青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

風になった男 原作:飯島和一(青春アドベンチャー)

作品:風になった男
番組:青春アドベンチャー
格付:A
分類:歴史時代
初出:2006年7月24日~8月4日(全10回)
原作:飯嶋和一
脚色:いずみ凛
演出:小林諭
主演:宅麻伸

天明の大飢饉による社会不安が続く備前岡山に、夜な夜な怪獣・鵺(ぬえ)が現れるという噂が立った。
鵺はご政道の誤りを指弾して空を飛ぶという。
捨て置くことができなくなった岡山藩は、大規模な捜索の末についに犯人を捕まえた。
鵺と間違えられていたのは、表具師の幸吉(こうきち)。
職人としての腕を生かしてつくった凧で空を飛んでいたのだった。
しかし、詮議を受けた幸吉は、藩政を批判するために空を飛んだという目付の推測を完全に否定し、自らが空を飛ぶに至った半生を語り始める...
「世の中を 憂しとやさしと おもへども 飛びたちかねつ 鳥にしあらねば」(山上憶良)
これは、閉塞感に閉ざされた天明の世で、風のように自由に空を飛ぶことを夢見た男の物語である。

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青春アドベンチャーでは珍しいNHK岡山局制作のラジオドラマです。
題材も岡山局らしく、江戸時代の岡山・池田藩を舞台とした飯嶋和一さん原作の「始祖鳥記」を原作としています。
それだけではなく、主人公の幸吉を演じる宅麻伸さんも岡山のご出身とのことであり、本作品の地元志向は徹底しています。
なお、本ラジオドラマ版はタイトルが変更され、主人公・幸吉の気持ちをよりストレートに表した「風になった男」になっています。

ちなみに、地元志向という面からいうと、青春アドベンチャー系列の番組では、NHK本局以外にも毎年、大阪局や名古屋局が作品を制作しています。
そのほか、ごくまれに札幌局や福岡局の作品もあるのですが、さすがに岡山局は珍しい。
2015年放送の「夜叉ヶ池で見つけた命」を制作した福井局と並ぶ珍しさです。
どのような経緯があったのかわかりませんが、大阪局による「屋上デモクラシー」、名古屋局による「尾張春風伝」など、地方局の作品には地方色を生かした作品が多くと思います。
そのため、このような地方発の作品が増えると、目先が変わって面白いので、是非続けてほしい取り組みだと考えています。

さて、本作品で主役の幸吉を演じているのは、冒頭に書いたとおり、人気俳優の宅麻伸さんです。
まだ若かった1987年に「スナップ・ショット」でも主演されていました。
宅麻伸さんといえば、1990年代に演じたTVドラマ「課長 島耕作」の島耕作役などが印象的な二枚目俳優さんですが、本作品で幸吉を演じたのは宅麻さんが50歳の時。
正確にはわからないのですが、作中の幸吉は30歳前後?と思われます。
しかし、宅麻さんが演じているためどうしても「青春アドベンチャー」というより「中年アドベンチャー」っぽい雰囲気になってしまっています。

この宅麻さんの声に加えて、序盤に幸吉が捕縛されてしまうという展開もあり、作品全体が内省的で暗めのトーンでつくられています。
そのため、「空を飛ぶという」という爽快なテーマの割には、NHKらしい?大人しい、落ち着いた(はっきりいうと地味な)作品になっていることは否めないと思います。
しかし、江戸時代は平均寿命が短く、今より若くして老成していたはずですし、幸吉の性格もどちらかといえば内向的であるため、大きな違和感は感じません。
むしろ、空を飛ぶことに対する情熱、というより狂気をもつ幸吉を演じている宅麻さんの演技はさすがにベテランならではとも感じます。
同じようにベテランの男性俳優である北大路欣也さんが主演したアドベンチャーロード時代の名作「おろしや国酔夢譚」に全体のトーンは似ています。
そういえば「おろしや国酔夢譚」の大黒屋光太夫も、意外と内省的という点では幸吉と似た性格です。
ただ、光太夫に強烈なリーダーシップがあること、光太夫一行の旅がユーラシア大陸を横断する大冒険であったことから、「おろしや国酔夢譚」の方がより「アドベンチャー色」が強かったように思います。
しかし、本作品も、終盤の意外性のある展開や、少し苦味を残しつつも一種の爽快感のある結末など、なかなか楽しめる内容でした。
ちなみにこの作品が制作された2006年は、「プラハの春」や「あでやかな落日」など、やたらと大人向きの作品が多かった年です。
なんとなく不思議な年でした。

その他に出演者の中では、宅麻さんの他にも、梅垣義明さん、吉田晃太郎さん、山口馬木也さんも岡山県の出身だそうで、随所で岡山弁が使われているのも本作品の特徴です。
出身と言うことで言えばナレーションをしている、NHK中村淳平アナウンサーも岡山のご出身。
本当に徹底していますね。
一方、ヒロインのハルを演じたのは「ふたつの剣」でもヒロインを演じられていた京都出身の女優の田畑智子さん。
さすがに田畑さんは岡山出身ではありませんが、田畑さんといえば2000年上期のHNK連続テレビ小説(朝ドラ)「私の青空」で主演された方。
田畑さんの声のお蔭で、ハルは岡山弁がキュートな可憐なキャラクターになっています。
何気ないけど凝った配役ですね。

なお、脚色されたいずみ凛さんと演出の小林諭さんがいずれも青春アドベンチャーではこれ一作しか担当されていません。
色々と異例な作品です。





●上記の「島耕作」は宅麻伸さん版ではなく、高橋克典さん版です。こっちで宅麻さんは部長役で出演されていたと記憶します

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