青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

白狐魔記 蒙古の波 原作:斉藤洋(青春アドベンチャー)

作品:白狐魔記 蒙古の波
番組:青春アドベンチャー
格付:B
分類:伝奇
初出:2014年9月29日~10月10日(全10回)
原作:斉藤洋
脚色:藤井香織
演出:藤井靖
主演:成河

白駒山で修行をして化身の術が使えるようになった狐・白狐魔丸(しらこま・まる)。
佐藤忠信のために戦った疲れから長い眠りについて約80年。
ようやく目覚めた時、忠信が命を賭けて守った源義経は殺され、義経・忠信主従を討った源頼朝の子孫も実権を失い、その家臣の北条氏が権勢を振るう世の中となっていた。
師匠の仙人に勧められ、再び人間観察の旅に出る白狐魔丸。
その旅の途中で、彼は市谷小平太や北条時輔といった争い事を好まない、芸術家肌の武士達に出会う。
しかし、彼らもまた権力争いの渦に巻き込まれていくのだった。
そんな中、日本に蒙古からの使者が現れ、世情は不穏な気配を帯び始める。

―――――――――――――――――――

本作品「白狐魔記 蒙古の波」は、斉藤洋さんによる児童文学作品「白狐魔記」シリーズの2番目の作品を原作とするラジオドラマです。
第1弾「白狐魔記 源平の風」放送のわずか2カ月後に、同じ青春アドベンチャーでラジオドラマ化されました。
これだけ制作タイミングが近いことを考えると、第1作目が好評だったから慌てて第2作目をつくったのではなく、最初からある程度計画的に制作されたのだと思います。
ちなみに、青春アドベンチャーで斉藤さんの作品が初めて取り上げられたのは、2013年5月「シュレミールと小さな潜水艦」であり、わずか1年半程度の間に3作品が集中的に取り上げられたことになります。

ところで、この3作品はいずれも、藤井靖さんが演出されています。
一方、脚色は全て違う方(シュレミール-花房朋香さん、源平の風-山本雄史さん、蒙古の波-藤井香織さん)が担当されています。
同一シリーズであれば同一の脚本家が担当するのが基本のはずで、「封神演義」の綾瀬麦彦さん、「おいしいコーヒーのいれ方」の佐藤ひろみさん、最近では「放課後はミステリーとともに」の福田卓郎さんなどはシリーズをとおして脚色されています。
しかし、シリーズ内で脚本家が交代する例も散見され、「ゼンダ城の虜~ヘンツォ伯爵」、「窓辺には夜の歌」、「髑髏城の花嫁」などは2作目で脚本家が交代した例です。
本作品を担当された藤井香織さんは、過去の青春アドベンチャーでは2011年の「家電の極意」の中で短編を担当された程度で、長編の脚色では初抜擢のはずです。
折角の縁ですので、長く活躍して頂きたいものです。
あっ!そういえばこの作品は、脚色-演出が、藤井-藤井コンビですね。

さて、本作品の前作との大きな違いは脚本家だけではありません。
前作が全5回と青春アドベンチャーとしては短めの長さであったのに対して、本作品は全10回と標準的です。
原作の頁数でみると、前作が221頁、本作品が235頁と大きな差はありません。
また、内容的に見ても、前作は白狐魔丸が修行を始めるところからスタートし、源義経主従の悲劇を目にするところまでという、かなりの分量を駆け足で消化する作品でした。
それに対して、本作にはそのようなタイト感はありません。

さて、本作品において白狐魔丸は商人「九十九小吉」(つくも・こきち)と名乗るのですが、そんな彼が今回、出会う事件は、言わずと知れた「元寇」。
白狐魔丸は人間という不可思議な生き物に惹かれてはいるのですが、作中でも「素直な狐」と揶揄される彼にはどうしても人間の本性が理解できません。
前作において兄弟同士が殺し合うという人間の負の側面を目の当たりにした白狐魔丸ですが、今度は蒙古襲来に隠された巨大な「人間の悪意」を目撃することになります。
彼が巨大な悪意の前にどのような態度をとるのか。
それは聴いてのお楽しみですね。

ちなみに、本作品で語られる「蒙古襲来に隠された真実」は、よくフィクションの世界で使われる「○経○行○説」であり(伏字でもバレバレでしょうか)、正直、予想どおりです。
このネタの使い方に関しては、例えば三浦健太郎さん・武論尊さんの漫画「王狼」のラストの「この子の名はフビライとする!」など、もっとうまく使っている例も多いので、本作品で使われていてもあまり意外性はありません。
ただ、このシリーズの共通のテーマであろう「人間の本性の探求」にあった味付けがなされているのは好印象でした。

さてさて、本作品の主な登場人物を改めて紹介しますと、まず主役の白狐魔丸(演:成河(そんは)さん)と、仙人(演:今井朋彦さん)の二人が前作から引き続き登場しますが、前作から80年が経過していますので、この二人以外の登場人物は一新されています。
その他では、本作品の前半で白狐魔丸の一番の友となる市谷小平太(いちがや・こへいた、演:箱田暁史さん)や、後半の友である竹崎季長(たけざき・すえなが、演:北村有起哉さん)あたりがメインの登場人物になります。
ちなみに、この竹崎季長は「蒙古襲来絵詞」を書いた実在の人物であり、酒向芳さんが演じる日蓮とともに学校の日本史でも習う有名な人物が登場しているのがこのシリーズの面白い点ですね。
これは個人的な感想ですが、本作品のもっとも魅力的な点の一つが、この竹崎季長を演じる北村有起哉さんの演技です。
本作品の竹崎季長は、「この竹崎季長ぁ~!」という決め台詞を連発する、陽気で楽天的で、かつ、猛る悍馬のような豪放磊落なキャラクターです。
本作品のエンディングが何となく気持ちの良いものになったのも、この竹崎季長のキャラクター(と北村さんの演技)によるところが多いと思います。
今回、本作品の格付けは、前作より半レベル程アップさせましたが、これは竹崎季長の分といっても過言ではありません。
なお、この北村さんのほか、本作品で白狐魔丸のライバルとなる魔狼ブルテ・チョノを演じる千葉哲也さんもそうなのですが、作中で登場人物を演じているときの声と、最後の出演者紹介での落ち着いた声との落差に驚きます。
お二人とも作中では登場人物のキャラクターに合わせてかなり作った声で演技をしている訳で、さすが本職の役者さんだと思います。

ところでこの「白狐魔記」の原作シリーズ、「蒙古の波」の後もまだまだ続いてます。
次の作品は「洛中の火」で、時代は南北朝時代らしいです。(※)
楠木正成!いいですねえ。
青春アドベンチャーでは、「窓辺には夜の歌」、「闇の守り人」など、シリーズ2作目でラジオドラマ化が止まってしまった例が結構あります。
このシリーズは、この「2作目のジンクス」を乗り越えることができるのでしょうか。




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(※)2015/1/25追記
第3作「洛中の火」は2015年1月に無事にラジオドラマ化されました。


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