青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

ジュラシック・パーク 原作:マイクル・クライトン(青春アドベンチャー)

作品:ジュラシック・パーク
番組:青春アドベンチャー
格付:AAA-
分類:SF(海外)
初出:1993年6月14日~7月2日(全15回)
原作:マイクル・クライトン
脚色:香取真理
演出:川口泰典、木那川善郎
主演:海津義孝

それは目を疑う光景だった。
アパトサウルス。ジュラ紀後期に繁栄した巨大な草食恐竜。
アラン・グラント博士がイスラ・ヌブラル島なる絶海の孤島で目にしたのは、まさに古生物学者として長年夢に見てきた景色だった。
長年夢に見てきたが、決して実現されるはずはなかった光景。
生きた恐竜が目の前を歩いているのだ。
ジュラシック・パーク。
それは拝金主義とロマンチシズムが渾然一体となった狂気の実業家ジョン・ハモンドが、最新の遺伝子工学と膨大な費用をつぎ込んで地上に現出せしめた奇跡のテーマパーク。
生きている恐竜をこの目で見ることができる。
こんな素晴らしいことが他にあるであろうか。
そう、パークの成功は約束されていたはずであった。
しかし、最新のテクノロジーが惜しげもなく投入されたこのテーマパークは、開園前にすでに密かに数多くのバグと、いくつかの”事故”を起こしていた。
そしてこれらの綻びはパークを動かす複雑なシステムを狂わし、やがて破局へとつながっていく...

――――――――――――――――――

SF界の大御所マイクル・クライトンの小説を原作とするラジオドラマです。
...というよりスティーブン・スピルバーグの監督作品として大ヒットした「ジュラシック・パーク」と言った方が分かりやすいのでしょうか。
有名すぎてストーリー紹介の必要はない、とも思ったのですが、改めて考えるとこの映画自体、もう20年前の作品。
この映画をリアルタイムで見た方はもうおじさん世代になりつつあるんですね。
若い世代の方であればこの作品も見たことない方も意外と多いのかも知れません。

ということで、簡単に作品紹介をしますと、「ジュラシック・パーク」の来場者達を恐竜が襲う、動物?パニックサスペンスです。
映画ではリアルに動く恐竜達が観客の度肝を抜きましたが、原作小説は、人間は科学や生物をいかに扱うべきか、という強いテーマ性を持った作品です。
本ラジオドラマは基本的に映画版ではなく、原作小説準拠のストーリーになっており、マイクル・クライトンらしい、そしてSF作品らしいテーマ性の強い作品になっています。
でも、やはり本作の魅力は恐竜!
本作品はラジオドラマなので映像の衝撃はないのですが、いつ恐竜に襲われるか分からないドキドキはラジオドラマでも十分表現されていると思います。
ラジオドラマならではと言えば、やはり音楽と効果音、そして台詞。
恐竜の鳴き声、忍び寄ってくる足音、ジャングルの中の虫の声など、さすがにNHKです。
そして緊迫感を煽るテーマ音楽。
本作品の選曲は長い間青春アドベンチャーの選曲を担当された伊藤守恵さんですが、本作も素晴らしい選曲です。
緊迫感と言えば、本作ではグラント役の海津さんが「語り」も担当しているのですが、これが何とも不安感を煽る声で作品の雰囲気にあっています(その他の出演者については後で)。
しかし、それにしても放送から長い時間を経て、今、手元に持っている音源はあまりクリアなものではありません。
いい音で聞きたいなあ。
やっぱりNHKさんがネット配信してくれるのが一番なのですが。

また、本作品が素晴らしいのは、恐竜を現代に甦らせるための科学的な手法(有名だとは思いますが一応ネタバレ防止のために曖昧に書いてます)にリアリティがあること。
本当に恐竜復活が可能に感じられるので、作品中では批判的に扱われているパークのオーナーのハモンドに対しても、恐竜少年だった私としては「彼ほどの財力があれば私でもジュラシック・パークつくったちゃうよなあ」とちょっと同情的に感じてしまいました。

さて、話は変わって、ラジオドラマと映画の関係なのですが、このラジオドラマが放送された時期は1993年6月14日から7月2日。
原作の出版は1990年らしいので、これでも十分早いラジオドラマ化ですが、実は映画版の公開もアメリカでは1993年6月11日、日本では1993年7月17日なのです。
つまり映画のアメリカ公開と日本公開の間の時期に、ラジオドラマ化されていることになります。
何なんでしょうね、このタイミング。
タイアップとは思えないので、NHKが意図的に狙ったのか、それとも偶然か。
凄すぎるタイミングです。
放送タイミングと言えばこの作品の2作後に同じマイクル・クライトン原作の「スフィア」が青春アドベンチャー化されています。
同じ原作者の違う作品がこんなに近いタイミングで青春アドベンチャー化された例も他にはないと思います。
色々と謎の多い放送タイミングです。

