青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

妖怪博士と少年探偵団 原作:江戸川乱歩(アドベンチャーロード)

作品:妖怪博士と少年探偵団
番組:アドベンチャーロード
格付:A-
分類:推理
初出:1986年6月30日~8月1日(全25回)
原作:江戸川乱歩
脚色:大野哲郎
演出:上野友夫
主演:広川太一郎

「・・・その頃、東京中の街という街、家という家では、二人以上の人が顔を合わせさえすれば、まるでお天気の挨拶でもするように、アイツの噂をしていました。アイツは20の全く違う顔を持っていると言われていました。・・・」
仄暗い街角にアイツの影が浮かんでは消える。
変幻自在、風のようなアイツ。
変装の名手であり、どんな場所に忍び込むことも、どんな厳重な警戒の中から狙った獲物を盗む出すこともお手のもの。
希代の名探偵・明智小五郎でさえも恐れる彼の名は「妖怪博士」、そしてまたの名を...

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江戸川乱歩さんの一連の子ども向けの探偵小説、いわゆる「少年探偵団シリーズ」をラジオドラマ化した作品です。
少年探偵団シリーズに関して本ブログではすでに、同じアドベンチャーロードでラジオドラマ化された「透明怪人と黄金どくろの謎」と「宇宙怪人と少年探偵団」を紹介済みです。
しかし、作品が発表された順序でも、作中の時系列でも、これらの作品より前に位置するのが本作品です。
そして、これら一連のNHK-FM版少年探偵団シリーズを通じて、名探偵明智小五郎を演じているのは、ラジオドラマでは“はまり役”として有名な往年の名声優・広川太一郎さん。
大野哲郎さんのオーソドックスな脚色、上野友夫さんのコテコテの演出や、作中の登場人物たちが戦前が舞台ならではの丁寧な言葉で会話していることもあって、そこはかとなく“懐かしい”雰囲気の作品となっています。
ちなみに、本作品には声優の冨永みーな(み~な)さん(めぞん一刻出演者つながりのこちらの記事もご覧ください)が歌う主題があり、これもなかなか昭和な雰囲気を醸し出していて、いい感じです。
でも、冨永さん、主題歌だけで本編には全然登場しないんですけどね。

さて、少年探偵団シリーズの原作小説は戦前の1936年に始まり、太平洋戦争期の中断を経て、戦後に再開された長期シリーズです。
そのうち本作品が原作としているのは、「怪人二十面相」「少年探偵団」「妖怪博士」の、最初期の3作品です。
具体的には、全25回のうち、第1回~第9回が「怪人二十面相」に、第10回~第17回が「少年探偵団」に、第18回~第25回が「妖怪博士」に相当する部分になります。
ちなみに、1980年代以降の青春アドベンチャー系列の番組(青春アドベンチャー・アドベンチャーロード)で制作された400以上の作品の中で、一挙に全20回以上で制作された作品は10作品しかありません(長編作品についての詳細はこちら)。
その中でも全25回の作品は本作品だけですので、その意味で本作品はレア中のレアになります。

では、作品内容の紹介に移りますと、本作品の冒頭から世間の噂になっている“アイツ”ですが、本作品の「ロマノフ王家の秘宝」を巡る事件において、初めて明智探偵一党と対決することになります。
その後、伊豆・修善寺の事件を経て、国立博物館の陳列品を狙った事件の第6話でついに明智と怪人が直接向かい合う場面を迎えます。
丸の内の鉄道ホテルの一室で、“文化省の辻野”と名乗り近づいてきた男を前に明智は静かに切り出します。

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明智:「もっと早くお会いしたかった。」

そしてこれに対し、辻野も不思議な笑みを浮かべながら平然と切り返します。

辻野:「いや、僕もですよ。もちろん僕のことはよくご存じでしょうね。」
明智:「新聞ではあなたのことを...」
辻野改め怪人:「はははは。そうです。アイツですよ、噂の20の顔を持つ男。」

そして明智は怪人が自分の名を騙った伊豆の事件についての不愉快さを口にしつつ、こう宣言します。

明智:「僕が帰ってきたからには美術品には指一本触れさせませんよ。これだけは必ず約束しておきます。」
怪人:「それじゃあ僕も約束しましょう。予告した日に必ず頂きに参ります。」

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表面上はにこやかですが、このやりとりの裏側では、ふたりは部下を使って裏をかき合っている訳です。
本ブログでは本作品のジャンルを「推理」としており、確かに明智と怪人の裏をかく戦いが続き、推理的な要素もありはします。
しかし、このようなやりとりを聞いていると、やはり本作品は「推理小説」というより「探偵小説」という呼び方がしっくりきますね。

なお、本作品中で明智が昔、手がけた事案として「魔術師」の事件について言及するシーンがあります。
「魔術師」は江戸川乱歩が大人向きに書いた明智小五郎シリーズの1作で、明智が文代夫人と出会うきっかけになった事件の話です。
「魔術師」は青春アドベンチャーでは篠井英介さん主演でラジオドラマ化されていますので、そちらの記事も是非ご参照ください。
なお、大人向きの明智シリーズは少年探偵団シリーズと違ってかなり陰惨な内容ですのでご注意を。

ところで、本作品をはじめとする少年探偵団シリーズの出演者は、明智小五郎役の広川太一郎さん、明智文代役の松坂隆子さん、警視庁の刑事(本作では中村係長役)の青砥洋さん、小林少年役の萩原等司さんなどが、アドベンチャーロード版少年探偵団シリーズを一貫してご担当されました。
いうまでもなく“アイツ”こと“20の顔を持つ怪人”を演じる羽佐間道夫さんも、本作から一貫してご出演されています。
また、ナレーションも、一貫して中西龍さんが担当されているのですが、特に本作品は戦前(昭和10年代)の東京が舞台ということもあり、作品の舞台になる東京各所の様子や世情をナレーションのついでに随所で懐かしそうに説明しているのがとても印象的です(基本的には脚本なのだと思いますが)。
仕舞いには明智探偵までナレーションの中西さんの話に割り込んだりしてなかなか凝っています。
ちなみに、本作品での明智小五郎は有名なパリッとした紳士スタイルではなく、モジャモジャの頭髪として描写されています。
まるで横溝正史さんの金田一耕助のようですが、原作でも明智は戦後にイメチェンして紳士スタイルになるまではこのスタイルでしたので、戦前の姿としてはこれが原作どおりで正解です。

さてさて、冒頭ご紹介したとおり「妖怪博士」の物語の後、日本は太平洋戦争に突入していき、“アイツ”も姿を見せなくなります。
しかし、戦後の1949年発表の「青銅の魔人」で“アイツ”は再び東京に舞い戻ってきます。
本作品の約1年後に制作されたラジオドラマ版の「青銅の魔人」シリーズ(「魔人復活 第1部 青銅の魔人」・「魔人復活 第2部 地底の魔術王」)については、別の記事で記事で紹介しています。
それでは来週もまた。キミとこのブログで。(中西龍さん風で)

【アドベンチャーロードの少年探偵団シリーズ】
・「妖怪博士と少年探偵団」(本作品)
・「魔人復活 第1部 青銅の魔人
・「魔人復活 第2部 地底の魔術王
・「透明怪人と黄金どくろの謎
・「宇宙怪人と少年探偵団





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