青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

謀殺の弾丸特急 原作:山田正紀(アドベンチャーロード)

作品:謀殺の弾丸特急
番組:アドベンチャーロード
格付:AA+
分類:活劇
初出:1987年2月2日~2月16日(全10回)
原作:山田正紀
脚色:森直也
演出:加藤邦秀、安本稔
主演:市毛良枝

1987年2月、東南アジアの小国アンダカムの首都プノンダンを1本の列車が旅立つ。
列車をひくのは“貴婦人”と呼ばれる汽車C57。
二等客車がなく一等客車と5両の貨車だけの異様な編成のその列車は、プノンダンからタイへと向かう日本人の観光貨客向けの特別列車だった。
この列車に乗り込むのは、ツアーコンダクター吉岡晶子のほか、6人のツアー客。
恋人であるアンダカム陸軍のティヴ大佐との別れを予感していた晶子にとっては、今回は特別の気持ちで迎えた出国だった。
しかし、列車が乗せていたものはこのツアー一行の7人だけではなかった。
及川という名の現地ホテルに勤めていた日本人、そしてアンダカムの政権を揺るがす、ある重要物件が撮影されたフィルム...
国家機密を巡る陰謀に巻き込まれた素人の日本人8人。
国軍やゲリラを相手にした決死の逃避行が始まる。

―――――――――――――――――――

神狩り」でデビューした日本SF界の大御所、山田正紀さんの冒険小説を原作とするラジオドラマです。
制作したのはNHK名古屋局で、制作された時期は番組がまだ「アドベンチャーロード」と呼ばれていた1987年です。
なお、初出の時期を見ると2月2日(月)~2月16日(月)であり、ラジオドラマの劇中の日時と、ラジオドラマが放送された時期とを一致させれています。
蒲生邸事件」などでもそうでしたが、NHK-FMはときどきこういった凝ったことをやります。
さて、この日時ですが、アドベンチャーロードは月曜日から金曜日までの番組ですので、5日×2週+1日の計11回の放送であったと推定され、私も以前の記事でそのように推定しました。
しかし改めて聴いてみると、第5回が2月6日ではなく2月9日に放送されたようで、結局全10回で間違いありません。

さて、山田さんはSFだけではなく冒険小説も多く書かれている方です。
本作品の原作である小説「謀殺の弾丸特急」は、「謀殺のチェスゲーム」や「謀殺の翼」と並ぶ「謀殺」シリーズの冒険小説の1作だそうです。
謀殺シリーズではどちらかというと「謀殺のチェスゲーム」の方が有名だと思いますが、両作品はタイトルに「謀殺」という言葉が含まれている他は、列車が重要な要素であることくらいしか共通点はありません。
ちなみに山田さんの作品では2014年に青春アドベンチャーで「ツングース特命隊」がラジオドラマ化されており、こちらも「○○隊」と名付けられた一連の作品の一作ですが、「ツングース特命隊」も同シリーズの「崑崙遊撃隊」よりは知名度が劣ります。
あえて一番有名な作品を選ばないという作品選択の微妙さは、NHK-FMの伝統ということでしょうか。
なお、「ツングース特命隊」が放送された翌年には、やはり山田さんの「チョウたちの時間」もラジオドラマ化された訳ですが、なぜ今になって青春アドベンチャーがしきりに山田さんの作品を原作採用しているかは謎です。
山田さんのファンとしてはうれしい限りではありますが。

さて、例によって作品内容と関係ないことを長々と書いてしまいましたので、そろそろ作品紹介に移りたいと思います。
まずはっきり言って本作品は単純な娯楽作品です。
同じ山田さんの書かれた「神狩り」や「氷河民族」などのような沈鬱な内容ではありませんし、設定や展開ははっきり言ってかなりご都合主義です。
だいたいツアー客の中に偶然、「30年間もSLを動かしてきた元国鉄の職員」がいるとか、「貨車に積んであった荷物がたまたま爆発させることができるものだった」なんて、どう考えても出来すぎです。
また、そもそも列車を止めたければ単純に線路を壊しちゃえばよいのでは、という疑問も湧きます。
それにやっぱり素人が軍隊相手に闘うのは無理ですよ、現実的には。
...でもいいんです、これはそういう話しだから。
素人が工夫をして、そして素人同士が協力し合って、プロと互角に渡り合う。
そういう荒唐無稽さこそが娯楽作品としての神髄なのだと思います。

