青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

G戦場ヘヴンズドア 原作:日本橋ヨヲコ(青春アドベンチャー)

作品:G戦場ヘヴンズドア
番組:青春アドベンチャー
格付:AAA-
分類:職業
初出:2005年3月28日~4月8日(全10回)
原作:日本橋ヨヲコ
脚色:吉村奈央子
演出:城宝秀則

そのとき、手を差し伸べてきた長谷川鉄男の背後で、確かに天国へと続く扉(ヘヴンズドア)が開くのが見えた、と言ったら笑うだろうか。
売れる漫画を描くために家族を犠牲にした顧みなかった父を「尊敬する」といった鉄男。
そんな男は大嫌いだったはずだ。
でも確かに天国への扉は見えたのだ。
そして、鉄男が小学生の時に書きためたという漫画を一目見た時にそれは確信へと変わった。
俺はこいつとなら天国への扉を見られるかも知れない。
こいつが、もう一度俺を震わせてくれるなら、この世界で一緒に汚れてやる。

―――――――――――――――――――

本作品「G戦場ヘヴンズドア」(じいせんじょう・へう゛んずどあ)は日本橋ヨヲコさんの漫画を原作とするラジオドラマです。
青春アドベンチャーは若年層向きのラジオドラマを制作する番組ですが、年間10作品程度制作される中で、漫画原作の作品は0~2作品程度とあまり多くありません(概ねの傾向はこちらの記事参照)。
本作品が放送された前々年の2003年は「光の島」(尾瀬あきらさん原作)、前年の2004年は「ミヨリの森」(小田ひで次さん原作)、2005年は本作品だけ、そして翌2006年はなしと、漫画原作作品は0~1作品の年が続いていました。
個人的には、あまり漫画とラジオドラマは相性が良くないと思っているのですが、その中では本作品はなかなか上手く仕上がっているラジオドラマだと思います。

この原作を一言で言うなら「漫画制作の現場を描いた漫画」。
しかも、漫画家志望の若者が、成功を求めて漫画界に飛び込んでいくもので、古くは藤子不二雄Aさんの「まんが道」、最近では大場つぐみさん・小畑健さんの「バクマン。」が有名なジャンルですね。
さて、このジャンルの漫画には大きく2系統あります。
ひとつは作者自身を中心に、実在の人物や実際の出来事をベースとして面白おかしく脚色していく、自伝的な半ノンフィクション作品。
「まんが道」の他、少し毛色は違いますがいますが、島本和彦さんの「アオイホノオ」もこれに該当します。
もうひとつは、リアリティーを出すために一部の設定に現実を取り込みつつも、キャラクターやストーリーはほぼ完全なフィクションの作品。
「バクマン。」はこちらで、他にも相原コージさん・竹熊健太郎さんの「サルでも描ける漫画教室」などもこのジャンルでしょう。
本作品は後者に該当し、登場人物などは完全にフィクションです。
それにしてもこれらの作品のほとんどがタイプの違う男性二人を主人公とするのは、先発した「まんが道」の影響が大きいということなのでしょうか。

さて、本作品の内容に移りますが、冒頭の作品紹介を呼んでどう感じましたか?
「この世界で一緒に汚れてやる。」は、作中における主人公・堺田町蔵(さかいだ・まちぞう)の台詞をそのまま引用したのですが、はっきりいってイタい台詞ですよね。
実際、この町蔵、勝手に盛り上がって勝手に失望する。
決心したと思ってもすぐに迷う。
自意識過剰でかなり痛い少年です。
その背後には幼少期の出来事があり、仕方がない面もありますが、それにしても...
そして、彼の「戦友」となる鉄男やヒロインの久美子もかなり痛々しい。
というか、この二人はもはや病んでいると言って良いレベル。
言葉使いが汚い主人公とヒロインの掛け合いも、何だか殺伐としています。
さらに周囲の人間たち(特に鉄男の父親)もかなり、イッてしまっています。
本作品は、このエキセントリックなキャラクター達が、芸術家気取りの言動を繰り返す、気味の悪い作品です。
でもそれがいい。
大体、漫画家なんてハードな職業、少し頭のねじが緩んでいないとできませんし、それにつきあう編集者も同様。
そんなハードな世界にさらに「売れる漫画を描くこと良くないのか」といったセンシティブな問題まで持ち込めば、わやくちゃな展開になるのは必定。
以下のような強烈な台詞が連発されることになります(括弧内は私の心の突っ込みです)。

