青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

垂直の記憶 原作:山野井泰史(青春アドベンチャー)

作品:垂直の記憶
番組:青春アドベンチャー
格付:AA-
分類:冒険(山岳海洋)
初出:2006年2月20日~2月24日(全5回)
原作:山野井泰史
脚色:白石マミ
音楽:長谷部徹
演出:真銅健嗣、清水拓哉
主演:阿南健治

怪我で野球を諦めて以来、何事にも関心が持てないでいた高校生の翔太は、初めて行った奥多摩の岩壁で、山野井泰史に出会った。
確かなホールド、流れるようなムーブ。
山野井の重力を感じさせないクライミングに驚嘆する翔太だが、登山の専門誌を読み、山野井が世界的なソロクライマーであることを知る。
単独クライミングという山野井の登山方法に魅了された翔太は、山野井の著書「垂直の記憶」を手に取り、翌週、再び奥多摩へと出かけるが...

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世界的なクライマーである山野井泰史さんの書かれたノンフェクション「垂直の記憶」を原作とした作品です。
実は、次回は夢枕獏さん原作の「神々の山嶺」をご紹介するつもりです。
登山ものを2本連続で紹介しようと思いたったのは、すばり「世界の果てまでイッテQ!」内の企画であるイモトアヤコさんの「イッテQ!登山部」のマナスル登頂プロジェクトに触発されてのことです。
イモトさん、凄すぎます。
マッターホルンからの下山にヘリコプターを使ったことには、一部で非難もあるようですが、彼女は自分がお笑い芸人であり、登山家としての心構えなど持っていないというスタンスを崩していません。
マッターホルンからも堂々とヘリコプターで帰還していますし、自分をアルピニストなどといっているのもあくまでギャグの範囲であることは明らかです。
登山界に何か記録を残そうという気もないようですし、偉大なる一般人の行動としてみれば、十分アリだと思います。

さて、本題に入りますが、青春アドベンチャーはラジオドラマの番組ですが、ごく希にノンフェクションを原作とする作品が制作されることもあります。
今まで紹介した作品の中では、「世紀の大冒険レース~アムンゼンとスコット」(前身番組であるアドベンチャーロード時代の作品)、「闘う女。~そんな私のこんな生き方」、「ふたつの剣」、「1985年のクラッシュギャルズ」の4作品がノンフェクション原作作品です。
本作品を含めて5作品すべてが、探検かスポーツをテーマとした作品であるのが特徴的です。
また、もうひとつの特徴として、全ての作品がノンフェクションを原作としつつも、ラジオ「ドラマ」として再構成されていることが挙げられます。
その中でも本作品は特に特徴的な構成になっており、高校生・翔太というキャラクターが、作中で、原作である「垂直の記憶」を読み、また、山野井氏と出会って会話することがドラマ仕立てになっています。
そして、これに原作中のクライミングの描写が一体となってストーリーが進むという、他にはない野心的な翻案になっています。

さて、山岳や極地を舞台にしたラジオドラマに傑作が多いというのは私の持論です。
既に紹介した作品では上記の「世紀の大冒険レース」のほか、「脱獄山脈」(アドベンチャーロード時代)、「北壁の死闘」など。
次回紹介する「神々の山嶺」もなかなかの傑作です。
私自身は全くクライミングをせず文学作品を読むだけの、いわば「安楽椅子型のクライマー」なので、偉そうなことは何も言えません。
でも、人間の極限の心理状態が描写できること、猛吹雪やピッケルの音を音響効果で表現することの臨場感、そして寒さとか登攀のきつさとか酸欠の状態とか(レベルは全く異なるとはいえ)一般人でも体験を共有しやすことなどが、傑作が生み出される土壌になっていると思います。
なお、本作品の原作が刊行されたのは2004年。
この時期は、山野井さんが2002年のギャチュン・カン北壁登攀時に手足の指10本を切断する重症を負ってから、2005年のポタラ北壁登頂でカムバックを果たすまでの間の時期に当たります。
当然、原作にはポタラ登頂成功のエピソードはないはずですが、ラジオドラマとしての本作品の締めはポタラ北壁登頂のエピソードになっています。
ある意味、原作をはみ出した作品になっているわけですが、山野井さんのカムバックまでを描くことによって、一層、物語としての完結性が高まっていると思います。


さて、出演は世界的なクライマーで実在の人物である山野井泰史さんを、俳優の阿南健治さんが演じています。
元劇団東京サンシャインボーイズに所属し、三谷幸喜さん演出の舞台の常連の方のようです。
また、本作品の狂言回しである高校生・翔太を演じている進藤一宏さんは俳優・声優であるとともに、プロのジャグラー(ボールジャグリング)という異色の方なのだそうです。

スタッフは、演出が本作品のような異色な作品を多く手がけている真銅健嗣さんです。
なるほど真銅さんらしい、変わった作品です。
また、本作の特徴的なシナリオを手がけたのは白石マミさん。
青春アドベンチャーでは恐らく本作一作だけしか担当していないのが残念です。

本作品は全5回の小品であり、半分は翔太の物語でもあります。
そのためクライミングを思いっきり描いているのは第4回だけであり、その点で、質・量ともに「安楽椅子登山を堪能した」といえるほどの作品ではないのですが、凝った作品であり、スタッフの冒険心にこそ拍手を送りたいと思います。




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