青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

太陽の簒奪者 原作:野尻抱介(青春アドベンチャー)

作品:太陽の簒奪者
番組:青春アドベンチャー
格付:A
分類:SF(宇宙)
初出:2006年5月8日~5月19日(全10回)
原作:野尻抱介
脚色:佐藤ひろみ
演出:保科義久
主演:朴璐美

2006年、突如、水星から何らかの物体が噴出を始めた結果、太陽にリングができてしまった。
そしてリングの影により日照量が激減した地球は、急速に寒冷化を始める。
人類はリングをつくった何者かがいると仮定し、彼らを”ビルダー”と名付けるが、その正体はようとして知れない。
リングの探査に向かった探査機もすべて正体不明の兵器で破壊され、全ては謎のままで時は過ぎていく。
一方、リングの形成を目の当たりにし異星人とのコンタクトを夢見た高校生の少女・白石亜紀は、やがてその夢のまま科学者へ成長する。
しかし、15年後の亜紀が31歳になった頃には、地球の寒冷化は一層進み、人類は滅亡の危機を迎えていた。
そして、人類は存亡を掛けて1隻の舟をリングへと送り出す。
人類初の原子力宇宙戦艦ファランクス。
乗り込むのはわずか4人の乗組員。
その中に亜紀の姿もあった。
人類存続のための手段はあるのか。
ビルダーは存在するのか。
そしてビルダーが存在したとして彼らとは戦うしかないのか。
様々な葛藤を抱えながら亜紀はリングを目指す。

―――――――――――――――――――

野尻抱介さん原作の星雲賞(日本長編部門・日本短編部門の双方)を受賞したハードSF小説を原作とするラジオドラマです(星雲賞受賞作を原作とする青春アドベンチャー作品についてはこちら)。
ハードSFを原作とする作品が意外と少ない青春アドベンチャー。
今まで紹介した作品でハードSFっぽい作品といえば竹宮恵子さんの「エデン2185」とユルゲン・ローデマンの「最後の惑星」くらいでしょうか。
ジュラシック・パーク」などもハードSFといえばそうですが、どちらかというと冒険もの、サスペンスものの側面が強い作品です。
といいますか、本ブログでSF系に分類している作品であっても、「妖精作戦」のようにライトノベル的な作品が大半で、「サイエンス・フィクション」(Science Fiction)というより、「すこし・不思議」(Sukoshi Fushigi=藤子不二雄さんの言葉らしいです)と言った方が良い作品が大半です。
FMアドベンチャー時代には「渇きの海」などいかにもSFぽいものもあったらしいですし、紹介済みの作品でも「銀河番外地、運び屋サム」、「アルジャーノンに花束を」、「夏への扉」など明確なSF作品もありますが、やはり全体的に本格的なSFは少ない印象です。
「今時、流行らないSF的展開」という趣旨の台詞が出てくるのは「見かけの二重星」か「わたしの彼はポアンカレー」のどちらか(すみません記憶があいまいです。)だったと思うのですが、もうちょっとSFが多いと嬉しいというのが個人的な印象です。
その点、本作品はSF、特に日本の代表的なハードSF作家が原作者であるという点で、極めて希有な青春アドベンチャー作品です。

ところで「エデン2185」の紹介記事でも書いたのですが、この「ハードSF」の「ハード」の意味についてです。
SFを知らない方には、「本格的」という意味や、ハードボイルド小説からの連想からか「男っぽい、厳しい、真剣な」的な意味に取られることがあるようです(実際、前者の用法で使われることもあるようです)。
しかし、ハードSFという用語は、科学的考証を重視し、それ自体が作品のテーマとなっている作品に使われるのが一般の用法のようです。
だから、女子高生が主人公(野尻抱介さんの「ロケットガール」をイメージしています)だろうと、月に結婚式場を作る話(小川一水さんの「第六大陸」をイメージしています)だろうと、科学的考証がしっかりしていればハードSFです。
ただし、ラジオドラマで科学的考証をきっちりやろうとすると、どうしてもナレーションや説明的な台詞が増えてしまいます。
イカロスの誕生日」などでもその傾向はあったのですが、ラジオドラマとしてのテンポを重視するとどうしてもその辺はカットせざるを得ません。
この辺はラジオドラマの限界なのかも知れません。

