青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

黄金仮面 原作:江戸川乱歩(青春アドベンチャー)

作品:黄金仮面
番組:青春アドベンチャー
格付:AA-
分類:推理
初出:2010年4月5日~4月16日(全10回)
原作:江戸川乱歩
脚色:大河内聡
演出:江澤俊彦
主演:篠井英介

昭和5年。
その頃、世間では、黄金のマントと黄金のマスクという奇怪な出で立ちの男“黄金仮面”が世間を騒がしていた。
特に犯罪行為をするわけではなく愉快犯とも思われていたが、あまりに世間が騒ぐため、警視庁の浪越警部は、親友の名探偵・明智小五郎にその対処を依頼する。
浪越とともに上野を訪れた明智は、そこで偶然にも黄金仮面の第1の犯罪、「志摩の女王」と呼ばれる大真珠の盗難事件に遭遇するが、明智はこの事件において黄金仮面に翻弄され、完敗を喫してしまう。
悔しがる明智だが、この事件は、黄金仮面と明智の死力を尽くした5連戦の始まりでしかなかった。

―――――――――――――――――――

青春アドベンチャーの篠井版・明智小五郎シリーズの第2弾で、2009年に放送された「黒蜥蜴」に続く作品です。
ちなみにこの後、2012年に第3弾の「魔術師」が放送されています。
この3作品はそれぞれ趣向が違う作品で、「黒蜥蜴」は一言で言えば「耽美」、本作品は「活劇」、「魔術師」は「凄惨」といったところでしょうか。
このシリーズの3作のうち、第1作の「黒蜥蜴」だけが全5回の作品で、他の2作品は全10回の作品です。
全5回では仕方がない面もあるのですが、「黒蜥蜴」はトリックをほとんどナレーションで実況してしまうような駆け足の構成でした。
その点で本作品と「魔術師」は比較的じっくりとした展開です。
ただし、本格的な推理劇というよりは冒険活劇の要素が強いのも確かです。
特に本作品の原作は、江戸川乱歩さんがモーリス・ルブランの「アルセーヌ・ルパンシリーズ」的な作品を目指して書いたそうですので、その要素がとても強いです。
盗みに入る先の娘が怪盗に惚れちゃうとか、大掛かりな機械仕掛けでその場にいる全員を騙すなんて、以下にもルパンっぽい作品です。

さて、明智を癖のある嫌みな人間として描いているのは北村想さんの「怪人二十面相・伝」ですが、「少年探偵団シリーズ」に登場する明智が人格・能力ともに完璧なスーパーマンであるのに対し、大人向けのシリーズに登場する明智は、乱歩版の原作でも(能力はともかく)感情をあらわにする普通の人間です。
この辺は「魔術師」の記事でも書きましたが、本作品でもその傾向は同様で、黄金仮面との第1戦に完敗したあと、明智が浪越警部に言い放った言葉にも、彼の勝ち気な性格が表れています。

明智「ヤツは今日、致命的なミスを犯しました。」
浪越「それは何だ?」
明智「僕を本気にさせたことです。」

とはいえ、明智は第2戦でも、一応事件の真相は解き明かしたものの、死者を出した上で黄金仮面を取り逃がしてしまいます。
そして、黄金仮面に協力者がいたとはいえ、第3戦でも裏をかかれ通しで、またしても黄金仮面を取り逃がします。
明智と黄金仮面の戦いはどのような決着を迎えるのか。
そして、やがて明らかになる黄金仮面の驚くべき正体とは。
本作品、最後はやや大味な展開で、黄金仮面の行動も雑になってしまうのはやや残念なところです。
でも、主人公はあくまで明智なので、黄金仮面があまりに完璧だと物語が完結しないでしょうし、致し方ないところではあります。
一方の明智も、最後にちょっと相手の裏をかいたくらいで得意げになったり、犯人を探す方法が「部下に、屋敷を出る全ての人間のあとをつけさせる」などと名探偵とは思えない力業だったりで、あまりスマートとは思えません。
しかし、作品全体としてみると、黄金仮面の正体や、5度にわたる対決など、色々な趣向に飛んだ楽しい娯楽作品になっています。
是非、粗筋を読まないで、聴いて(読んで)欲しいものです。


さて、本作品で明智小五郎を演じるのは、上でも書いたとおり篠井英介さんですが、過去の長いテレビ・ラジオ・映画・舞台の歴史を振り返ると、とても多くの方が明智小五郎を演じていらっしゃいます
以下のURLはこれをまとめたものですが、大変な労作だと思います。
こういうものがネットで簡単に調べられるとは、良い時代になったものです。

(外部リンク)http://sb-p.jp/oishi/akechi/radio.html

一方、黄金仮面はベテランの俳優・声優の立川三貴(たちかわ・みつたか)さんです。
黄金仮面自体は強烈なキャラクターなのですが、前半はほとんどしゃべらないため影が薄いです。
それが終盤の驚くべき正体の判明以降はとても印象的な活躍をされます。
その他、作品全般を通して登場する浪越警部役の佐藤輝さんやナレーションの冷泉公裕さんも好印象です。


スタッフのうち、演出の江澤さんは、篠井版・明智小五郎3作品の全てを担当されています。
一方、脚色は3作品全てを違う方が担当されており、本作品の担当は大河内聡さんです。
大河内さんは2010年代以降に青春アドベンチャーの担当をされるようになった比較的新しい方で、本作の他には「砂漠の歌姫」や「見かけの二重星」の脚色をされています。

【篠井版・明智小五郎シリーズ】
黒蜥蜴
・黄金仮面(本作品)
魔術師
吸血鬼





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