青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

風神秘抄 原作:荻原規子(青春アドベンチャー)

作品:風神秘抄
番組:青春アドベンチャー
格付:AAA
分類:伝奇
初出:2006年2月27日~3月17日(全15回)
原作:荻原規子
脚色:富永智紀
演出:藤井靖、木村明広
主演:小野賢章

平治元年(西暦1160年)。
源氏と平家は決戦の時を迎えていた。いわゆる「平治の乱」である。
この戦いに臨む源氏の棟梁の長男、”悪源太”義平の旗下に、初陣の坂東武者がいた。
名を草十郎(そうじゅうろう)という。
草十郎は剣もよく使うが、笛も名手であった。
そして、始まった戦い。
源氏方は善戦するものの、結局、義平は刑死し、草十郎もまた混乱の中で盗賊・正蔵に捕縛されてしまう。
草十郎に戦いの無意味さと武士であることの空しさを諭し、武士の身分を捨てることを求める正蔵。
動揺する草十郎だが、正蔵に連れられて赴いた京の都で、糸世(いとせ)という名の白拍子の少女に出会う。
糸世の舞と草十郎の笛の出会いにより、歴史はその動きを大きく変えていく。

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青春アドベンチャー系列の番組でラジオドラマ化された3作目の荻原規子作品です。
ちなみに1作目は「空色勾玉」で、2作目は「これは王国のかぎ」です。
本作品は「空色勾玉」と同じ日本の歴史をモチーフにした作品ですが、「空色勾玉」が古代が舞台であるのに対して、本作品の舞台は中世です。
また、「空色勾玉」が日本史を材料にしつつ登場人物、地名等はオリジナルであったのに対し、本作品は基本的に源平の戦いの史実を踏まえており、源義平、平清盛、後鳥羽上皇など実在の人物が登場します。
しかし、舞や笛が人の運命を変える超常的な力を持っていたり、鳥の神と話すことが出来たり、歴史ものとは言いがたい要素も多いため、本ブログでは「伝奇」に分類しました(本作品のジャンル分けはこちらをご参照下さい)。

さて、本作品は冒頭のストーリー紹介のとおり、舞と笛がキーとなる作品です。
ラジオドラマですので、舞を映像で表現することは出来ませんが、歌と効果音を上手く使っています。
歌については、ヒロインの糸世(演:石川由依さん)が歌うシーンが数多く取り入れられています。
また、鈴を始めとした効果音がまさに効果的に使われており、鈴の音が響くたびに、糸世が真っ直ぐに立っている様が目に浮かぶようでした。
本作品のスタッフ紹介を見ると、劇中歌の担当として山下康介さん、音響効果の担当して太田岳二さん・大西斎さん・平木和人さん、そして選曲に伊藤守恵さんの名前があります。
特に山下さんは既に紹介済みの作品では「ピエタ」と「泥の子と狭い家の物語」の音楽も担当していらっしゃいました。
私自身特に意識してなかったのですが、改めてみると両作品とも私は非常に高い評価をつけてますね。
山下さんの関わられた作品にハズレなし、というのはちょっとしたジンクスになりそうです。

いずれにしろこれだけ音楽にこだわった作品をつくるのは演じる石川さんだけでなく、スタッフの皆さんも大変だったと思います。
しかし結果としてとても良い雰囲気の作品になっており、スタッフに拍手です。
思えばNHK-FMでは、FMの音の良さをいかすためか、昔から音楽を前面に出したラジオドラマが数多くつくられてきました。
代表例としては細野晴臣さんが作曲を担当した「マージナル」でしょうか。
青春アドベンチャーでも、ミュージカル風だった「マドモアゼル・モーツァルト」や「少年漂流伝」など独特な作品がいくつかあります。
正直いって、音楽の時間が長すぎて退屈に感じてしまったり、聞いていて恥ずかしくなるような歌詞の作品もあったりするのですが、やはりラジオドラマで雰囲気を出すのにオリジナル音楽はとても効果的だと思います。
人にはない力を持ってしまったが故に自由に生きることができない、主人公二人のもどかしさ、切なさが音楽を通して伝わってくる作品だと思います。
ちなみに戦闘シーンのBGMは、ちゃんと確認していませんが「空色勾玉」と同じか非常に近い調子の音楽でした。
この辺は、スタッフの中で唯一、両作品ともに担当されている伊藤守恵さんの遊びなのかも知れません。

