青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

世界でたったひとりの子 原作:アレックス・シアラー(青春アドベンチャー)

作品:世界でたったひとりの子
番組:青春アドベンチャー
格付:A-
分類:SF(その他)
初出:2009年1月19日~1月30日(全10回)
原作:アレックス・シアラー
脚色:丸尾聡
演出:真銅健嗣
主演:本城雄太郎

老化防止薬が発明された未来。
40歳を超えると皆がその薬を飲むため、人類の平均寿命は飛躍的に伸びた。
しかし、それと引き換えに、なぜか新しい子供が極端に生まれにくい世界になってしまった。
タリンはこの世界では極めて貴重な、本当の10歳の子供。
博打のカタとしてディートという男に貰われ、ディートの指示のもと、時間単位で子供のいない家庭の子供を演じる”レンタルチャイルド”として働いている。
タリンの夢はふたつ。
一つはディートの進める手術 -一生子供の姿のままでいるための手術- を受けずにこのまま大人になること。
そしてもうひとつは本当の両親に会うこと。
タリンの夢はかなえられるのであろうか。

―――――――――――――――――――

イギリスの元サッカー選手アラン・シアラー(※)の小説を原作とするラジオドラマです。
...嘘です。アレックス・シアラーです。
分かりづらい冗談ですみません。

(※)アラン・シアラー
ブラックバーン・ローヴァーズやユーカッスル・ユナイテッドでプレーしたサッカー選手。
ポジションはセンターフォワード。
クラブレベルでの活躍と比べて、代表ではパッとしないと言われていた時期もあったが、キャリアの後期ではその評判も払拭。
1990年代のイングランドを代表するエースストライカーと呼ばれている。

さて、本作品の前半では、タリンとディートが旅をしながら色々な家庭でレンタルチャイルドの仕事をしていきます。
その過程で、この世界の状況についても説明されていきますが、老化防止薬の仕組みや子供が生まれにくくなった理由などについて、あまり科学的な説明があるわけではなく、SF要素は、作品のテーマを表現するための小道具に過ぎない扱いです。
そのため、視聴者はタリンの考えていることに集中して聞けばよく、SFに馴染みがない方でも気負わずに聞ける作品だと思います。
そして作品の後半には、タリンが裕福な家庭に養子で入ったり、タリンを追う謎の男が登場したりして、展開に変化もあり、最後まで飽きずに聞くことができました。
敢えて欠点を挙げるのであれば、物語の結末について個人的には「この世界でなぜ子供が生まれなくなったか」という問題のなぞ解きにつながるようなものを期待していました。
ところが実際の結末は、あくまで、人はどう生きるべきかというテーマへの回答と、タリンの個人的な事情の顛末を語るだけのものでした。
そのためか、一応、感動のラストのはずなのですが、「ふたり」や「ピエタ」で発動したような私の感動センサーはなぜか今回は発動しませんでした。
この辺は作品の性格に関する私の勘違い・思い込みのせいであり、素直に楽しめなかったのはちょっと反省しているところです。

主役のタリン役は本城雄太郎さん。
劇団ひまわり所属の俳優・声優さんです。
1996年生まれですので、本作品が放送された時点で13歳。
その後、2012年に15歳でテレビアニメ「エウレカセブンAO」の主役であるフカイ・アオ役に抜擢された...らしいのですが、この作品を見ていないのでこれ以上はわかりません。
本作品ではタリンと同じ10歳とはいかないまでも実際に少年である子役の本城さんが採用されておりNHKらしい配役です。
一方で、作品中で登場する「子供の姿をしているけど本当は大人」であるチャーリーやミス・ディビナの役を、大人の専業声優である田中真弓さん(「ONE PIECE」のルフィや「天空の城ラピュタ」のパズーなどでとても有名な方。こちらも参照。)や冬馬由美さん(「ロードス島戦記」のディードリット、「ああっ女神さまっ」のウルドなど。青春アドベンチャーでは「名馬 風の王」)が演じていらっしゃいます。
この辺は意図して使い分けたのだと思いますが、有名声優をこのように演出上の都合でワンポイントで使うのはNHKらしいところです。

また、タリンを取り巻く大人達を、有薗芳樹さん(ディート役)、ベンガルさん(キネーン役)といった芸達者な役者さんが演じていらっしゃいるのも本作の魅力だと思います。
特に有薗さんは、くせ者のディートの役をコテコテに演じていらっしゃって、なかなか聴き応えがあります。
舞台俳優さん、専業声優さんを問わず、本作品は出演者の皆さんがとても熟練されていて、聴いていて安心できる作品だと思います。
それは主役の本城さんも同様で、このような子役の配役にありがちな、たどたどしさはほとんど感じられませんでした。

本作の脚色は丸尾聡さん、演出は真銅健嗣さんの「精霊の守り人」と同じコンビです。
丸尾さんは端役ですがなぜか「オペレーション太陽(ソル)」に役者として出演されています。
自らの脚本作品である本作品でもちょこっとご出演されているようです。
ちなみに、今まで紹介済みの丸尾さんの脚本作品の中ではやはり「バッテリー」が印象深いです。
一方の真銅さんは、青春アドベンチャーでは大作や癖のある作品を多く担当されている方です。
本作品では作中で歌が流れたりして少し青春アドベンチャーらしくない独特な雰囲気もあります。
今まで紹介した真銅さんの作品の中でも「妖異金瓶梅」、「ラジオ・キラー」、「蜩ノ記」などはなかなか良作でした。
今後も「光の島」、「封神演義」、「赤と黒」など真銅さん演出の作品は、どしどし紹介する予定です。
ご期待下さい。





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