青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

僕たちの宇宙船 作:樋口ミユ(青春アドベンチャー)

作品:僕たちの宇宙船
番組:青春アドベンチャー
格付:A-
分類:SF(宇宙)
初出:2013年10月28日~11月8日(全10回)
作 :樋口ミユ
音楽:澁江夏奈
演出:小見山佳典
主演:上村祐翔

汚染された地球を捨て、人類がスペースコロニーに暮らしている時代。
スペースコロニー「ノア」にある寄宿舎・ダーウィン・シュルーズベリーに、刺々しい雰囲気を纏ったリンダ・R・ヒノデという名前の転校生がやってくる。
リンダは、何らかの事件が起き、秘密のうちに存在自体が抹消されたというウインチェスターの学校に通っていたという噂であった。
しかし、「この理想世界でそんな事件が起こるはずがない」と信じるダーウィン・シュルーズベリーの生徒達からはリンダは受け入れられない。
そんな中、ただ一人、気弱な少年・BJだけは、リンダに共感し、彼の発言を信じた。
そして、事件は起こり始める。ウインチェスターと同じように。

――――――――――――――――――――――――――

樋口ミユさん(旧ペンネーム樋口美友喜さん)が脚本を書いたオリジナルシナリオのラジオドラマです。
樋口さんは、青春アドベンチャーでは「ボディ・ライフ」など短編集のうちの1編を担当されたことはあったと思いますが、オリジナル長編は初めての担当です(※)。
本作品の全体のイメージをお伝えするならば、一応、萩尾望都さんのSF漫画に近い雰囲気といえば分かりやすいでしょうか。
具体的には、本作品における男性同士の関係の描き方が、女性の脚本家らしい独特の雰囲気があり、これを苦手と感じる方もいらっしゃるのではないかと思います。
また、本作品は、青春アドベンチャーには良くあるように、科学考証的な部分はあまり重視されていない、舞台設定だけのSFと言って良いと思います。
ですので、「萩尾望都さんのSF漫画に近い」のはあくまで雰囲気だけです。

ストーリーの骨子は、主役格のBFとリンダという二人の少年のほか、マローン、アリー、アベル、チ・ライといった若者たちが、大きな事件に遭遇し、それをともに乗り越えながら、世界の真実を探っていくというものです。
...というものだと、第8回くらいまでは思っていたのですが...
この作品、序盤の展開がスローペースなのも、じっくりと事件の発端を説き起こしていると考えれば好感が持て、実際、とても期待を持たせる形で前半5回は終了します。
そして、後半は一気にペースアップしていき、ありがちな話しではあるものの、なかなか巧みな展開になったなと、第8話最後くらいまでは期待していたのです。
でも、最後の2話は、大風呂敷を畳み損なったのか、それとも作者の意図どおりなのかはよくわかりませんが、やたらとセンチメンタルでエモーショナルな結末になっていました。
このブログでの本作品の格付けは“A-”としましたが、これはわくわくして聴くことができた前半を最大限に評価した結果で、全体の感想としては、特に前半がよかっただけに残念としか言いようがありません。
なお、最近の娯楽作品は、どの媒体でも、視聴者に対して親切設計で、サービス過剰な作品が多いとは私も感じます。
だから、「制作側は視聴者がわかるようにすべての説明をちゃんとすべき」だ、などというつもりもありません。
そのため、これはあくまでに私の個人的な感想に過ぎないのですが、やはり情緒的で曖昧すぎるエンディングは趣味ではありませんでした。
特に本作品を聴き終った後に「青少年だけのサバイバルSF」という点で本作に類似する、小川一水さんの「天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC」を読んでしまうと、SFとしての出来の違いに愕然とする部分もありました。
しかし、本作品のような余韻がある作品が好きな方もいらっしゃると思います。
そのような方には気分を害されたら申し訳ありません。
それにしても、2013年に放送されたもう一つのオリジナル作品である「泥の子と狭い家の物語」も、私にはとっては本作品と同じように後半失速型の作品でした...
後半に失速されるとダメージが大きいです...