ストーリー展開はオーソドックスなものです。
一人の少年が挫折から立ち直り、迷い失敗しつつも自分の道を探していく話しです。
第10回に盛り上がりの山があり、そこで起きた事件を解決するために最終話に向かって話が再び盛り上がっていく展開で、なかなか飽きさせません。
ヒロインの糸世が第2話まで登場しないことや、11話以降登場回数が少なくなるなど、全15回のボリュームを活かした、贅沢なストーリー展開ができていると感じました。
「空色勾玉」が全10回で、少し詰め込みすぎの感があっただけに、全15回の作品にしたのは大正解だと思います。

さて出演者ですが、主人公の草十郎役は小野賢章さんが演じています。
王の眠る丘」、「光の島」、「砂漠の歌姫」など多くの青春アドベンチャー作品に出演されていますが、主役級の役を務められたのは本作品のほかは、2015年放送の「シブちゃん」くらいだと記憶します。
ダニエル・ラドクリフ(=ハリー・ポッター)の吹き替えを一貫して担当されたことで有名な小野さんですが、幼いころに劇団四季ミュージカルの「ライオン・キング」でヤングシンバ役を演じられているそうです。
音楽が重要な位置を占める本作品にぴったりな配役ですね。
そして、ヒロインの糸世役は石川由依さん。
本作品は2006年の放送ですが、本作品での演技が好評だったのか、その後、「砂漠の歌姫」(2011年)、「月蝕島の魔物」(2012年)、「髑髏城の花嫁」(2013年)と主役又はヒロインを担当しています。
このうち「砂漠の歌姫」は本作品と同様に音楽がテーマの作品であり、本作品と同様に石川さんが歌うシーンがある作品です。
石川さんもまた多くのミュージカル作品に出演経験があり、それを踏まえたキャスティングとなっています。
実際のところ、この作品が制作された2006年時点の石川さんの演技は凄く上手とはいえないと思います。
しかし真面目に、丁寧に、糸世を演じていらっしゃるのが感じられ、とても好印象です。
ちなみに本作から7年後の「髑髏城の花嫁」では、かわいい声はそのままに、随分とスムーズに演技されるようになったと感じます。
石川さん、この記事を書いている時点(2013年7月)で人気テレビアニメ「進撃の巨人」のヒロインであるミカサの役に抜擢されました。
余計なお世話だとは思いますが、何だか成長した我が子を見るようです。
本作品はこのお二人、小野さんと石川さんの演技が少しタドタドしいのが欠点ではあります。
しかし、それはそのままこの二人が演じるキャラクターの初々しさにも合致しており、作品の魅力にもなっていると思います。

また、草十郎とともに旅することになる「鳥の王」である鳥彦王と源義平は、青春アドベンチャーではお馴染みの今井朋彦さんが演じています。
ちなみに今井さんは「タイムスリップ源平合戦」では源義経を演じています。
ところでこの鳥彦王というキャラクター、「空色勾玉」に登場する鳥彦との関係が想像できるキャラクターなので、「空色勾玉」で鳥彦役を務めた西山浩司さんに演じて頂ければ、古参のファンはちょっとニヤっと出来た気もします。
もちろん今井さんの演技には何の不満もありません。
「ともひこ」が「とりひこ」を演じているのは偶然だと思いますが(ダジャレですみません)。
また後鳥羽上皇を演じている井上倫宏さんも青春アドベンチャーでは常連の出演者さん(「ロスト・ワールド」、「月蝕島の魔物」など)で、安心して聞ける布陣です。

この作品、心理的になかなか付けづらい格付”AAA”を付けさせて頂きました。
私が”AAA”を付けた作品はどちらかというと、実写ドラマ化やアニメ化をしても、陳腐になってしまうことが想像される、ラジオドラマ向きの作品が多いと思います。
例えば「北壁の死闘」や「最後の惑星」、「ブラジルから来た少年」、「ラジオ・キラー」などの海外原作もの。
これらはハリウッド級のお金を掛ければともかく、安易な映像化は駄作への道、まっしぐらな作品だと思います。
特に「北壁の死闘」は中途半端な映像なら、ない方が臨場感が出るラジオドラマ向きの作品だと思います。
一方、同じ格付”AAA”の作品でも、「妖精作戦」、「西風の戦記」、「カルパチア綺想曲」などは良質な映像があればアニメ化も悪くないと思われる作品です。
本作品は後者の分類に入ると思います。
そういう意味で、「ラジオドラマでなければならない」「ラジオドラマでの制作がベスト」という意味では本作品は「北壁の死闘」などと比較して、一歩、譲る作品であると思います。
しかし、いい加減な絵で作品世界をぶち壊しにするくらいなら、ラジオドラマでも十分な表現が出来ることを示している良い例でもあると思います。
まあ、アニメや大作映画と比較して、ラジオドラマの制作費は格安でもあるでしょうし、その面でもコストパフォーマンスは高いと思います。





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