さてネタバレになってしまうので、内容をあまり書けないのですが、実は亜紀がリングの破壊に向かう話しは全体の半分に過ぎません。
後半5回はその後の話です。
正直、前半の方が面白く、前半だけなら格付AAとしたかも知れないとも思いますが、異星人とのファーストコンタクトの行方がどうなるのか、最後まで目が離せないのも確かです(別の意味で目を離せないファーストコンタクトものは「UFOはもう来ない」)。
結末は甘えのない、でも爽やかなものです。
お楽しみに。

なお、以下のリンクに原作者ご自身による青春アドベンチャー版「太陽の簒奪者」の感想を見つけました。
こちらも是非ご確認ください。

http://njb.virtualave.net/nmain0200.html(外部リンクです)


出演者は主役の亜紀役が朴璐美(ぱく・ろみ。「璐」はおうへんに路)さん。
演劇集団円に所属する女優さんで、声優としての代表作は「鋼の錬金術師」のエドワード・エルリックだそうです(「鋼の錬金術師」のアニメ版をみたことがないので詳しくはわかりません)。
青春アドベンチャーでは2000年の「イーシャの舟」で準主役級の和美を、2012年の「レディ・パイレーツ」でも準主役級のミネルバを演じていました。
男の子っぽいというか、宝塚の男役のような声を出される方です。
本作品では高校生(16歳)から大人(51歳)までの期間の亜紀を演じているのですが、それぞれの時期で少しずつ声としゃべり方を変えているのが印象的です。
そういえば、最近はあまり聞きませんが、青春アドベンチャーって、初期の頃は前田悠衣さんを始めとする宝塚出身の女優さんを頻繁に起用していましたね。
五番目のサリー」とか、その傾向が全開の頃でした。

その他、草尾毅さん、郷里大輔さんといった人気声優さんも出演されています。
そういえば草尾さん、郷里さんといえば「Meg」にも一緒に出演されていました。
特に草尾さんは亜紀の相手役であるマーク・リドゥリーという重要な役ではあるのですが、出演するのはほとんど前半だけという贅沢な使い方です。
ちなみに後半の亜紀の相手役であるラウルを演じるのはIKKANさん。
俳優・声優・作家・演出家としてマルチな活動をされている方で、NHK-FMでも多くのFMシアター作品などに出演されています。
青春アドベンチャーでも「レディ・パイレーツ」、「サバイバル」、「闇の守り人」など多くの作品にご出演です。
「レディ・パイレーツ」では朴さんとも競演していましたね。
また、ナレーションは、保科義久さん演出の作品(「王の眠る丘」、「トリガー」)では御馴染みの掛川裕彦さん。
掛川さんは「クローズアップ現代」でもナレーションをされており、そのことに気が付いたあとに聞いてみるとなんだか不思議な感覚です。


一方、スタッフは、脚本が佐藤ひろみさんで、演出が保科義久さんです。
佐藤さんは青春アドベンチャーでは「おいしいコーヒーのいれ方」シリーズや「しゃばけ」シリーズなどの人気作を手がけていらっしゃいます。
基本的には、当ブログであれば「日常系」や「幻想系」に分類される作品が多く、本作のようなSFを担当される例は珍しいと思います。
今まで紹介した作品の中では「ピエタ」がとても印象に残っています。
演出の保科さんは1980年代から最近まで長い期間、この系列の番組の演出を担当されているベテランさんです。
オーソドックスな演出で安心して聴くことが出来ます。
今まで紹介した作品の中では「ジャガーになった男」がお気に入りです。

【保科義久さん演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
名作、迷作、様々取りそろっています。
こちらを是非、ご覧ください。




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