青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

少年H 原作:妹尾河童(青春アドベンチャー)

作品:少年H
番組:青春アドベンチャー
格付:B-
分類:少年
初出:1997年8月4日~8月29日(全20回)
原作:妹尾河童
脚色:川崎洋
演出:千葉守、保科義久
主演:嚴樫佑介

昭和12年。
神戸の街で仕立屋をしている妹尾家の男の子・肇(はじめ)は、背中に大きく“H”と編み込まれたセーターを着ていたことから、“H”というあだ名で呼ばれている少年である。
Hこと肇は、体が小さく兵隊に取られずに済んだ父親と、信心深いクリスチャンの母親、そして妹との4人で平穏に暮らしていたが、周囲は徐々に戦時色が強くなり、思想統制や赤紙による招集の影がちらついてきた。
もともと外国人が多く、どこの国の人とも分け隔てなく接してきた神戸も、徐々に雰囲気が変わりつつある。
そんな時期であっても、少年Hの周囲には変わった大人達が一杯で、世界には新しい発見が満ちている。
戦時中の日本、“銃後”の日常生活を、逞しく過ごす少年の物語。

―――――――――――――――――――

妹尾河童さんの自伝的小説を原作としたラジオドラマです。
本作品は、30年近い放送期間を誇る青春アドベンチャー、アドベンチャーロードの両番組で放送されたすべての作品を併せても6シリーズ・8作品しか作られていない、一挙20話で放送された作品です。
ちなみに、今まで紹介した20話作品は「レディ・パイレーツ」と「DIVE!!」の2作品です(その他の20話作品はこちらの記事をご参照下さい)。
正直、20話作品は大作過ぎて紹介するのに気が重い(作品紹介前に通して聴き直すのでその時間だけでも結構大変)面もあるのですが、出来がよく本格的な作品が多いので、楽しみでもあります。

本作品は2回のテレビドラマ化、そして本年2013年8月には映画化もされる有名な作品ですので、ご存知の方も多いかと思います。
太平洋戦争が終戦した夏のこの時期や開戦した12月は、戦争に関係した映画が数多く公開される時期です。
今年もこの「少年H」のほか、7月に宮崎駿監督の「風立ちぬ」が公開され、12月には百田尚樹さん原作の「永遠の0」が公開予定です。
1年に一度くらい、戦争を振り返ってみるのも良いものだと思います。
このブログで過去に紹介した太平洋戦争関係の作品と言えば「僕たちの戦争」や「幽霊海戦」がありますが、本ブログでも今週は改めて太平洋戦争関係の作品を紹介する週としたいと思います。

さて、本作品は太平洋戦争の開戦前から終戦直後あたりまでが舞台です。
主人公である肇(H)にとっては国民学校から旧制中学にかけての時期になります。
本作品の舞台は大都市神戸ですので、空襲もあり主人公一家も大きな被害を受けるのですが、あくまで日本国内の話しであって戦場の話しではありません。
また、広島・長崎や沖縄、東京といった一面が焦土になるような異常な被害を受けた地域ではなく、あくまで戦時中の日本の日常生活がメインの内容です。

ところで、本作品(原作)には「戦後的な価値観や思想に基づいて初めから結論ありきで描かれた作品」(wikipedia)との批判があり、批判本も出版されているようです。
批判本を原作本も読んだことがないので、軽々にはいえないのですが、ラジオドラマを素直に聴いてみた感想としては、確かにそのような一面も感じました。
まず、Hのお父さんが、あまりにも、ものが分かりすぎています。
思想や価値観の問題はおいておくとしても、戦後、情報が公になったあとでなければ思考を巡らすことが出来ないような視点で深く物事を考えています。
戦時下の異常な雰囲気の中で、あれだけ自己を保てていたのだとしたら、一種のスーパーマンだと思います。
また、主人公であるHも、とても少年とは思えない強い批判精神の持ち主です。
さらに言うと、批判精神が強い以上に、一般的な日本人を見下ろすような高い俯瞰的な視点から発言しており、ほとんど登場人物と言うより、解説・ナレーション役のような発言内容でした。
そのため、どうしてもHの発言が頭でっかちに聞こえてしまい、違和感を感じざる得ませんでした。
ただし、神戸はもともと外国人に寛容な土地柄で、イメージだけかも知れませんが、一般的な日本人よりも神戸の方はフラットで開明的なものの見方ができたのではないかという感じがします。
また、神戸2中は、1中と比較しても自由な校風が伝統だったようで、H少年の周囲の雰囲気が、当時の日本の一般的な雰囲気と実際に違っていた可能性はあると思います。
妹尾さんは本作品を「自らの記憶と体験を元に書いた作品」とおっしゃっているようです。
だからこの言葉の「元にして」の部分を文字通り捉えて、あくまで妹尾さんの主観的な世界による半フィクションと捉えるのが正しい見方なのではないかと思います。
実在した人物をモデルとして、ある程度理想化を加えた創作作品の範囲内のもので、そんなに目くじらを立てるような話しではないと思います。

