青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

チョウたちの時間 原作:山田正紀(青春アドベンチャー)

作品:チョウたちの時間
番組:青春アドベンチャー
格付:A
分類:SF(その他)
初出:2015年4月13日~4月24日(全10回)
原作:山田正紀
脚色:山本雄史
演出:藤井靖
主演:多田直人

中学校教師・新介の前に、ある日、黒服の男が親しげに近づいてきた。
その男の誘いに乗り、故郷の村へと出かける新介。
そしてその新介と男を“純粋時間の海”から見つめる一組の男女がいた。
この男女、“シン”と“マヤ”は何者なのか。
そして、20世紀初期のイタリアに実在した、若き天才物理学者エットーレ・マヨラナとの関係は?
時間と空間を超えた人類の尊厳を掛けた戦いが始まる。

―――――――――――――――――――

本作品「チョウたちの時間」は、SF界の大御所、山田正紀さんが1970年代に書いたSF小説を原作とするラジオドラマです。
山田さんのデビュー作「神狩り」同様に「超越的で、人間には理解することすらできない何者か」に対する戦いを描いた作品です。
読者(リスナー)に、「人間では理解できない存在」をイメージさせる手段として、「神狩り」では言語学や実在の哲学者ヴィトゲンシュタインを利用していました。
一方、本作品「チョウたちの時間」では、物理学やマヨラナ、ボーアといった実在の物理学者を小道具として使っています。
ただ、あくまでイメージさせる手段として使っているのであって、その正体を明確に示さないという点では両作とも同じです。
それはそうですよね、何と言っても「人間には理解できない」のですから。

さて、本作品は冒頭の粗筋紹介のとおり、古河耕史さん演じる日本人・新介のエピソードからスタートするのですが、実は主役は新介ではなく、時間人・シンです。
シンを演じるのは、「小惑星2162DSの謎」、「フランケンシュタイン」、「ヘウレーカ」など、多くの青春アドベンチャー作品で好演している、演劇集団キャラメルボックス所属の俳優・多田直人さん。
もはや常連出演者といっても過言ではないでしょう。
ヒロインのマヤを演じる大塚千弘さんとは「海に降る」以来の、主役コンビということになります(「海に降る」では大塚さんが主役でしたが)。
ナレーションの塩田朋子さん(懐かしの「サラマンダー殲滅」主演)といい、SF成分多めの出演陣です。

ちなみに、不覚ながら山田正紀ファンのハズなのには私は本作の原作は未読です。
そのため原作がどのようの雰囲気の作品なのか正確には分かりません。
しかし、本作品中に登場する「人間が自らの手で、歴史をありうべき姿に想像するために」というセリフからは「神狩り」や「弥勒戦争」などの初期の「神シリーズ」と類似の雰囲気を想像してしまいます。
その雰囲気を念頭に置きながらこのラジオドラマを聴くと、とても楽しい作品であることは確かなのですが...大変失礼ながら何かが違う...気がしてなりません。
主人公が決意するシーンに勇ましいBGMは必要でしょうか。
主人公が戦うのは勇気があるからでも、希望が見えるからでもない。
ただやらなければならないから。
それは「勇ましい」というより「痛ましい」物語のはずです。
そう考えると、焦燥や無念さを前面に出した多田さんの熱演もやや空回り気味に感じられますし、「敵」の代理人(具象化)である“男”(演:星智也さん)もむしろもっと感情を表に出さず淡々としゃべって欲しかった。
また、演出面でも、SF的な雰囲気を出すのにピコピコ音を使うのは、そろそろやめた方が良いのではないでしょうか。
「小惑星2162DSの謎」のような宇宙SFであればともかく、本作品のような観念的な作品にはいささか似合わない気がします。
そういえば「完璧な涙」が個人的に今一つ合わないと感じたのも、ピコピコ音のせいだったのかも知れません。
(本作品を楽しんでいる方。ご不快に感じたらすみません。)

という訳で、テーマ自体がとても好みなのでそれなりに楽しんではいたものの、上記の熱演に今一つ入り込めなかったこととに加え、「核から目をそらせば人類の問題が解決できる」という主張への疑問もあり、正直「こんなものかな」と思いながら終盤を迎えました。
しかし、最終回は予想以上にきれいにまとまり、かなり印象良く、聴き終ることができました。
SFらしい雄大な舞台と、序盤の伏線につながる美しい展開。
そして優しく穏やかな余韻の残るエンディング。
北壁の死闘」などの記事でも書きましたが、やはり終り方はとても大事ですね。

さて、それにしても最後まで残った疑問は、本作品と「神狩り」などの初期「神シリーズ」との違い -主として後者の持つ疲労感や破滅思考などが本作品にないこと- は原作自体が持つ性格なのか、このラジオドラマの特徴なのかということ。
この点はやはり原作を読んでみないと何とも言えません。
近日中に原作も読んでおきたいと思います(読みました。感想は追記にて)。




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2015/5/30追記
原作(徳間文庫版)を読みましたが、大きな印象は変わらず。
「第二次性徴が失われ男女の区別がつかない」という「時間人」はもっと繊細な演技をするような演出で良かったと思いますし、”敵”(=目フィスト?)を演じる役者さんも男っぽ過ぎた感じがします。
また時間という観念的なものを扱う作品なので、文章で長々と説明できると小説と比べるとラジオドラマは難しいなあというのが正直な感想でした。
それにしても徳間文庫版、装丁がほとんどライトノベルですね。
中二病的な内容といい、山田正紀さんもライトノベルの元祖といっても良いと思います。

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