青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

皇帝の密使 原作:ジュール・ベルヌ(アドベンチャーロード)

作品:皇帝の密使
番組:アドベンチャーロード
格付:A+
分類:冒険(秘境漂流)
初出:1986年12月8日~12月26日(全15回)
原作:ジュール・ベルヌ
脚色:関功
演出:笹原紀昭
主演:立川三貴

ロシア皇帝のもとに反乱が勃発したとの知らせが届く。
狙われたのは皇帝の弟でありイルクーツクで東方辺境に睨みをきかせる大公。
しかし、反乱軍により通信は寸断され、大公は未だ窮地に陥っていることを知らない。
しかも、反乱勃発の事実を民衆や諸外国に知られるわけにはいかないため、公然と連絡することもできない。
密使が必要だ。
それも、シベリアの地理に精通し、反乱軍の脅威や大自然の猛威にも負けず単独で密書を届けられる屈強な男が。
選ばれた男の名は、ミハイル・ストロゴフ。
幾度も実行不可能とされる任務に成功した、鋼の肉体と黄金の精神を持つ軍人である。
早速、東方へ向かう列車に乗り込んだストロゴフだが、単独でスタートしたはずのその旅は、ふたりの外国人とひとりの少女、そして敵の黒幕をも巻き込んだ冒険行へと変じていくのだった。

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「海底二万里(マイル)」や「八十日間世界一周」、「月世界旅行」等といった冒険小説で有名なジュール・ベルヌ(ヴェルヌ)の小説を原作としたラジオドラマです。
本作品「皇帝の密使」は、1980年代から90年代初頭に掛けて放送されていた「アドベンチャーロード」という番組で放送されました。
ベルヌについては、後年、アドベンチャーロードの後継番組である青春アドベンチャーで「アドリア海の復讐」もラジオドラマ化されています。
...と、ここでふと、“Verne”を“ベルヌ”ではなく“ヴェルヌ”と表記するようになったはいつからだったのだろう、という疑問に思い至りました。
一般的な用例としては“ヴ”も昔からあったはずですが、NHKのすることですので何らかの基準があったのではないかと思い、検索したところwikipediaの“ヴ”という項目にちゃんとまとめられていました。
wikipedia凄いね。
何でも、一般的には、1954年の国語審議会報告で原則“バ行”表記に決められていたところ、1991年の国語審議会の答申で、原語に近いという理由で“ヴ”による表記が容認されたのだそうです。
ただしNHKに関しては、“バ”と“ヴ”の表記が今でも混在してようです。
実際「青春アドベンチャー(adventure)」という番組名自体が“バ”行表記になっています。
あまりに一般化しすぎているカタカナ言葉は“バ”行表記のままなのでしょう。
とはいえNHKでも時代により一定の傾向はあるようで、戦後全般を見ると“ヴ”→“バ”→“ヴ”と変遷してきたのが垣間見える状況のようです。
奥が深いですね。
何はともあれこの「皇帝の密使」は1986年、「アドリア海の復讐」は1994年の作品ですので、この頃が大まかな表記が変わり目だったのかも知れません。


さて、脱線はこの辺にして本作品の紹介に戻ります。
SF小説家の始祖とも称されるベルヌですが、NHK-FMのラジオドラマに取りあげられている2作品はともにもSF要素の薄い作品です。
とくに本作品は、旅を続けながら次々と巻き起こる難題をクリアしていく、正当的な冒険物語であり、一種のスパイものでもあります。
このジャンルでは最近(2013年)、山田正紀さん原作の「ツングース特命隊」が青春アドベンチャーでラジオドラマ化されていますが、本作品はこの種の作品の元祖といえる作品でしょう。
国際情勢を背景にした密命、思いもよらない同行者、なぜか登場してくる美少女、敵勢力の妨害、自然の猛威など、両作品とも似たような展開が続きます。
軍人である主人公ストロゴフはあくまでタフであり、一方、敵役オガリョフはあくまで憎たらしい悪漢。
そして、ヒロインのナージャはあくまで献身的で健気で可憐。
また、同行者となるジョリベとブラントは陽気で雰囲気を和らげるなど、キャラクター造形もコテコテです。
そういえば、この「陽気な同行者」という要素は結構、作品全体の雰囲気を決定づけている気がします。
同じようなパーティで冒険をする作品でも、同行者がお調子者の「遙かなる虎跡」はかなりライトな雰囲気になっていますし、同行者に道化キャラがいない「ツングース特命隊」は終始暗い雰囲気です。
本作品は特派員ジョリベとブラントの二人のキャラクターが適度に雰囲気を明るくしているように感じます。