なお、先ほど少年Hの発言を「俯瞰的」と称しましたが、それはあくまで視点の話しであり、感情面ではかなり激しく憤ったりしています。
特に物語終盤で、Hの頭でっかちな部分が先走り、家族に対して感情的になる場面があるのですが、結局、ひとりで騒いでひとりで自己解決してしまうエンディングであり少し拍子抜けでした。


さて話は変わるのですが、この作品全般に漂う何とも言えない「ラジオドラマっぽさ」は一体何なんでしょうか。
ラジオドラマがラジオドラマっぽいのは当たり前と言えば当たり前なので、表現が難しいのですが、効果音と音楽で臨場感をだすNHK-FMのスタイルというより、台詞と語りで物語を丹念に読み上げていくという、往年のAMのラジオドラマっぽい雰囲気なのです。
言ってみれば「FMっぽくない」作品です。
これには往年の名優・名古屋章さんが落ち着いた声でナレーションをしている影響も大きいと思います。
しかし、演出がオーソドックスな演出が持ち味の保科義久さんであることを含めて考えると、脚本も含めて、敢えて青春アドベンチャーぽいエンタテイメント性よりも、淡々と表現することを意図した作品である気がします。
とはいえ実は、AMっぽいという感想は私の持っている音源の質があまり良くないからかも知れません。


本作品の主人公である少年Hこと、妹尾肇を演じるのは嚴樫佑介(いずかし・ゆうすけ)さん。
青春アドベンチャーでは他に「しゃべれどもしゃべれども」に出演されているようですが、検索してもその他の経歴が余りよく分かりません。
恐らく子役の役者さんだと思います。
今後のブレイクに期待しましょう。

【保科義久さん演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。





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コメント

[絵文字:v-158]オーソドックスな演出

わ~い

少年Hや~

ところで、保科監督がオーソドックスな演出だとして、オーソドックスぢゃない演出ってのにも、メチャ興味が引かれました。

オーソドックスぢゃない演出って、例えばどれがそうですか?

YouTubeで速攻聴きま~す



Re: オーソドックスな演出

ザンジバルさん、こんにちは。

いやー改めて聞かれると難しい質問ですね。
ここでは、聴きやすいはっきりとした語りと俳優によるセリフ劇が中心の、ちょっと朗読に近い作品をイメージしてオーソドックスという言葉を使っています。
だから「オーソドックでない」といえば、語りを最小限に抑え、BGMと音楽をふんだんに使った作品ですね。
適当に思いついたところ書くと「マドモアゼルモーツァルト」や「少年漂流伝」、「妖精作戦」、「怪人二十面相・伝」といったところでしょうか。
こうしてみると最近の作品はとんがった作品が少ない気がします。
「マージナル」とか「ドラゴンジェットファイター」とか昔の作品の方がやりすぎちゃった作品が多かった気がします。
なお、作品の傾向は演出単体というより脚本の影響も大きいと思いますが、演出=ディレクター=監督、という意味で、演出を広くとらえています。
ちなみに、オーソドックスな作品は失敗すると退屈な作品になり、オーソドックスでない作品は失敗すると雰囲気だけの作品になってしまうと感じています。
どっちもどっちですが、個人的には折角の音がよいFM放送なので、それを生かしてほしいなあという思いがあります。

  • 2013/08/06(火) 23:59:08 |
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  • Hirokazu #-

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