青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

スタープレイヤー 原作:恒川光太郎(青春アドベンチャー)

作品:スタープレイヤー
番組:青春アドベンチャー
格付:AA
分類:異世界
初出:2015年6月1日~6月12日(全10回)
原作:恒川光太郎
脚色:堀田りえこ
演出:木村明広
主演:田中敦子

「斉藤夕月様、スタープレイヤーの世界へようこそ。
この世界はあなたが元いた世界とは別の惑星です。
1. あなたはこの世界において10個の願いを叶えることが出来ます。
2. 願いはこのスターボードを使って叶えます。
3. スターボードは電子機器ではありません。何かあっても壊れません。
4. スターボードは紛失すると再び与えられないのでご注意ください。
5. スターボードはスターボードを使える者以外には見えません。」
冴えないアラサー女性・斉藤夕月(さいとう・ゆづき34歳)は、ある日、道端のくじ引きで10個の願いがかなえられるという権利に当選した。
ただし、願いが叶えられるのは異世界でだけであり、しかも100日間はその異世界から出られないという。
幸運なのかそうでないのかよくわからないが、とにかく夕月はこの100日間をエンジョイしようと決めるのだが…

―――――――――――――――――――

日本ホラー小説大賞、日本推理作家協会賞等を受賞している恒川光太郎さんの原作小説をラジオドラマ化した作品です。
恒川さんの作品が青春アドベンチャーで取り上げられるのは本作品が初めて(※同年10月にFMシアターで「夜市」が放送されました)。
以下の角川のプレスリリースによれば、演出の木村明広さんに本作品を勧めたのは、このラジオドラマで脚色を担当している堀田りえこさんとのこと。
脚色も力が入っていると思われます。

(外部リンク)http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001508.000007006.html

さて、冒頭で恒川さんの受賞歴を書きましたが、実は本作品はホラーでもなく推理ものでもなく、一種の異世界ファンタジーです。
さらに、異世界ファンタジーでもいくつかのパターンがあり、現実の地球とは全く縁のない架空の世界だけが舞台の作品もありますが、本作品はそうではなく、現実世界に生きている主人公が何らかの理由で不思議な異世界へと赴くタイプです。
このタイプは、「主人公が別の世界に赴く」という意味では、タイムスリップに近い構造の作品です。
実は青春アドベンチャーなどのNHK-FMのラジオドラマでは「タイムスリップ」ものも多いのですが、このタイプの異世界ファンタジーも意外と多く、「西風の戦記」、「ランドオーヴァーシリーズ」、「これは王国のかぎ」、「二分間の冒険」などが該当します。
しかし、主人公が異界に赴く方法・きっかけは、例えば「西風の戦記」では事故、「ランドオーヴァー」は異世界の買取など、少しずつ異なるのが面白いところです。
ちなみに、本作品で主人公の夕月が異世界に赴くことになるきっかけは「くじ引き」。
ある意味コテコテの展開ではあります。

さて、異世界内限定で10個の願いを叶える権利を得た夕月ですが、最初こそ、万事に対して「えー!」と驚きの声を上げるなど多少の戸惑いはあったものの、早々に状況に順応し、気軽に願い(=スター)を消費し始めます。
何分、かなえられる願いの数が10個もあり、そう簡単にはなくなりませんので、気軽に使ってみようという気持ちもわかろうもの。
その願いも、世界を征服したり、贅沢の限りを尽くとかのゴージャスなものではなく、自分の生家を再現したり、美人になってみたり、庭をつくったりといった、割とほのぼのしたものです。
このままほのぼの路線で行くのかと思ったのですが、4つめの願いあたりから、夕月が心に抱えていた「闇」が願いに現れてきます。
そして他のスタープレイヤーや原住民、そして「外来民」との接触により、少しずつわかっていくこの世界の姿。
さらには、国家間の争いに巻き込まれたり、夕月やその協力者のマキオとはまた違った考え方をする元地球人との接触など、ストーリーは様々に展開していきます。
このように、本作品、毎回、少しづつ状況が変わる中身の詰まった脚本であり、なかなか予想外の展開が続き飽きさせません。
一方で、作品導入部の、夕月がこの世界になるきっかけとなった出来事は、脚本家によってはクダクダと時間を割いてしまいがちな部分ですが、本作品では最小限度の時間しか割り当てておらずすぐに作品世界に入っています。
エピローグにも余計な時間を変えずすっきりとまとめている。
この辺の(原作のすべてを万遍なく描こうとすると散漫になりがちな)ラジオドラマの特性に併せた思い切りもなかなかです。
小袖日記」や「スーツケース・キッド~バイバイわたしのおうち~」もそうでしたが、堀田りえこさんの脚色はなかなか小気味いいですね。

さて、本作品で主役の夕月を演じるのは声優の田中敦子さん。
洋画の吹き替えからアニメまで幅広くこなしている方で、吹き替えではニコール・キッドマン、アニメでは草薙素子(攻殻機動隊)あたりが当たり役の方のようです。
アニメ声優をキャスティングすることが多い木村明広さんの演出作品らしいところです。
また、本作品では"マキオ"を演じる吉見一豊さんにも注目したいところ。
吉見さんは、「ヘウレーカ」のアルキメデス、「封神演義」の黄天化を始めとして、本当にたくさんの青春アドベンチャー作品に脇役として出演されていますが、本作品では夕月につぐ重要キャラクター。
いかにも普通のおじさん風の声が、この作品の世界観に却ってうまくあっていると思います。
また、人気ラジオドラマ「NISSAN あ、安部礼司〜BEYOND THE AVERAGE」の姫川皐月役でその筋では(どの筋だ?)有名で、また青春アドベンチャーファンとしては直前の時間帯の番組である「ミュージックライン」のパーソナリティとしてもお馴染みだった俳優・声優の平田裕香さんが、ほとんど、第7話にしか登場しないある役のためだけに出演されています。
意外と女性の出演者が少ないこの番組では数少ない重要な女性の役です。

本作品、特に深いテーマがあるわけではなく、単純な娯楽作品としてみても、強烈な印象を残す過激な要素もありません。
しかし、気持ちの良い登場人物たちと巧みなストーリー展開、そしてそれらを邪魔しないフラットな演出で、リラックスして聴ける良作になっていると感じました。

なお、この作品、これだけで十分完結した作品ですが、フルムメアの正体や最後の登場した人物の素性、夕月が使っていないスターなど、多くの使いきれていない要素が残っているのも事実です。
実は2015年夏に原作の続編が発刊されることが公表されています。
これらの要素が解消されることが楽しみのような蛇足のような…
その評価は第2作の出来次第ということになるのでしょうね。




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