青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

海辺の王国 原作:ロバート・ウェストール(青春アドベンチャー)

作品:海辺の王国
番組:青春アドベンチャー
格付:B-
分類:少年
初出:2003年7月7日~7月18日(全10回)
原作:ロバート・ウェストール
脚色:ミラーカク子
演出:真銅健嗣
主演:内山昂輝

1942年、第2次世界大戦中のイギリスの海辺の町。
ドイツ軍による空襲はひどくなる一方だ。
その夜、12歳の少年ハリーは防空壕に逃げ込んでようやく難を逃れた。
しかし、一夜明けて救出されたハリーの目の前で世界は一変していた。
家が燃えている。
両親や妹も助からなかっただろう。
ショックを受けたハリーは、同じように焼け出された犬・ベンとともに大人たちの世界を離れ、海辺に沿って放浪の旅を始める。

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」、「スーツケース・キッド」に続く「子供が主人公作品」シリーズ?の第3弾の記事です。
本作はイギリス児童文学作家ロバート・ウェストールの、多くの賞を受賞した代表作を原作としています。
しかし、私としては「戦争で両親を失った少年」が「もう一人(一匹)」と一緒に、「自分の住んでいた世界から」はみ出して「自分たちだけ」で生きていこうとする、というモチーフを聴いただけで、どうしてもあの映画を思い出してしまいます。
そう、野坂昭如さんの小説を原作とし、高畑勲さんが監督してスタジオジブリでアニメ化された「火垂るの墓」。
英国の映画雑誌「エンパイア」誌が発表した「落ち込む映画ベスト10」の第6位にランクインされたという、この伝説の?映画。
幼い子供を持つ親としては、ほとんどまともに見ることが出来ないほどキツい映画です。
どちらが先、という話はどうでも良い(念のためにいえばもちろん「火垂るの墓」の方が先)のですが、本「海辺の王国」も火垂るの墓と同じような展開になるのではないかと、かなりビクビクしながら聴いていました。
しかし、どうも雰囲気が違います。
まずハリーは、両親と妹の死体が埋もれていると確信している家から、死体を捜そうとする努力を何らせずに逃げ出してしまいます。
また、これといって嫌がる理由がなさそうな(あえて言えば避難所で死んだ両親の話をしなければいけないのが嫌?)避難所生活を徹底拒否し、苦しい一人暮らしを選択して、更に放浪の旅にまで出てしまう。
敗戦国日本と、空襲を受けているとはいえ家族で楽しくシチューを食べているようなイギリスでは、孤児の一人暮らしのし安さも相当違うのかもしれませんが、それにしても随分とファンタジーな放浪譚です。
漠然とした違和感を感じながら聴き続けたのですが、それでも途中までの展開はなかなか巧みでした。
ハリーは、旅の途中で、様々な心優しい大人たちと、それ以上のろくでもない大人たちと出会い、その過程で社会と自分とのかかわりを考えていきます。
どうもこの作品のテーマは「戦争の悲惨さ」でも「二人だけの閉じた世界の悲劇」でもなく、児童文学のお約束の少年の成長物語のようなのです。
つまり、戦争や家族の死はそのための小道具に過ぎず、この作品は一人になったハリーが直接、大人達と向き合うことにより成長していく姿をみせることにあるようです。
あるようなのですが...
最後にハリーは「彼」(ネタばれ防止)に出会うのです。
確かに、12歳の少年に対して「お前は逃げた」と罵倒してしまう「彼」も、大人としてはかなりクズな部類だと思います。
しかしそれにしても、どう見ても自分勝手な理由で旅に出た対してハリーが「僕は成長したんだ。この家に入り切らないほど大きくなってしまった。」といえるほどの成長をしたのか、どうにも釈然としませんでした。
先の展開が読めない、とても面白い作品だっただけに、最後のハリーの釈然としない発言と、「彼」の自制心を欠いた発言の後味悪さがどうもに気になってしまいました。
あくまで私の感想です。
本作のファンの皆様にはお気を悪くなさらないでくださいね。

主役のハリー役は内山昂輝さん。
劇団ひまわり所属で放送当時は12歳だったはずですが、上手いです。
ちなみに内山さんは、その後「機動戦士ガンダムUC」の主役バナージ・リンクス役など、声優として大成しているそうです。





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