青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

都立高校独立国 原作:首藤剛志(青春アドベンチャー)

作品:都立高校独立国
番組:青春アドベンチャー
格付:A
分類:活劇
初出:1993年11月8日~11月19日(全10回)
原作:首藤剛志
脚色:菊池有起
演出:川口泰典(外山正恵(※))
主演:松本保典
(※)NHK年鑑では共同名義の演出とされていますが、作品中でコールされるのは川口さんだけです。

生徒会長・関裕子を中心に生徒(主に女生徒)一丸となって、弱小野球部を奇跡の夏の甲子園大会初出場に導いた都立松涛高校。
しかし、部員の起こした“不祥事”を理由に、校長は出場辞退を決めてしまう。
この“不祥事”に裏があることを察知した生徒達は、証拠を集めて交渉を行うものの、大人達の決定は覆られなかった。
この理不尽な事態に怒りを抑えられない生徒達は、渋谷のホテル最上階のスイートルーム「パインウェーブ」の間に集結し、松涛高校を独立させることを決めた。
これが後の世に言う「パインウェーブの誓い」である。
この物語は、生徒会副会長としてこの騒動に巻き込まれた平凡な男子高校生・山本浩の目から見た独立闘争の顛末である。

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本作品「都立高校独立国」の舞台となる架空の高校「都立松涛高校」は、東京渋谷区の松涛(しょうとう)地区に所在するという設定です。
松涛地区とは、JR山手線「渋谷」駅から西方へ少し歩いた東急百貨店本店の西側に位置する、東京を代表する超高級住宅地です。
都心部の一角なのに大規模な敷地が整然と並んだ閑静な住宅地で、地区内には東京都知事公邸や各国の大使館・領事館のほか、麻生太郎元総理や楽天・三木谷社長の豪邸も並んでいます。
でも、この松涛地区、実は、道玄坂や宇田川町といった若者でごった返す歓楽街と、京王「神泉」駅周辺のラブホテル街(東電OL殺人事件で有名)、さらには東京大学教養学部・筑波大学附属駒場中高校(いわゆる「筑駒(つくこま)」)などが集まる文教地区といった、全く異なる属性の地区に囲まれたカオスな地区でもあります。
原作者の首藤剛志さんは小学生の頃から渋谷で暮らしていたそうです。
首藤さんにとって渋谷は熟知している地元であり、本作品もこの松濤地区の持つカオスっぷりを十分に生かした怪作品になっています。
このブログでも今までに、新井素子さん原作の「いつか猫になる日まで」(東京都練馬区が舞台)や清水義範さん原作の「尾張春風伝」(名古屋が舞台)など、いくつも原作者の地元を舞台とした作品を紹介しています。
やはり地元愛というか、地元知識があると何かが違う気がします。
ところで、この原作者の首藤さんは本職は脚本家で、「戦国魔神ゴーショーグン」や「ポケットモンスター」など、主にアニメで活躍された方だそうです。
そのためか、本作品の原作本も「アニメージュ文庫」から出版されています。
本作品もアニメ畑の脚本家さんの作品らしい、破天荒でコミカルな作品になっています。
そうそう、冒頭の作品紹介は結構シリアスに書いてしまいましたが、あれは嘘です。
実際にはおおらかな娯楽作品ですよ。

さて、本作品はひょんなことから始まってしまった都立高校の独立騒動を描いた作品です。
この独立騒動、一応、現代日本の世相(ただしここでいう現代日本とは作品が発表されたバブル期の日本であり、今聞くと隔世の感はあります)を批判し、大人社会からの独立を目指すという側面はあります。
その点では、テーマとしては前々身番組の「アドベンチャーロード」時代にラジオドラマ化された「ぼくらの七日間戦争」や、最近の「屋上デモクラシー」に近いものがあります。
しかし、本作品における登場人物たちは、基本的にあまり強い問題意識もなく、独立したらどうしてもしたいことがあるでもなく、何となく勢いで独立運動を始めてしまうのであり、本作品はあくまでライトな娯楽作品です。
また、三流都立高校のはずなのに、超高校級のピッチャー・速見健(演:橋本潤さん)、超絶的な技術を持ったハッカー・小西修(演:岩尾万太郎さん)、IQ240の天才児・村上直美(演:大輝ゆうさん)、代議士の娘・大山知保(演:平野啓子さん)、無数の特許を持つ発明狂の戸板博士(演:京晋佑さん)、政財界の隠れ蓑になっている病院の跡取り息子である川本智章(演:石井洋祐さん)などが生徒として在籍しているというのも、かなりのご都合主義ではあります。
しかし、いろいろな仲間たちが集まってどういう風に独立を目指していくのかはなかなか興味をひきますし、音楽を含め適度にコミカルな味付けのもなかなか楽しい演出です。
ただし、聴き続けていくうちに肝心の独立を勝ち取る手段が、結局、小西の手腕にほとんどすべて依存していることが明らかになり、正直、少し肩透かしを食らったように感じました。
「松濤高校ご用達」などいろいろ仕掛けはあるんですけどね。
そういった意味で後半やや失速した感があるのが少し残念な作品です。

さて、本作品の主役?の「僕」こと、山本浩を演じるのは声優の松本保典さんです。
あの夜が知っている」、「ランドオーヴァー」シリーズなど、多くの川口泰典さん作品に主演されている、常連出演者さんでした。
そういえば松本保典・川口泰典で、「やすのり・やすのり」コンビですね。
本作品の山本浩は、実は作中で他のキャラクターに話しかけるセリフが極端に少なく、事実上の語り手(ナレーター)です。
ただし、終盤になぜか山本がロボットに乗るシーンがあり、ここだけは、多くのアニメでヒーローを演じた松本さんの本領が発揮された?部分でした。
また、ヒロイン(というかこっちが主役?)の生徒会長・関裕子役を演じた前田悠衣さんのほか、華村りこさん、紘美雪さんといった宝塚出身の女優さんが多く出演されているのは川口さん演出作品らしいところです。
吉田鋼太郎さん、斉藤隆さんなどの渋い出演陣のコミカルな演技も聴きどころでしょう。

なお、この作品、最終回の最後、キャストやスタッフ紹介も終り、エンディングテーマ曲も流れ終わった後に、なぜか出演キャラクターがみんなで演歌調の歌を歌います。
「捨~てた~日本にゃ、未練はな~い~が~」という調子。
異色、というか珍妙な演出です。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。





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