青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

闇の中の子供 原作:小松左京(FMアドベンチャー)

作品:闇の中の子供
番組:FMアドベンチャー
格付:B-
分類:ホラー
初出:1984年5月7日~5月18日(全10回)
原作:小松左京
脚色:大石隆一
演出:峯岸透
主演:宮部昭夫

大杉は妻との不和と子供達の教育に悩む普通の中年男。
ある嵐の晩に、彼は自宅の扉を叩く音を耳にする。
扉を開けると、そこに立っていたのは時代がかった髪型に紋付き袴を着た、ひとりの少年。
「私は大人に殺される」という少年を、やむを得ず家の中に招き入れた大杉だが、再び家の扉が叩かれる。
「夜分、誠に失礼ながら、ちと物をお尋ね申す...」

―――――――――――――――――――

日本SF界の重鎮であった小松左京さんの短編小説を原作とするラジオドラマです。
放送されたのは1984年4月から1年間だけ放送された「FMアドベンチャー」なる番組。
この番組は、その後「アドベンチャーロード」、「サウンド夢工房」と引き継がれて、現在の「青春アドベンチャー」につながっている番組です(番組の歴史はこちら)。
後継番組と異なるのは、後継番組が毎日15分の番組であるのに対して、FMアドベンチャーが10分番組であったこと。
10分というとボリュームは3分の2なのですが、実はFMアドベンチャーの番組には15回連続の作品が意外と多く、10回連続が大部分を占めるアドベンチャーロードなどの後継番組と1作品あたりの放送時間はそれほど違いはありませんでした(10分×15回=15分×10回)。
ところで、このブログでFMアドベンチャーの作品を取り上げるのは初めてです。
放送時期でいっても今まで紹介した中では1983年放送の「二分割幽霊綺譚」(番組は「ふたりの部屋」)に次いで2番目に古い作品です。
FMアドベンチャーの放送作品ライナップを見ると、なかなか興味をそそられるタイトルが並んでいます。
しかし、番組の放送期間が短く17作品しかないことと、そもそも放送時期がかなり古いことから、一部の作品を除き、今では聴くことは難しい、というよりほとんど不可能な状態です。
残念ですね。
是非、NHKに残っている音源だけでも公開して欲しいものです。

さて、上記のとおりFMアドベンチャーは15回連続の作品が多いのですが、残念ながら本作品「闇の中の子供」は連続10回の作品です。
ただし、原作小説自体が短編のようですので、丁度良いサイズだと感じました。
ストーリーは歌舞伎の「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」の四段目切、いわゆる「寺子屋」を下敷きにして進みます。
「寺子屋」は忠義と家族愛による悲劇を描いた作品らしいのですが、本作品の中で主人公の大杉は、この作品を「大人の身勝手に付き合わされて子供が殺される、無茶で残酷でグロテスクな話し」に過ぎないと一刀両断しています。
そして大杉は、この作品のタイトルの一部になっている「闇」の世界に辿り着き、そこで我々の社会が犯している「子殺し」の実態に気が付いていきます。
一般的にはSF小説で知られる小松左京さんですが、本作品にSF的要素は殆どありません。
しかし、現代社会に対する問題提起的な要素が含まれているのは他の小松作品と同様です。
やはり子供を殺さないですむ社会を創っていきたいものだとは素直に思いますね。

主人公の大杉を演じるのは2006年に他界された俳優の宮部昭夫さん。
カーク・ダグラスやスティーブ・マックイーンの吹き替えも担当された方だそうです。
10分番組ですので、オープニング、エンディングも簡素で、音楽も過度に凝っておらず、俳優の台詞と控えめな効果音で魅せるシンプルな作品です。
実際聞いていると登場人物の台詞回しなど、そこはかとなく「ちょっと昔のラジオドラマ感」が漂っています。
しかし、控えめな演出だからこそ不気味な雰囲気が感じられますし、題材が題材だけあって(さっぱりわかりませんでしたが)第5話のかなりの部分が歌舞伎だったりするなど視聴者が一定の教養を持っていることが前提の大人向きの作品になっています。
最近のお子様向けの作品が多い青春アドベンチャーを聴いていると、たまにはこういう大人向きの作品を作って欲しいものだと感じます。
ただ、延々と歌舞伎の一場面が続いたりする場面もあり、正直、単純に楽しめる作品かどうかは微妙なところでもありました(私の教養レベルの問題かもしれませんが)。



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