青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

鷲の歌 原作:海音寺潮五郎(青春アドベンチャー)

作品:鷲の歌
番組:青春アドベンチャー
格付:A
分類:歴史時代
初出:2014年6月2日~6月20日(全15回)
原作:海音寺潮五郎
脚色:小林克彰
演出:藤井靖
主演:古河耕史

江戸時代も末期を迎えつつある安政4年。
琉球国は糸満の漁師・赤人(あかひと)は、難破し流れ着いた土佐から江戸を経て、4年ぶりに故郷の土を踏んだ。
4年の歳月の中で、赤人には忘れられない言葉がある。
漁師出身でありながら米国から帰国して旗本に取り立てられたジョン万次郎の言葉。
「米国では能力次第でこのような出世は当たり前のこと。日本も変わりつつある。そして琉球も変わっていくはずだ。」
果たして、万次郎の予言のとおり、清国と薩摩藩による二重支配のなかで微睡んできた琉球にも変化が起きつつあった。
その変化は、糸満の漁師に過ぎなかった赤人をも巻き込んいくのであった。

―――――――――――――――――――

時代小説の大御所・海音寺潮五郎さん原作の小説をラジオドラマ化した作品です。
青春アドベンチャーで日本の歴史時代ものを原作とする作品は数少なく、1990年代から2000年代にかけてはほとんどありません。
それが近年に入り、2006年の「風になった男」、2007年の「尾張春風伝」、2012年の「蜩ノ記」というようにポツポツと見られるようになってきていました。
そしてついに2014年は、1月の「獅子の城塞」に続いて2作品目の時代歴史ものの採用となりました。
単に量的に増えているだけではなく、本作品は時代歴史小説では大家といってよい海音寺潮五郎さんの作品です。
昔、アドベンチャーロード時代の1987年に、井上靖さんの「おろしや國酔夢譚」がラジオドラマ化されていますが、このクラスの大家というとそれ以来だと思います。
時代歴史ものが好きな私としてはとても好ましい傾向と感じます。

ちなみに、2014年に制作された2作品のタイトル、「獅子の城塞」と「鷲の歌」はタイトルが何となく対になっているように見えます。
実際、スタッフを見ても、脚色の小林克彰さん、演出の藤井靖さんのコンビは両作とも同じですし、選曲などの雰囲気も全般的に似ています。
しかし、そもそも原作者が異なりますし、内容的には全くつながりはありません。

さて、本作品は漂流から帰還したばかりの赤人が主人公ですので、個人的には、琉球と薩摩、そして異国をもまたにかけた大冒険物語になるのではないかと予想しました。
少し前に放送された「獅子の城塞」がそのような作品だったからということもあります。
しかし、本作品はそのような冒険ものではなく、政治ドラマや陰謀劇が主体となった作品でした。
薩摩に協力することによって琉球の独立を勝ち取ろうとする異国通詞の大湾朝忠(おおわん・ちょうちゅう)と彼の理想に賛同する赤人。
これに島津斉彬の意思の代弁者である市来(いちき)や、清国派である座喜味(ざきみ)、摩文仁(まぶに)、その手先の小虎(しゃおふ)。
さらには赤人に好意を持つ村娘の乙鶴(おとづる)やヨシノが絡んで話は進行していきます。
基本的に政治ドラマなので、裏でこそこそするという地味な展開が続くのですが、この地味な展開で、青春アドベンチャーでは長めの15回を飽きさせずのりきってしまうのは、なかなかだと思います。
一応、終盤にはやや激しい展開があるのですが、基本的には淡々と進きますし、結末もすっきりとしない、大人向きの作品です。
青春「アドベンチャー」としてみた場合、それを大人しすぎると感じる向きがあることも事実だと思います。
この辺は趣味の問題だと思いますが。

なお、「尾張春風伝」でも書いたのですが、この作品でも登場人物たちが、西洋由来の意味で「自由」という言葉を発するのがどうしても気になります。
また、言葉といえば登場人物たちはほぼ標準語で話します。
もちろん本気で沖縄弁や薩摩弁を話されたら、全く理解できないであろうことは十分わかるのですが、もう少し方言っぽいイントネーションにした頂けるとより雰囲気が出た気がします。
「風になった男」や「神去なあなあ日常」、「屋上デモクラシー」など方言が良い味になっている作品も多いので。

さて、主役の赤人役は、主に舞台で活躍されている俳優の古河耕史さん。
青春アドベンチャーでは「ツングース特命隊」以来の出演で、初主演かと思います。
少し今井朋彦さん似た感じで、初主演ですがさすが舞台俳優さん、なかなかの演技です

その他、朝忠役は大家仁志さん、市来役は横田栄司さんですが、個人的にはコミカルなところに味があった小虎役の小久保寿人さんが好印象でした。
女性陣は、ヨシノ役が「砂漠の歌姫」でリーヤ役を演じた今泉舞さんで、乙鶴役が「ツングース特命隊」や「これは王国のかぎ」で青春アドベンチャーでは割とお馴染みの坂本真綾さん。
この作品が過度に地味にならなかったのはこのお二人のおかげだと思います。
なお、ナレーションは、これも「獅子の城塞」と同様に文学座の塩田朋子さんが担当されています。
両作品の雰囲気が似ているのはこういうところにも原因があったんですね。
塩田さんは海外ドラマの吹き替えなども良くやられている方で、NHK-FMの帯のラジオドラマでは、サウンド夢工房時代のSF作品「サラマンダー殲滅」(1991年)の主役・神鷹静香役が印象的ですが、本作品ではすっかり落ち着いた雰囲気。
よく考えれば20年以上たっているので当たり前ではありますが。

一方、スタッフは、先に書いたとおり、脚色:小林克彰さん、演出:藤井靖さんのコンビで、2014年のもうひとつの時代歴史もの「獅子の城塞」と同じです。
ちなみに小林さんは「蜩ノ記」の脚色担当ですし、藤井さんは「尾張春風伝」の演出担当でもあります。
こうしてみると、青春アドベンチャーで歴史時代物を担当している方は割と限定されているのかも知れません。

なお、当ブログでは、本作品は「尾張春風伝」と「風になった男」に続けて紹介させていただきました。
特に意識したわけではなかったのですが改めて聞き返すと、この3作品はいずれも「風」がキーワードになっている作品であることに驚かされます。
いずれの作品の主人公も、江戸時代という閉塞した時代に、彼らなりの方法で風穴を開けるべく、奮闘します。
彼らの結末がどうなるのかは、それぞれの作品を聴いてのお楽しみです。


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