ところで、本作品の目的地は東ロシアのイルクーツクという都市であり、現代の常識から見ると必ずしも「秘境」というほどの場所ではないのかも知れません。
しかし、原作小説が発表された19世紀は、現代のようにテレビやインターネットで瞬時に世界の裏側の情勢が分かる時代ではありませんでした。
だから当時の読者はまるで紀行文やドキュメンタリーを読むような感覚で「皇帝の密使」を通じてシベリアの風俗を楽しんでいたのだと思います。
その意味で本作品はやはり秘境探検ものに分類して良い作品だと思います。
そういえば、同じアドベンチャーロードで「イルクーツク」といえば、大黒屋光太夫の生涯を綴った「おろしや国酔夢譚」が思い出されます。
おろしや国酔夢譚」でのイルクーツクも光太夫にとっては想像を絶する異郷でしたね。


出演者は、主人公のストロゴフ役に俳優の立川三貴さん。
近年の青春アドベンチャーでも「黄金仮面」(2010年)、「魔岩伝説」(2011年)などで、重要で渋い脇役を演じています。
改めて振り返ると、立川さんは1980年代の本作品や1997年の「フルネルソン」にも出演していたわけで、とても長い間、青春アドベンチャー系列の番組に出演されていることになりますね。
また、ヒロインのナージャ・フョードル役は女優の長島裕子さん。
これぞ可憐、という感じの声で、こういう演技はむしろ最近ではなかなか聴けないもののような気がします。
その他、最後の出演者紹介によれば、後に「世界まる見え!テレビ特捜部」(日本テレビ)や「サンデージャポン」(TBS)などのテレビ番組のナレーションでお馴染みになる広川雅志さんが出演されているらしいのですが、ちょい役過ぎてどの場面ででているのかよく分かりません。
本作品は1986年の作品ですので、広中さんが、自ら代表作と公言している銀河英雄伝説のジークフリード・キルヒアイス役に出会う2年前の作品ということになります。
そしてナレーションつながりで言えば、本作品のナレーションを担当するのは俳協の創立メンバーのひとりで、テレビ草創期から吹き替えを中心に活躍されている中村正さんです。
中村さんといえば「奥さまは魔女」における吹き替え史上に残る名ナレーションがとても有名な方です。
個人的にはさすがに「奥さまは魔女」は古すぎますが、「ナイトライダー」のデボンや「銀河英雄伝説」のマリーンドルフ伯爵、「ジャイアントロボ」の諸葛亮孔明など印象的な演技が記憶に残っています。
そういえば「ナイトライダー」といえばやはり小林清志さんのオープングナレーション

「陰謀と破壊と犯罪の渦巻く現代によみがえる正義の騎士。巨大な悪に立ち向かう現代の騎士・ナイトライダー。今日、彼を待ち受けるものは果たして誰か?」

という名調子が思い出されます。
今思い出しても熱いなあ。
ナレーションって時にとても印象に残りますよね。

さて、本作品は、各回の終わりの印象的なシーンでBGMがかかり、これに中村さんのナレーション(又は登場人物の台詞)が被さりそのまま、BGMの音量が上がりエンディング、というドラマチックな “引き”が印象的な作品です。
これは、同じ笹原紀昭さん演出のアドベンチャーロード期の名作「A-10奪還チーム出動せよ」でも印象的に使われていた手法ですが、これを中村さんのナレーションでやるなんてある意味贅沢な作品です。
そういえば「A-10奪還チーム出動せよ」のナレーションは2013年に亡くなられた来宮良子さんだったなあ。
「ヤヌスの鏡」などの大映ドラマで有名な来宮さんですが、あの名調子がもう聴けないかと思うととても残念です。
それにしてもナレーションだけでこんなに引っ張っちゃって良かったのでしょうか。


一方、スタッフは、脚色:関功(せき・いさお)さん、演出:笹原紀昭さんのコンビ。
同じコンビで制作された作品では「幽霊海戦」、「ブルータスは死なず」なども印象的です。
笹原さんは主にアドベンチャーロード期及びサウンド夢工房期に活躍された方で、番組が青春アドベンチャーに衣替えされて以降では、青春アドベンチャー初年度(1992年)に制作された「不良と呼ばれた夏」、「ブラックホール」、「アドベンチャー的5大ニュース」の3作品だけが笹原さんの演出です。

【笹原紀昭演出の他の作品】
アドベンチャーロード期を中心に多くの傑作アクション作品を演出された笹原紀昭さん。
演出作品はこちらに一覧を作っています。





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