青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

ニコイナ食堂 作:樋口ミユ(青春アドベンチャー)

作品:ニコイナ食堂
番組:青春アドベンチャー
格付:B+
分類:タイムスリップ
初出:2015年2月2日~2月13日(全10回)
作 :樋口ミユ
演出:小宮山佳典
主演:朝倉あき

親の都合で、大阪に住む祖母のもとに預けられた少女・イイナ。
いかし彼女は、キツくあたってくる祖母にも、大阪のノリを強制してくるクラスメートにも馴染めず、食事すら満足に取れないほど精神的に追い詰められてしまう。
そして祖母に反発して、夜の街に飛び出したイイナは、いつしか自分が昭和27年の大阪にいることに気が付く。
終戦直後の貧しい日本で途方に暮れたイイナは、戦争孤児のニコに出合い、ニコの部屋に居候をさせてもらうことになる。
不満を押し隠しながら必死に生きてきた少女イイナは、自称「屈強で、不屈で、希望しか考えへん」少女ニコと出会い、ともに行動することになるのだが。

―――――――――――――――――――

本作品「ニコイナ食堂」は、劇作家で脚本家の樋口ミユさんによる、青春アドベンチャーで2作品目のオリジナル脚本のラジオドラマです。
樋口さんの前作品「僕たちの宇宙船」は「宇宙SF風」の作品でしたが、本作品は言ってみれば「タイムスリップもの風」の作品です。
タイムスリップする先は終戦直後の昭和27年。
青春アドベンチャーで終戦後を舞台とした作品としては、江戸川乱歩さんの「青銅の魔人」や、そのパスティーシュ作品である北村想さんの「怪人二十面相・伝」がありますが、数々のタイムスリップものを放送してきた青春アドベンチャーでもタイムスリップ先が終戦直後なのは本作品が初めてでしょう。
ただ、大戦中がタイムスリップ先の「珊瑚の島の夢」、「僕たちの戦争」、「ほろびた国の旅」あたりが近い雰囲気ではあります。
なお、「タイムスリップもの」も広い意味ではSF作品ですが、本作品も「僕たちの宇宙船」も本格的なSFではありません。
舞台設定に少しだけSF的な味付けをしてあるだけで"Science"の要素は少なく、本質的には登場人物の気持ちの揺れや成長がメインテーマの作品です。

さて、本作品は樋口さんのオリジナル脚本と澁江夏奈さんのオリジナル音楽がとてもマッチした作品です。
終戦直後の貧しく社会。
その社会からも見捨てられたような戦災孤児を始めとする弱者が主な登場人物であり、その悲しさ、やるせなさが、どこか幻想的な雰囲気の中、とても良く表現されています。
ニコの歌う「ひとりーぼっちは、かーなーしいー」という歌声は、どこか「カラマーゾフの森」の「カラマーゾフのもーりーはー」に近い独特の悲しさがあります(全然違うか...)
何はともあれ、どちらかといえばFMシアター向きの地味なストーリーであり、出演者さんたちの演技も良く言えばしっかしりした、悪く言えば地味な演技です。
また、ストーリーも、2週間のほぼすべてを使って人探しをする地味な内容であり、「タイムスリップもの」という言葉から連想されるような大活劇ではありません。
ただし、主役のふたりの少女を、朝倉あきさんと谷村美月さんという若い(そして美しい)女優さんが演じていることで、何とか青春アドベンチャー枠の雰囲気にとどまっています。
また、最後の展開とオチはコテコテの予想どおりではありますが、毎回、とても良いところで終わるので、続きを聴きたい気持ちが最後までちゃんと持続する作品でした。
この辺はさすがにプロの劇作家が、この枠に合わせて作り上げたオリジナルの脚本だからこそでしょう。
なお、エンディングは歌で終わる点は、本作品の2作品前に放送された「予言村の転校生」と少し似ています。
やはりきちんと曲を作っている作品は強いと感じます。

さてさて、本作品を語るにあたって欠くことができないのは出演者の話。
公式ホームページにおける本作品の出演者欄では、イイナを演じる朝倉あきさんと、ニコを演じる谷村美月さんだけ少し分けて表示されており、このお二人が主人公格の扱いになっています。
特に注目すべきはやはり朝倉あきさん。
2014年4月放送の「放課後はミステリーとともに『探偵部への挑戦状』」のご出演をもって芸能活動を休止されてから早1年弱。
この度、新しく合同会社コニイ所属でめでたく活動を再開されたようです(追記をご参照下さい)。

(外部リンク)http://www.connie.co.jp/concept.html

朝倉さんといえば、どこかたどたどしさが残るセリフ回しながら、気持ちの良い声、演技で好感触な方でした。
しかしあらためて本作品を聴いてみると...
上手いじゃないですか。
「トリック新作スペシャル3」での怪演も結構印象的だったのですが、しゃべり方が少し独特なのでセリフ回しはあまりうまくないという先入観がありましたが、(恐らく)久しぶりの演技のハズなのに、速いセリフも悠々とこなしています。
また、「幻想郵便局」では共演者の杉本有美さんが嘔*する場面がありましたが、本作品では朝倉さんが*吐するシーンを熱演?しています。女優さんって大変ですね。
とにかく、大変失礼なことを考えていたなと反省しきりです。
でも厳しい環境に置かれているイイナなのに朝倉さんが演じるとどこか和んだキャラクターになるのが不思議です。
やはり朝倉さんは癒し系であります。
なお、第1回冒頭の朝倉さんのセリフが「拝啓、ママ。私は元気です。」なのですが、これは朝倉さんの復帰を待っていたファンへのメッセージ?というのは考えすぎでしょうか。