また、本ラジオドラマのもう一つの特徴は、原作小説のストーリーをかなり改変したシナリオであること。
青春アドベンチャー系列の番組では原作の筋を変えないことが多く、様々なメディアに移植されたけど、結局、ラジオドラマが一番原作に忠実だった、ということが良くあるのですが、この作品は大胆にアレンジしています。
一応、晶子、及川、ティヴ大佐、フェン軍曹、そして問題の写真を撮った大塚とSL運転手の横山といった主要キャラは同一ですし、アンダカムからSLでタイを目指すという大筋は変わりませんが、個別の展開はかなり異なります。
原作では中盤に死んでしまう**(ネタバレ防止のため伏字)も生き残りますし、原作にはない泥沼の徒歩移動のほか、国軍の襲撃の仕方もかなり違います。
さらに、原作ではツアー客の一員である及川が現地で働いている日本人だったりするなど、キャラクター設定もかなり違います。
そして、一番の違いは晶子とティヴ大佐の関係。
原作では全く面識はありませんが、ラジオドラマでは恋人同士。
ここまで違うとほとんど別作品といってもよいくらいです。
特に残念なのが、6人のツアー客達の扱い。
このラジオドラマでは、大塚と横山以外はほとんど出番はありません。
原作では6人それぞれが役割分担して全員で危機を乗り越えていくのですが、このラジオドラマでは時間の都合からかカットされているようで、どちらかというと、ティヴ大佐、フェン軍曹、バン・ブン・フウといったプロ側の人間の活躍が目立ちます。
確かにラジオドラマは小説と違って地の文で状況説明ができない(そして、ナレーションをダラダラとやるとだれてしまう)ため、どうしても内容の一部を省略せざるを得ない面はあります。
しかし、「妖精作戦」のように6人のメンバーを自在に動かしている作品もあります。
出来ればもう少し、他のメンバーも生かしてほしかったと思います。
ただし、次々に状況が変化じていく展開はとてもスリリングですし、作曲家でシンセサイザー奏者の藤掛廣幸さんが作曲したオリジナルテーマ曲もとても作品にあっています。
終盤の逆転劇も聴きごたえがありますし、特に原作とはティヴ大佐の扱いがかなり違うエンディングも、それなりに気持ちの良いものであり、それも含めて好印象の作品でした。


さて、本作品の主役である吉岡晶子を演じているのは女優の市毛良枝さん。
今ではTVドラマなどで、すっかり可愛い(そして若々しい)おばあちゃん役が板に付いてきた市毛さんですが、放送当時は36歳!
私、この頃、市毛さん好きだったんですよね。
特に年上好きだったわけではないのですが、市毛さんって美人でしたけど、それ以上に可愛い感じを受ける方だったので、年齢が気になりませんでした。
当時から有名女優だったはずで、晶子役に市毛さんをもってくるあたりにスタッフのこの作品への愛が感じられます。
また、晶子の相手役に当たるティヴ大佐と吉岡を演じるのは、平泉成さんと大橋吾郎さん。
大橋さんで印象的なのは「スカラムーシュ」のナレーションや「あでやかな落日」の浜西。
平泉さんもしゃがれ声を生かした「ゴーゴー!チキンズ」の鬼社長役など、アクの強い中高年男性役で青春アドベンチャーではお馴染み。
おふたりともこの後、長い間、NHK-FMのラジオドラマで多くの役を演じることになります。
また、ナレーションのたかべしげこさんも素敵です。
アドベンチャーロードでは、「A-10奪還チーム出動せよ」の来宮良子さん、「暗殺のソロ」の広瀬修子さんなど、ハードな作品で女性のナレーションを効果的に使っていました。

なお、本作品のスタッフについて、この記事の冒頭では、脚色:森直也、演出:加藤邦秀・安本稔と書きました。
しかし、これらは放送から聞き取った音をもとに、「もりなおや 脚色」、」「かとうくにひで NHK」などの方法で検索して、それっぽい人物を探したものです。
よって漢字は間違っているかも知れません。
間違いを発見された方はご指摘頂ければ幸いです。

最後に改めてこの作品を聞いていて思い出したのは小川一水さんのライトノベル「疾走!千マイル急行」。
この作品はラジオドラマ化してほしい作品として、こちらの記事で取り上げているのですが、日本のSFに造詣の深い小川さんのこと、ひょっとしたら「疾走!千マイル急行」は本作品「謀殺の弾丸特急」へのオマージュ作品なのかも知れませんね。




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