青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

カムイ外伝 原作:白土三平(FMシアター)

作品:カムイ外伝
番組:FMシアター(ダミーヘッド・アドベンチャー・スペシャル)
格付:A
分類:伝奇
初出:1995年1月2日(全1回)
原作:白土三平
脚色:吉田玲子
演出:川口泰典・芦田健
主演:古澤徹

心優しき天才忍者・カムイ。
差別と暴力と裏切りが渦巻く江戸時代に自由を求めた戦士…
執拗な追手に立ち向かう抜忍、カムイ。
今日、彼を待ち受けるものは、果たして、誰か。
(小林清志さんによる「ナイトライダー」のナレーション風に再生してください)

―――――――――――――――――――

白戸三平さんが1965年に書き始めた傑作忍者漫画「カムイ外伝」を原作とするラジオドラマです。
1969年に「忍風カムイ外伝」としてアニメ化され、その後何度も再放送されていますので、中年以降の方であればむしろこちらでなじみ深いのではないでしょうか。
NHK-FMではなぜか原作開始の30年後に当たる1995年にラジオドラマ化されました。
ちなみに、松山ケンイチさん主演、崔洋一さん監督で実写映画化されたのがさらに14年後の2009年。
時代を超えた名作という言い方は陳腐すぎますでしょうか。
なお、「カムイ『外伝』」というからには本編にあたる「カムイ伝」という漫画作品も実在します。
「カムイ外伝」はカムイ伝の主人公の一人であるカムイのみにスポットライトを当てたスピンオフ作品ですが、アニメ化されたこともあり、外伝の方が一般には有名ですね。
ちなみに同じNHK-FMのFMアドベンチャーでラジオドラマ化された「カムイの剣」(1984年)は全く関係ない作品です。

さて、本作品は以下の4つのパートに分かれています。
このうち1~3が前半の60分で放送され、4.は後半の60分で放送されました。
原作で言うと、第1部から第2部の前半にあたります。

1. 飯綱落とし
2. 抜忍
3. 鶴
4. スガルの島

カムイが抜忍になった直後から物語は始まり、次々と迫りくる追手との戦いが続きます。
特に序盤はその忍者同士の戦いが見どころの作品です。
当時は青春アドベンチャーで、「ヘッドフォンで聞くとその場にいるような臨場感を体験できる」ことが売りのダミーヘッドと呼ばれるバイノーラル録音技術が多用されていた時期でした。
本作品、「この時期になぜカムイ外伝?」といわれかねない時期の作品ですが、ダミーヘッドを使って音だけで忍者どおしの戦い(空中戦や手裏剣の飛翔)を表現すること自体がひとつの野心的な目標だったといえるのかも知れません(追記をご参照ください)。

それにしても忍者どおしの空中戦といった華やかな要素こそあるものの、ストーリーは基本的に閉塞感に包まれた陰鬱なものです。
先行きの見えない絶望的な戦い、そして根底にある差別と身分制度。
抜忍仲間を信じ、彼らを助けながら、あまりの力量に、彼らからも信じてもらえず、再び孤独にならざるを得ない。
今となってはよくエンターテイメントとして受け入れられていたなあ、と思ったのですが、ふとあることに気が付きました。
「空中戦の爽快感」、「先の見えない絶望的な戦い」、「身分制度や差別」、「身内すら信じられない」。
これって今流行っている「進撃の巨人」と同じファクターですよね。
「カムイ外伝」の主人公カムイがあくまで孤独でしかも超人的な天才であるに対して、「進撃の巨人」の主人公エレンはそうではない(代わりにリヴァイ兵長がその位置づけか)など現代に合わせた違いはありますが、意外とこういった陰鬱なテーマは今でもいけるのか知れません。

ナレーションでも言っているとおり「カムイの行きつく先は果たして死しかないのであろうか」、それは聴いてのお楽しみ、といいたいところですが、実は本作品ではカムイの運命に決着がつかないことは、続編があることからも明らかだったりします。
続編とは、同じ1995年の8月に放送された「続・カムイ外伝」。
原作第2部のうち、本作品でラジオドラマ化された「スガルの島」編以降のなかから3作品を選んでラジオドラマ化しています。
後にこちらの「続」だけCDで発売されたようです。
詳しくはいずれ別記事にて紹介します。

本作品において主人公であるカムイを演じるのは、当時、青春アドベンチャーの常連出演者であった古澤徹さん(「青の時間」、「星の感触」、「黒いユニコーン」など)。
その他、川久保潔さん(「封神演義」など)、海津義孝さん(「ジュラシック・パーク」、「カルパチア綺想曲」など)、松重豊さん(「時間泥棒」、「猫のゆりかご」)などの常連さんのほか、千紘あいさん、こだま愛さん、春風ひとみさん、前田悠衣さんなどの宝塚女優さんなど、川口泰典さん演出作品らしい方々が出演されています。

なお、本作品は冒頭に書いた通り前半60分弱と後半60分弱に分かれているのですが、その間にインターバルであることを示すナレーションと音楽が入ります。
その中で、「トイレに行きたい人は今のうちに行ってね」などの説明が入るのですが、そこで「録音している人はテープを裏返してね」という趣旨の説明も入ります。
テープを裏返すといったあたりにすでに時代を感じるのですが、同時に録音していることを前提としたナレーションに時代のおおらかさを感じます。
もちろん、録音したものを個人で楽しむ分には一向に問題があるわけではなく、NHKとしても1986年の「ザ・素ちゃんズ・ワールド」の中で、「録音テープ下さい、というのは勘弁して下さい。」といっているとおりあくまで個人で楽しんでくださいということだとは思いますが。
なお、おおらかとはいえ当時から明らかに意識していたんだなあと思われることもあります。
NHKと言えば独特な固有名詞の言い換えが有名ですが、本作品ではそれではなく、忍者になる前にカムイが属していたとされる階級についてです。
原作では明確に「非人」と書いてあるのですが、本ラジオドラマでは「カムイが属したこの身分」、「虐げられた身分」などの曖昧な表現になっています。
色々な配慮の上に成立した作品のようです。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。





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※2015/10/7追記※
2015年9月23日に放送された「今日は一日ラジオドラマ三昧」の中で、この「カムイ外伝」が取り上げれ、演出の川口泰典さんもゲスト出演されました。
それによれば、予想通り当時はダミーヘッド向きの作品をいつも探していたそうです。
なお、この「今日は一日ラジオドラマ三昧」では、「カムイ外伝」及び「続・カムイ外伝」を題材にダミーヘッドの開設がなされており、なかなか興味深い番組でした。

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