青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

尾張春風伝 原作:清水義範(青春アドベンチャー)

作品:尾張春風伝
番組:青春アドベンチャー
格付:AA
分類:歴史時代
初出:2007年3月5日~3月16日(全10回)
原作:清水義範
脚色:岩村匡子
演出:藤井靖
主演:今井朋彦

江戸幕府中興の祖と讃えられる八代将軍・徳川吉宗に敢然と逆らった男がいた。
男の名は尾張藩主・徳川宗春。
質素倹約を旨とし農本主義を貫く吉宗に対して、「尾張に極楽を作ってみせる」と啖呵を切って重商主義を推し進める宗春。
閉塞感に閉ざされた“享保の改革”の世において、積極財政と規制緩和により庶民の喝さいを浴びた宗春の、春の風のような爽やかな生きざまを描く。

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清水義範さん原作の小説をラジオドラマ化した作品です。
清水さんは「バードケージ 一億円を使い切れ!」をはじめとして、青春アドベンチャー系列の番組で多くの作品がラジオドラマ化された方です。
その作品ジャンルは様々ですが、本作品は歴史時代ものであり、本作品で取り上げられている題材は“徳川宗春”です。
宗春といえば、一般的には“暴れん坊将軍”徳川吉宗のライバルとして扱われている人物ですが、最近では田沼意次などと並んで再評価が著しい人物です。
清水さんは愛知県のご出身で、名古屋に関連した作品を多く書かれている方ですが、宗春はいわば地元のヒーローであり、特別の思い入れがあるのだと思います。
そしてこのラジオドラマ版を制作したのもNHKの名古屋局ですので、本作品は“ご当地もの”という側面が強い作品です(この次に紹介する「風になった男」も岡山局の制作による“ご当地もの”です)。
なお、この一つ前にご紹介した「オーデュボンの祈り」も名古屋局の作品ですので、2作品連続して名古屋局の作品を紹介したことになります。
実は名古屋局は、NHK本局の制作が多い青春アドベンチャーでも独特の存在感のある作り手だったりします。

さて、冒頭の粗筋では、宗春と吉宗の政策上の対立が作品の主題のようにみえますが、実はそのような要素はやや抑えめです。
前半では宗春の名は通春(みちはる)であり、あくまで部屋住みの四男坊(史実では二十男)という立場。
第5話でようやく尾張藩主となります。
藩主となり名を宗春と変えて以降の活躍を要約すると確かに冒頭のとおりなのですが、これはあくまで後半5話の内容であり、政治ドラマとしてみるとかなり淡泊です。
しかし、藩主に至るまでの自由奔放な生活をじっくりと描いていることによって、リスナーは宗春の気持ちになって後半を聴くことができようになっており、それが通して聞いた時の(タイトルのとおりの)気持ちの良い印象につながっていると思います。
ただし、個人的にちょっと気になったのが宗春が連発する「自由」という言葉。
本作品は「獅子の城塞」や「鷲の歌」も担当された藤井靖さんの演出作品で、青春アドベンチャーでは数少ない江戸時代を舞台とした歴史時代ものです。
「鷲の歌」でも、ある登場人物が「自由」という言葉をよく使うのですが、英語の“freedom”や“liberty”の訳語として一般的に「自由」が使われるようになったのは明治維新後のはずです。
それ以前でも古典中国語や仏教用語で語源となる言葉はあったようですが、現在人が「自由」という言葉を聞いて想像するものとは意味あいが違っていたはずです。
現代の日本人はそれこそ幼稚園児の頃から「自由に考えなさい」といわれ続けて育つのですが、江戸時代の日本人の頭には「自由」という概念自体がなかった。
だから、自由という言葉は宗春の革新性を簡単に表すのに使いやすい言葉だとは思いますが、どうしても気になってしまいました。
とはいえ、清水さん自身が専門の時代小説家ではありませんし、本作品も本格的な時代ものというより、宗春という愉快な人物の波乱に富んだ人生を肩ひじ張らずに楽しむ作品だと思います。
「自由」という言葉も適当な現代語訳と思えば、あまり気にすることではないのだと思います。

さて、本作品の主演は、近年の青春アドベンチャーでは一番の常連出演者といっても過言ではない今井朋彦さん。
今井さんは「二分間の冒険」、「シュレミールと小さな潜水艦」、「ピエタ」、「サマルカンド年代記」など、多くの作品で主要キャストを演じています。
しかし、個人的にはこの「尾張春風伝」が現時点における青春アドベンチャーにおける今井さんのベスト作品だと思っています。
今井さんは青春アドベンチャーでは淡泊で爽やかな役を演じることが多いのですが、私は今井さんの感極まった時の言葉に詰まるような演技も好きです。
宗春は今井さんの快活で爽やかな演技にとてもあった役ですが、本作品でも寂光院がらみで感情が激する場面もあり、それも含めてとても気に入った作品です。
なお、寂光院を演じてるのは鬼頭典子さんで、「ピエタ」と同様に上品な女性の役です。
鬼頭さんはこういった役が合いますね。
鬼頭さんの口からでる「**はなかったのです。通春さまにだけは知って頂きたくて...」という言葉は結構、堪らないものがありますね...




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