青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

封神演義 訳:安能務(青春アドベンチャー)

作品:封神演義
番組:青春アドベンチャー
格付:AAA
分類:伝奇
初出:1998年8月3日~8月28日(20回)
訳 :安能務
脚色:綾瀬麦彦
演出:真銅健嗣

遙か昔、中国は商(殷)の時代。
名君との誉れが高かった紂王(ちゅうおう)は、繁栄に奢った末に、大地母神・女媧の怒りを買ってしまう。
商王朝の命数は尽きたと判断した天界と仙界では、王朝交代期の騒乱に便乗し、かねてから計画していた仙界及び人界の大掃除を決行することを決意する。
この計画の実行役に担ぎ出されたのが、崑崙山で修行をしていた道士の姜子牙(きょう・しが)。
仙界上層部は修行中の姜子牙を強制的に下山させ、人界の争いに介入させていく。
心ならずも仙界の陰謀の一端を担ぐことになってしまった姜子牙は、それでも争いを最小限度に食い止めるために動き出すのだが...
これは、後の世に、中国史上最高の軍師「太公望」と呼ばれることになる男・姜子牙の物語であり、また、後の世に「殷周革命」として知られることになる、中国史上最も有名な王朝交代劇の真相を描く物語である。

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封神演義(ほうしんえんぎ)は、中国・明の時代に成立したとされる著者不明(一般的には許仲琳とされる)の大衆小説です。
明の時代は、いわゆる四大奇書とされ日本でも人気の高い「西遊記」、「三国志演義」、「水滸伝」、「金瓶梅」が成立した時期でもあり、民衆文学が花開いた時代でした。
封神演義は、わが国では江戸時代から読まれていた記録があるそうですが、1986年に安能務(あのう・つとむ)さんが講談社文庫から翻案小説を発表したことにより、現代でも有名になりました。
私も随分昔に、やたらと分厚く、しかも3冊セットのこの小説を読んだ覚えがあります。
確か当時は「古代中国を舞台としたSF小説」的なノリで読んだのだと思います。
ちなみに、その後の1996年から2000年まで藤崎竜さんの手でこの安能版をさらに翻案した漫画版「封神演義」が週刊少年ジャンプ誌上で連載されました。
年代的に漫画版に馴染みが深い方もいらっしゃるかとは思いますが、このラジオドラマは「安能版・封神演義」を原作としたもので、聞仲(もんちゅう)、哪吒(なたく)など人物の読みも安能版準拠です。

