドラマにもなっているのですが、映画で鮫島を演じたのは真田広之さん、TVドラマで鮫島を演じたのは舘ひろしさんです。
阿部寛、真田広之、舘ひろし…ってすごい顔ぶれですね。
このくらいでないと鮫島は演じられないのかも知れません。
また、阿部さんがこの鮫島を演じたタイミングである1997年ですが、この年は阿部さんが一度低迷期を迎えた後、1995年の大河ドラマ「八代将軍吉宗」で再浮上のきっかけをつかんだ直後になります。
この後、2000年に仲間由紀恵さんと共演した「TRICK」で再ブレイクすることになるわけです。
このタイミングの阿部さんに声を掛けるあたりNHK-FMのスタッフの眼力もなかなかですね。

また、その他の出演者としては、鮫島の恋人のロックシンガー・青木晶(あおき・しょう)を演じるのは渋谷琴乃さん。
青春アドベンチャーでは「天使のリール」の主演のほか、「金春屋ゴメス」や「エンジェルス・エッグ」にも出演された常連さんでした。
また、ヒロインの杉田江見里(すぎた・えみり)を黒田福美さんが演じています。
「恋人」と「ヒロイン」の両方がいるのはどういうこっちゃ?と思われるかも知れませんが、この辺は聴いての(読んでの)お楽しみでしょう。
ただ、先ほど「シリーズの途中であることは本作品視聴に影響はない」旨を書いた直後に逆のことを書いてしまって恐縮なのですが、最終回・最後の晶とのくだりだけは、やはり長いシリーズの一部としてみないとあまり感情移入できない部分なのかも知れません。

その他、一匹狼を余儀なくされている鮫島をさりげなくサポートする上司の桃井役を小高三良さんが、鮫島の数少ない理解者である鑑識課の藪(やぶ)役を坂本あきら(坂本明)さんが演じていらっしゃり、おふたりともさりげない暖かさが感じられる演技が印象的です。
「新宿鮫でも迷うか。だが君が迷うような人であるからこそ、我々は君にことを託せるんだ。」
桃井課長のセリフです。
このふたりのサポートあってこその鮫島だと感じます。
その他、元警察官で鮫島の前に立ちはだかる立花元警部を綿引勝彦さんが演じているほか、ナレーションは佐々木功(ささきいさお)さんが務めています。
綿引さんは同じハードボイルド調の「あでやかな落日」にも出演されていますが、渋い声が合いますね。
また、佐々木功さんのナレーションは「シュナの旅」や「ウォーターマン」でもおなじみ。
なかなか聴きどころが多い配役です。

【保科義久演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。





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