ちなみに、青春アドベンチャー公式ホームページにおける本作品の紹介は、前半の終盤にならないとわからない内容まで書いてしまってあり、ややネタバレ的なものになっています。
本当はこの辺の注意喚起もこの記事に書こうと思っていました。
しかし、結末まで聞いた今となっては、作者ご自身がこのようなSF設定についてはどうでもよいと思っている気がしてきました。


さて、出演についてですが、主役のちょっとぼんやり少年、BJを演じているのは上村祐翔さんです。
2003年放送の名作「光の島」で主役の光を演じたのは9歳の時でしたが、本作品の放送時点では何と20歳!
すっかり声変わりして青年の声になっています。
上村さんのような子役の方が、成長して青春アドベンチャーに戻ってきて頂くのは何だか嬉しいですね。
一方、BJの相手役であるリンダ(♂)を演じるのは瀬川亮さん。
瀬川さんは青春アドベンチャーでは他に「ヤッさん」で主演されていますが、本作品のリンダとはかなり性格が違うキャラクターで比較すると面白いです。
ちなみに瀬川さんは2005年のNHK連続テレビ小説「ファイト」(主演:本仮屋ユイカさん)の相手役を務めた方で、本作の放送時点でなんと35歳!
学生の役はきつそうですが、違和感のない演技です。
ところでリンダは、BJより遙かに男っぽい性格のキャラクターですし、そもそもBJもリンダも男性なので、相手役という表現は適当ではないのかも知れません。
しかし、この二人を中心にストーリーが進むこと自体がこの作品の雰囲気を最も表していると思うので、敢えて「相手役」と書きました。
ちなみに、主要キャラクターの中でアリーを演じる占部房子さんなど女性が演じている役もあるのですが、“ボク”という一人称からしてどうも男性役のようです。
仮に女性であったとしても占部さんらしい、クールで厭世的なキャラクターなので、ヒロインの雰囲気はありません。
その他、手塚裕介さんが演じるマローン役も、渡辺樹里さんが演じるチ・ライ役も、しゃべり方から性格付けまでなかなかキャラクターが立っています。
声だけでキャラクターを聞き分けなければ行けないラジオドラマで、キャラクターにあった声・しゃべり方ということがとても大切だと思います。
とにかく終盤のシナリオは残念な印象が強い本作品ですが、全般を通して出演陣の熱演は評価に値する作品だと思います。


本作品の演出担当は、小見山佳典さんで、制作統括を兼ねていらっしゃいます。
小見山さんは、暫く前の青春アドベンチャーでは「制作統括」とだけコールされている作品が多くあったと記憶します。
また、ネットで検索すると「NHKでラジオドラマを統括する小見山佳典エグゼクティブ・ディレクター」などの表現も見受けられます。
「制作統括」=プロデューサー、「演出」=ディレクターと考えると、単なるディレクターではなく、組織的には上の立場にいらっしゃった小見山さんが、何らかの状況の変化で、敢えて現場で演出をしているのではないかと推測します。
小見山さんが2013年に演出した3作品(本作品と「泥の子と狭い家の物語」と「恋愛映画は選ばない」)は全て最近の青春アドベンチャーではなかなかの異色作です。
異色作には賛否両論があろうかと思います。
特に本作品などは、プロデューサーの冒険の結果が正しく報われているかは微妙なところだとは感じますが、子ども向けの甘いお話しが多い最近の青春アドベンチャーの中では冒険こそが必要な要素だとも思います。
思い起こせば80年代のNHK-FMには、本作品のようなSFっぽいけどわけのわからない作品はいっぱいありました。
改めて考えると、たまにはこういうのもあっても良いと気もしてきます。
年齢の問題や組織の問題など、色々とNHK内の事情はあるのかも知れませんが、ベテランのスタッフに、今でも情熱をもってラジオドラマに係わっている方がいらっしゃると考えると、ファンとして嬉しく感じます。
今後も外野の声は気にせずとんがった作品作りをしていただきたいものです。



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(※)2015/2/8追記
2015/2に樋口ミユさん2作目の「ニコイナ食堂」が放送されました。

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