「先生の漫画、ちゃんと読めていないよ...」(←漫画って「ちゃんと」読まないといけないものなのですか?)
「お前はまだお前じゃない!」(←では誰なんでしょう?)
「漫画は練習するものではない。覚醒するものだ。」(←超能力者ですか?)
「漫画家に一番大切なのは人格だ!」(←この作品を聴いているとそうは思えないのですが。)
「漫画を描いてごめんなさい。」(←謝らなくてもいいから。)
「漫画は絵と話しだけで出来ているんじゃない。人間の意思で出来ているんだ。」(←ごめんなさい。もう否定する気も起きません…)

この、気味の悪いくらいのテンションの高さ(と一転したメランコリックさ)こそがこの作品の魅力だと思いますが、最後は意外と落ち着いた終わり方であり、物語として破綻していないのも悪くない点だと思います。

話は変わって、本作品の出演者の紹介に移りますと、まず主役の堺田町蔵役が俳優の内野謙太さんで、ヒロインの菅原久美子役は女優の黒川芽以さんです。
そして町蔵の親友でありライバルともなる鉄男役が俳優の大地泰仁さん。
大地さんはあまり青春アドベンチャーではお名前を聞きませんが、内野さんは「バスパニック」、「スカラムーシュ」、「移動都市」など、黒川さんは「僕たちの戦争」や「ゼンダ城の虜」などにも出演されています。
特に黒川さんは(西洋風)時代劇である「ゼンダ城の虜」よりも、本作品や「僕たちの戦争」のような現代劇の方がやはり溌剌(久美子というキャラクターにこの表現が正しいかは不明ですが)と演技しているように感じます。
本作品、各回ごとのエンディングでは、第5回と最終回を除き、この3人以外のキャストは「その他の皆さん」でひとくくりにされ、この3人しかキャストとして紹介されません。
その他にも、関秀人さんが演じる「少年ファイト」編集長の阿久田鉄人や、プロの漫画アシスタントでお姉キャラ?の猪熊宗一郎などのような強烈なキャラクターもいるのですが、この3人しか紹介しないということは、あくまで本作品はこの主役達3人の物語であることを示しているのだと思います。

一方、本作品の演出を担当しているのは城宝秀則さんという方。
全般にBGMをあまり使わず、効果音を上手く使う演出であり、他の青春アドベンチャー作品と少し雰囲気が違います。
本作品はボブ・デュランの「ノッキン・オン・ヘヴンズドア」がテーマ曲として印象的に使われているのですが、キーとなる第6回や第9回のエンディングではそれすら使われず、効果音だけを背景としてスタッフ・キャストが紹介されるという印象的な演出です。
この城宝さん、大体決まった演出家さんが順繰りに担当することが多い青春アドベンチャーにおいて、この1作しか担当していません。
不思議に思って検索してみると、むしろTVドラマの演出家のようです。
テレビ畑の演出家さんを起用した青春アドベンチャー作品としては、他にも「カラマーゾフの森」(高橋陽一郎さん演出)、「あでやかな落日」(小林武さん演出)などの例があります。
しかし、城宝さんの場合、「てるてる家族」などのNHKのドラマも演出しているものの、「マルモのおきて」や「リーガル・ハイ」など、民放のドラマがメインのようです。
演出家という職業がどのように作品に関わられるのか、全く知らないのですが、いわゆる「フリーの演出家」なのでしょうか。
そうしてみると、自由業の象徴のような「漫画家」の物語を、フリーの演出家に担当させるあたりも、なかなか面白い趣向の作品だと思います。

最後に原作者である日本橋ヨヲコさんのブログを紹介します。
このラジオドラマ版「G戦場ヘヴンズドア」を聴いた時の、日本橋ヨヲコさんの嬉しさ、そして演出の城宝さんや出演者の皆様の真剣さが伝わってくる記事です。

(外部サイト)http://nihonbashi.jugem.jp/?eid=20





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