さて、このラジオドラマ版「封神演義」で特筆すべきは、やはり主演陣の豪華さでしょう。
オールキャストは他の方のサイト(外部リンク)が分かりやすいので、そちらをご覧頂きたいのですが、俳優さん、声優さんごちゃ混ぜでとにかく豪華です。
TV等で良くお見かけする俳優さんとしては、主役の姜子牙役の石橋蓮司さんの他、大和田伸也さん(黄飛虎)、藤岡弘さん(紂王)、近藤正臣さん(趙公明。この第1部では未登場)など。
そしてアニメでお声を聴く声優さんとしては、野澤雅子さん(哪吒)、増山江威子さん(妲己)、八奈見乗児さん(費仲)、永井一郎さん(尤渾)、大塚周夫さん(崇候虎)、大山のぶ代さん(白鶴童子)、田の中勇さん(雲中子)、高木均さん(赤精子。この第1部では未登場)など、往年の大物声優さんがズラリと並びます。
どちらかというと人界の王侯や武将などに俳優さんが、仙界の仙人や道士に声優さんが多く配されています。
戦争ドラマの部分は俳優さんを使うことによって大河的な雰囲気を出す一方、仙人達の超能力バトルのシーンは声優さんを使うことによってアニメ的な雰囲気をだすことを目的として、意図的にこのようなキャスティングをしたのだと思います。
特に後者については、孫悟空(ドラゴンボール)と峰不二子(ルパン三世)とボヤッキー(ヤッターマン)と磯野波平(サザエさん)とねずみ男(ゲゲゲの鬼太郎)とドラえもん(ドラえもん)と目玉おやじ(ゲゲゲの鬼太郎)とムーミンパパ(ムーミン)の役の方が競演している訳で、オールドアニメを知る世代には、その凄まじさがわかると思います。
その他、東京放送劇団出身の川久保潔さんがナレーションをするほか、青春アドベンチャーの他作品に良くご出演される方々、例えば大友龍三郎さん(聞仲)、有馬克明さん(現:織田優成さん、楊戩、以下の郷里さんまで第1部は未登場)、広瀬彩さん(鄧嬋玉)、加賀谷純一さん(悪来)、内田健介さん(懼留孫)、山像かおりさん(雲霄娘々)、郷里大輔さん(魔礼青)などの方々もご出演。
熊倉一雄さん、亀山助清さん、此島愛子さん、仲谷昇さんなどの懐かしいお名前も見えます。
これだけの方々が出演するので、毎回最後に流れる出演者紹介でも、全員を役名と一緒に呼ぶ時間はなく、永井一郎さんなど思いも寄らぬ大物でさえ、端役扱い(出演者名だけコール)されてしまうこともあるというとんでもなさ。
いつもの当ブログであればこれら出演者の方々が、他のどのラジオドラマにご出演されているか紹介するところです。
ここでも「おいしいコーヒーの入れ方」とか「夏の魔術」とか「ラジオ・キラー」とか「失われた地平線」とか「タイムスリップ明治維新」とかとか書きかけたのですが、とにかく色々な方々が色々な作品に出演されているので、とても書ききれません。
ご興味のある方は、ブログの検索窓で検索してみて下さい。

さて、このように豪華な出演陣のなかでも敢えて第1部の聴き所を選ぶとすれば、商の佞臣である費仲と尤渾を演じる八奈見乗児さんと永井一郎さん。
「ヤッターマン」のボヤッキーと「うる星やつら」のチェリーが、左右から王の耳にこそこそと妄言を囁いている王宮って結構、嫌ですよねえ。
まあ、それはそれとして、このお二方のように、配役が有名な方の場合、有名な役のイメージが強烈すぎて、そのキャラクターの声にしか聞こえなくなってしまうという恐れがあることは確かだと思います。
しかし、この封神演義のような、とにかくたくさんのキャラクターが登場するラジオドラマは、声だけ聞いているとすぐに誰が誰だがわかならくなってしまうという大きな欠点を内包しています。
勝手な推測ですが、この豪華な配役は、敢えてアニメなどの他の作品のキャラクターのイメージを焼き付けることで、この作品内でキャラクターが混乱しないようにしているのではないかと思います。
正直、哪吒 を演じている野澤雅子さんの声はドラゴンボールの孫悟空としか聞こえませんが、一旦、「哪吒=孫悟空」と思ってしまえば、少なくともこの封神演義内の他のキャラクターと間違えることはありませんから。
そうして考えるとこの豪華な配役陣、この作品をラジオドラマとして成立させるための必須の要素だったのかも知れません。