さて、本作品では今回の事件以前に最終的にはパークの構想は破綻する運命にあったことがわかります。
とはいえ今回の事件に限れば必ずしもここまで被害が拡大しなくても済んだはずの状況ではありました。
しかし、本作はパニックモノの定石どおり、登場人物が良かれと思ってしていることが思わぬ効果を呼んだり、登場人物達の微妙なすれ違いがどんどん破局への道のりを加速していく展開になっています。
そしてパークのシステムエンジニアのネドリーのように事態を決定的に悪い方向に動かしてしまう人物もいます。
そうした状況の中で、我らが主人公、海津義孝さんが演じるアラン・グラント博士はどのように動いたのか?
グラント博士は生涯を掛けて恐竜を研究している古生物学者で、スポンサーのハモンドの要請で、開演前のパークを視察してこの災難に巻き込まれます。
専門家の知識を活かして襲い来る恐竜達を次々と撃退し...といいたいところですが、作品中では事態に対処するのが精一杯といった印象で、事件解決にはそれほど貢献しません。
事件が概ね解決した段階で急に強気になって、パークの顧問弁護士ジェナーロを説教したあげくに恐竜の営巣地に乗り込むのですが、どうみても個人的な興味で営巣地を見たいだけにしか思えないのが、何だかなあという感じ。
あそこは専門家に任せてじっとしているのが正解だと思うのですが。
また、ヒロインはサトラー博士(エリー)なのでしょうが、こちらも影が薄い存在。
原作ではもう少し見せ場があるらしいですが、ラジオドラマでは特段活躍することなく終わります。
一方、大活躍するのがハモンドの孫であるティムとレックスの兄妹。
ティムは事態の改善のために決定的な役割を果たしますし、レックス役の前田悠衣さんは後半叫びっぱなしで別の意味で大活躍です。
そしてパークの不吉な未来を予言して登場する数学者のマルコム博士。
物語終盤で本作のテーマを語ることになる重要な役です。
本作のテーマは上記のとおり「科学の限界」に関するものです。
ただし、安易に「自然万歳」「科学を捨てろ」というものではなく、自らの限界を知り自省せよ、という納得しやすいものです。
内省できることこそ理性的であり科学的であるのだと思います。
このようなことを考えているとふと、原発事故のことを思い出してしまいました。
原発事故が起こってしまった現代の日本で、マルコム博士の台詞を聞くととても意味深です。

出演者ですが、グラント役の海津義孝さんを始めとして、他の青春アドベンチャー系の名作で主役を勤めている役者さんがずらりと登場しています。
具体的にはグラント役の海津さんとエリー役の大輝ゆうさんは「カルパチア綺想曲」で主役コンビであるジェラード・アッテンボローとジョー・アッテンボロー親子役を演じていました。
また、ティムとレックスの兄弟役のあづみれいかさんと前田悠衣さんは、「わたしは真悟」で、悟(さとる)と真鈴(まりん)と真悟(しんご)の3役を二人で演じるという変則な形で主役を演じたコンビです。
アーノルド役の大高洋夫さんは「アルジャーノンに花束を」の主役チャーリー役の名演が記憶に残るほか、「ラジオ・キラー」でも準主役級のガッツ役。
ネドリー役の渡辺いっけいさんは、青春アドベンチャー初期の傑作「北壁の死闘」の主役エーリッヒ・シュペングラーの他、「五番目のサリー」や「サンタクロースが歌ってくれた」などでも主演されている、青春アドベンチャー初期を代表する常連出演者さんでした。
また、ハモンド役の川久保潔さんは東京放送劇団(NHKの専属劇団。1990年解散。詳細はこの記事をご参照下さい)出身で、番組名がアドベンチャーロード時代であった1980年代にも名脇役として大活躍されていた印象が強い方。
青春アドベンチャー期に入り、東京放送劇団出身の名優の方々が徐々に引退されていく中で、「封神演義」や「BANANA・FISH」などの大作にも出演されていた最後の砦のような方でした。
その他にも、古田新太さんや小須田康人さんなど多数の青春アドベンチャーに出演されている舞台俳優さんが脇を固めています。
本作品の放送は1993年ですので、まさに青春アドベンチャー初期から中期に書けての集大成のような配役です。

スタッフは、演出が川口泰典さんで、脚色が香取真理さん。
川口さん演出の作品と言えば、これはもう「外れがない」の一言に尽きます。
青春アドベンチャー系の番組における活動時期は1980年代から2000年までで、この間、「じんのひろあき」さんと組んだ「わたしは真悟」・「北壁の死闘」・「バナナ・フィッシュ」、香取真理さんと組んだ「悲しみの時計少女」・「カルパチア綺想曲」・「エデン2185」などドラマチックな作品がきら星のごとく並びます。
演出手法もさることながら作品選択が絶妙です。
ちなみに最近(2013年)のNHK-FMでは「新日曜名作座」の方で川口さんのお名前を拝見します。
一体どういうお立場で、何歳くらいの方が存じ上げませんが、健在というのは嬉しい限りです。
たまには青春アドベンチャーの演出もして頂けると嬉しいのですが。

さて、以上、散々褒めてきたので、作品の評価は当然のAAAとしたいところなのですが、本作の場合は有名すぎるのが最大のネック。
聴く前から結構、展開を知っていたんですねよね、私。
設定や展開を事前に知っているとどうしても感動が薄れてしまうのは事実。
格付けのマイナス分はその分です。
この作品を原作者や映画の基礎知識なしで初めて聴く方が羨ましい。
それにしても本作の次に放送された作品が、赤川次郎さん原作の「ふたり」で、その次が「スフィア」。
何というレベルの高い作品群。
この頃は青春アドベンチャーの一つの黄金時代だったのかも知れません。

最後に、青春アドベンチャーで類似の作品としては古代鮫が襲ってくる「Meg」(1998年)があります。
こちらもなかなかの良作でお進めです。
また、恐竜が登場する作品としては「ロスト・ワールド」(1997年)、「遠い海から来たCOO」(1988年、アドベンチャーロード作品)などがあります(ネタバレになるのでお気をつけ頂いたいのですが他にもあります)。
恐竜好きの方は是非、これらにもご注目下さい。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。




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