青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

オルガニスト 原作:山之口洋(青春アドベンチャー)

作品:オルガニスト
番組:青春アドベンチャー
格付:AAA-
分類:幻想(海外)
初出:1999年12月6日~12月17日(全10回)
原作:山之口洋
脚色:相良敦子
演出:保科義久
主演:塩沢兼人

ベルリンの壁が崩壊した直後のドイツ、ニュールンベルク。
念願だった名門音楽大学に入学したテオこと、テオドール・ヴェルナーは、おんぼろの学生寮でヨーゼフ・エルンストと同室となる。
ヨーゼフは、伝説的な盲目のオルガニスト・ラインベルガー教授が自分の後継者として期待を寄せる若き天才オルガニストだった。
テオとヨーゼフ、そして女学生マリーアの3人は、この大学でかけがえのない青春の日々を送ることになる。
しかし、彼らの前には、ある残酷な運命が待ち構えているのだった。...

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山之口洋さんの日本ファンタジーノベル大賞を受賞した小説をラジオドラマ化した作品です。
青春アドベンチャーという番組は、日本ファンタジーノベル大賞の受賞作や受賞作家の作品を積極的に取り上げていますが、大賞受賞作自体を取り上げたのは本作品と「金春屋ゴメス」くらいだと思います。

さて、本作品の冒頭の舞台は、上記の作品紹介のとおり音楽大学です。
テオとヨーゼフが出あう場が学生寮の廊下だったり、二人の少年の前に一人の少女が現れたりと、いかにもコテコテの青春物語風にスタートします。
そのため、これが「ファンタジーノベル」大賞の受賞作だということをすっかり忘れかけてしまうのですが、第3話の終盤で突然、大きな事件が発生し物語は急展開します。
その後は、ミステリー風というか、サスペンス風の展開になります。
ある意味ではSF的ないしファンタジー的といってもよいかもしれません。
全体としてみるとこの4話以降こそがこの作品の本編な訳ですが、この本編が生きるのは第3話までの青春物語がってこそだと思います。
なかなか巧みな構成ですが、序盤の内容のまま、いわば「のだめカンタービレ」的な内容を期待した人には期待はずれだった可能性もあります。
特に、第7話あたりからは一段と予想がつかない展開が続き「ファンタジーノベル大賞」に相応しい、ファンタジックな内容になります。
個人的には、「のだめカンタービレ」も嫌いではありませんが、折角、内向的な美青年の役が得意な塩沢兼人さんと松田洋治さんの主演作ですので、ピリピリするような浮世離れした雰囲気の中、ラスト10話までグイグイと進んでいく本作品のサスペンス調の展開こそが正解だったと思います。
「僕は音楽になりたい」
ヨーゼフの発するこの言葉の意味、結末は、実は第1話の冒頭で示されているのですが、第10話できっちりとそこに行きつきます。
脚色の相良敦子さんは青春アドベンチャーでは本作品のほかには、少なくとも長編では「王の眠る丘」しか担当していないのですが、なかなか綺麗な構成です。
詳しくは聴いてのお楽しみとしましょう。
なお、本作品で起こる出来事は、科学的といっては言いすぎでしょうが、一応、合理的な説明がなされています。
そのため、本ブログでのジャンル分けとしては「サスペンス」または「SF(海外)」が良いかとも思ったのですが、最後の場面の持つあまりにも幻想的なイメージを優先して「幻想(海外)」としました。
最後までお聴きいただければニュアンスはお分かりいただけると思います。

さて、先ほども書きましたが、本作品を語るうえで避けて通れないのが出演陣、特にテオを演じる塩沢兼人さんとヨーゼフを演じる松田洋治さんの好演です。
NHK-FMのラジオドラマに常連的に出演される方は、舞台俳優さんや宝塚歌劇団出身の女優さんが多かったのですが、塩沢さんと松田さんは、タイムスリップシリーズ(タイムスリップ明治維新など)などで活躍された織田優成さんと並んで、数少ないアニメでも活躍されている方でした。
お二方とも、例えば塩沢さんでいえば「妖精作戦」の平沢探偵、松田さんでいえば「アルバイト探偵」の隆(あれ?両方とも探偵だ?)のように、比較的、能天気な性格の役も得意でしたが、やはり内向きで繊細なキャラクターが印象に残っています。

特に塩沢さんは、TVアニメ「機動戦士ガンダム」のマ・クベに代表されるように、繊細な美形の役をやらせたら天下一品の方でした。
ラジオドラマでも青春アドベンチャーでも「マージナル」や「夏の魔術」、「サラマンダー殲滅」などでその魅力をいかんなく発揮されていました。
本作品でも終盤で感極まって心情を吐露するシーンなどはまさに塩沢さんならではの迫力があります。
出演作品数の割に意外と主役作品が少ない(本作品のほかには「タイム・リーパー」くらい)こともあり、本作品は青春アドベンチャーにおける塩沢さんの代表作といっても過言ではないと思いますが、そういわざるを得ないもう一つの理由があります。
実は本作品の放送のわずか5か月後に、塩沢さんは46歳の若さで急逝されたのです。
つまり本作品は塩沢さんの青春アドベンチャーにおける遺作になります。
本当に惜しい方をなくしたものです。合掌。

さて、一方の松田洋治さんは、元気な、でもどこか影のある少年の役が得意な方です。
有名なとことでは、アニメ映画「風の谷のナウシカ」のアステル役でしょうか。
NHK-FMのラジオドラマでは「西風の戦記」や「アルバイト探偵」のような1980年代の作品から、番組が青春アドベンチャーになって以降の「645~大化の改新・青春記」、「ふたつの剣」、「夢源氏剣祭文」など多くの作品に出演されています。

また、ヒロインのマリーア・ボルツマンを演じるのはこれまた声優界の大御所、小山茉美さん。
最近は「報道ステーション」や「報道特集」のナレーションでお馴染みですが、昔は「Dr.スランプあられちゃん」の則巻アラレ役などで一世を風靡していました。
また、端役ですが、TVアニメ「めぞん一刻」で主役の五代裕作を演じた二又一成さんも出演されています(めぞん一刻出演者の青春アドベンチャーへの出演作品についてはこちら)。
アニメ声優を使うことが多い、演出の保科義久さんらしい作品です。

最後に出演者をもう一人だけ。
盲目のオルガニスト・ラインベルガー教授を演じたのは役者の柳生博さん。
司会をされた「100万円クイズハンター」の「ハンタ~チャ~ンス」の名セリフでも有名です。
「ふたりの部屋」時代の「グリーン・レクイエム」にも出演されていましたが、音楽の重厚さも特徴である本作品で、柳生さんの渋い声がとても効いていると思います。

これらの出演陣の熱演だけでも十分に聴く価値のある作品です。

【保科義久演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。





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