さて、キャストの紹介だけで、相当なボリュームになってしまったので、後は駆け足で行きたいと思います。
物語の舞台は3000年前の中国。
命数が尽きつつある殷(商)王朝と新興の周との王朝交代劇が描かれるわけですが、そこは幻想の超古代が舞台。
単なる武将や政治家だけではなく、仙人やナマ道士(道術を使えるが仙人にはなりきれなかったものたち)が入り乱れての大バトルが繰り広げられます。
紂王の乱心により混乱の極みにあるとはいえ、長く続いた商王朝には、なお優れた政治家、武人、道士もたくさんいます。
特に大軍師たる聞仲は、優れた頭脳とタフな精神力、そして道術の能力を併せ持つ傑物です。
当然、戦いは激しくなるのですが、本作品の魅力はそういった政治・軍事ドラマばかりではありません。
前に述べたようにほとんどアニメのノリで繰り出される仙人、道士たちの超能力バトル、そしてこの戦いの裏で、天界と仙界の一派が企んでいる陰謀劇が同時に進行し、さまざまな魅力のある作品に成っています。
とくかく登場人物が多く、複雑なストーリーではあります。
登場人物の多さに関しては、上で書いたとおり制作側は最大の配慮をしているとは思いますが、やはり初見では混乱せざるを得ないかも知れません。
しかし、こればかりは慣れて頂くしかありません。
とはいえ、この作品、個々の登場人物のキャラが立っていないという訳では全くありません。
姜子牙や哪吒、聞仲といった主役級だけでなく、 武吉(演:山崎銀之丞さん)や申公豹(演:壤晴彦さん)、黒点虎(演:吉野悠我さん)といった脇役まで、見事にキャラが立っています。
事前に原作小説を読んでおり、一応のキャラクターの把握ができていた私には、とても楽しめる作品でした。
一度キャラクターを覚えてさえしまえば、皆さんにとっても同様だと思います。
また、複雑なストーリーではありますが、これも最大限分かりやすくする工夫がされています。
たとえば、仙界で対立する二派について、原作では「闡教」・「截教」という難しい言い方が用いられているのですが、本作品では「山岳派」、「海洋派」で押し通しているのも、音から全ての情報を聞き取らねばならないラジオドラマ向けの、脚本家・綾瀬麦彦さんの配慮だと思います。
これらの制作側の配慮により、基本的な流れである、「商から周への王朝交代」+「仙界の陰謀(主流派による反主流派の粛正+人界からのナマ仙人の排除)」という大筋さえ抑えていればさほど混乱することはない作品に仕上がっています。

さて、本作品、青春アドベンチャーの20年以上に及ぶ歴史の中でも数えるほどしかない全20話の超長編作品です。
ちなみに「封神演義」以外の20話ものは、「少年H」、「海賊モア船長の遍歴」、「DIVE!!」、「レディ・パイレーツ」の4作品しかありません。
やたらと長い作品である場合、中だるみに陥れる危険性もあるのですが、本作品については筋立てがしっかりとしているのでぐいぐいと話が進みそのようなこともありません。
長い分、例えば第5回は丸1回をかけて残虐な処刑の様子を示したり、第9回をほとんど哪吒のキャラクター紹介だけに使ったり、贅沢に回を使うことができています。
これが本作品の作品世界を豊かにしていると思います。

ちなみに、全20回の各回のタイトルは以下のとおりであり、括弧の内は各回で放送されたミニコーナー「封神演義一口メモ」のテーマです。
このようなミニコーナーをつくるあたりをみても、この登場キャラクターの多い作品を少しでも分かりやすくしようとする、演出の真銅健嗣さんを始めるとするスタッフの工夫の跡を感じます。
ちなみに「封神演義一口メモ」の担当は、ドラえもん...ではなかった、大山のぶ代さんです。

第1回 北海の妖気(姜子牙)
第2回 紂王の慢心(申公豹)
第3回 道術合戦
第4回 仙界の陰謀
第5回 恐怖の処刑具
第6回 妲己の計略
第7回 姜子牙下山
第8回 姫昌幽閉さる
第9回 人間宝貝哪吒(人間宝貝哪吒)
第10回 姜子牙妖怪退治(中国の占い)
第11回 大狐退治
第12回 伯邑考朝歌へ
第13回 姫昌泣いて我が子に誓う
第14回 仙人たちの宴
第15回 さらば、朝歌!
第16回 関所破り
第17回 我こそ太公望也!
第18回 朝廷軍出動
第19回 哪吒参上
第20回 武王誕生

なお、タイトルを見てわかるとおり、本作品のストーリーは、商と周の戦いが勃発し、周に武王が誕生するところまでで終わっています。
そのため、商と周との(そして二派に分かれた仙人達の)戦いはまだまだ序盤の段階でこの作品は終わってしまいます。
そう、この封神演義が凄いのはこの20話だけではなく続編があることなのです。
物語は、丁度1年後の1999年8月に放送された続編「封神演義 第2部 朝廷軍の逆襲」に続いていきます。





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