最後に本作品を演出された方を紹介するとオリジナル脚本の「泥の子と狭い家の物語」が印象的な小見山佳典さん。
同様にオリジナル脚本の「僕たちの宇宙船」や、原作者自身に脚色を任せた「恋愛映画は選ばない」など、なかなか凝った企画が多いのは、制作統括を兼任し、自由に動けるというお立場にあることも関係しているのかも知れません。





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<2015/2/14追記>
本記事は当初、本作品の放送中に仮アップしたのですが、その時点でコメントのとおり、朝倉さんの新た強い所属事務所が判明しました。
その後放送終了後に、記事を書きなおしたため、わかりづらくなっているのですが、コメントのやりとりは当初の記事を前提にしていることにご留意ください。

 
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テーマ:ラジオドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

コメント

朝倉さん

合同会社コニイで活動開始されてますよ

  • 2015/02/08(日) 14:03:55 |
  • URL |
  • 通りすがり #-
  • [ 編集 ]

Re: 朝倉さん

> 合同会社コニイで活動開始されてますよ

以下のURLですね。
http://www.connie.co.jp/concept.html

イマイチ事情はわかりませんが、元気に頑張っていただきたいものです。

  • 2015/02/08(日) 20:39:20 |
  • URL |
  • Hirokazu #-
  • [ 編集 ]

感動しました!

今回の「ニコイナ食堂」大変感動して聴かせていただきました。
このブログの内容の深さにも感動しています。
これからも、楽しみに読ませていただきます。

  • 2015/02/14(土) 21:48:08 |
  • URL |
  • ゆうひゃん #-
  • [ 編集 ]

お初にお邪魔します

 青春アドベンチャーとFMシアターのヘビーリスナーです。
 この作品がよかったので、なにか情報がないか探してたどり着きました。
 オリジナル歌モノはどうしても付け焼刃感や学芸会感が否めず、物足りなさを感じてきましたが、この作品はこれまで自分が聴いてきた中では極めてよくできていると感じました。
 ストーリーもベタではありますが文句はありません。もう少し最初と最後の現代の部分を厚くしてもよかったように思いますが。関西人なので、現代、終戦直後問わず舞台が身近な感覚でよく分かります(ディープな場所が今もありますので)。
 朝倉さん、この枠ではよく耳にしますが、それ以外は全く知らず、活動休止されていたことも先ほど知ったくらいです。素朴な演技もどちらかと言えば好感は持っておらず「ヘタではない」と感じていた程度でしたが、今回聴いて「上手さ」を確信しました。活動再開と聞いてこれからも楽しみです。
 こちらのサイトでは多くの作品をレビューされていらっしゃいますね。頭が下がります。自分も聴いた覚えのあるものばかりなのでまた楽しみに拝読させて頂こうと思います。

  • 2015/02/14(土) 22:50:24 |
  • URL |
  • 森 格之進 #-
  • [ 編集 ]

Re: 感動しました!

> 今回の「ニコイナ食堂」大変感動して聴かせていただきました。
> このブログの内容の深さにも感動しています。
> これからも、楽しみに読ませていただきます。

コメントありがとうございます。
タイムスリップものとしてはありきたりな展開でしたが、さすがにオリジナルだけあり、枠にピシッとおさまった、締まった作品でしたね。
改めて考えると第1回冒頭のシーンは、最終回のあのシーンの前出しですし。
終戦直後という、今ではあまり受けが良くなさそうもない時代設定の作品を若者向けの番組の題材にしてしまうのもNHKらしいところです。

ブログの内容にもお褒めの言葉をいただきありがとうございます。
一応、偉そうな「評論」にはならないようには気を付けていますが、基本的にあまり考えずに徒然なるままに書いています。
ご不快に感じられる記事もあろうかと思いますが、ご容赦下さい。

  • 2015/02/15(日) 07:50:48 |
  • URL |
  • Hirokazu #-
  • [ 編集 ]

Re: お初にお邪魔します

コメントありがとうございます。

>  青春アドベンチャーとFMシアターのヘビーリスナーです。

月曜日から土曜日までお疲れ様です(笑)。
私はこのブログのために過去作を聴かなければいけないので、青春アドベンチャーだけでいっぱいいっぱいです。

>  この作品がよかったので、なにか情報がないか探してたどり着きました。
>  オリジナル歌モノはどうしても付け焼刃感や学芸会感が否めず、物足りなさを感じてきましたが、この作品はこれまで自分が聴いてきた中では極めてよくできていると感じました。
>  ストーリーもベタではありますが文句はありません。もう少し最初と最後の現代の部分を厚くしてもよかったように思いますが。関西人なので、現代、終戦直後問わず舞台が身近な感覚でよく分かります(ディープな場所が今もありますので)。

この枠は原作付の作品が多くそれが魅力の番組だとは思いますが、オリジナル脚本の作品も良く練られていていい作品がありますよね。

>  朝倉さん、この枠ではよく耳にしますが、それ以外は全く知らず、活動休止されていたことも先ほど知ったくらいです。素朴な演技もどちらかと言えば好感は持っておらず「ヘタではない」と感じていた程度でしたが、今回聴いて「上手さ」を確信しました。活動再開と聞いてこれからも楽しみです。

私も朝倉さん出演の映画やテレビをほとんど見たことがなく、はっきり言って「味はあるが上手くはない」と思っておりましたが、「トリック」の怪演をみてちょっと印象が変わりました。
「幻想郵便局」や「放課後はミステリーとともに」は意識して普通の少女っぽく演じていたのかも知れません。

ブログの内容は...ご笑覧くださいとしか申し上げられません。
ご不快な記事がなければ良いのですが。

  • 2015/02/15(日) 08:01:07 |
  • URL |
  • Hirokazu #-
  • [ 編集 ]

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