青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

スウィート・アンダーグラウンド 作:ウォーリー木下(青春アドベンチャー)

作品:スウィート・アンダーグラウンド
番組:青春アドベンチャー
格付:B
分類:異世界
初出:2002年7月29日~8月9日(10回)
作 :ウォーリー木下
演出:吉田努

日の当たるこの世界から地下深く。どこかにある地底世界。
光なき地底世界で生きる地底人達は、ウサギのような大きな耳を持ち、成長すると目が見えなくなってしまう。
ジェット、アンバー、クオーツの地底人の少年3人組は、ある日、耳の小さな女性アリスと出会う。
出入りが禁止されている縦穴を上に上に登っていくと辿り着くという「光の世界」の伝説。
アリスはその世界へと行くことを目的とした反政府組織「ホワイト・ラビッツ」の最後の生き残りであるという。
地下警察に追われるアリスを守るとともに、目の見える少年のうちに「光の世界」を見ることを決心した3人組は、アリスに同行し縦穴に潜るが、やがて3人組も軍隊と地下警察から追われる身となってしまう。
「光の世界」は本当にあるのか、アリスは一体は何者なのか。
全てを知った3人組は、それでもやはり「光の世界」を目指して冒険を続ける。

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劇団sunday代表で戯曲家・演出家のウォーリー木下さん脚本のオリジナルラジオドラマです。
ウォーリー木下さんの長編作品は、青春アドベンチャーでは本作の他に2001年に「645~大化の改新・青春記~」が放送されています。
ちなみに2作とも、作:ウォーリー木下・演出:吉田努のコンビで制作されています。

さて、本作は太陽の光の届かない架空の地底世界を舞台にした冒険譚です。
青春アドベンチャー系の番組では本作の他にも「二分割幽霊綺譚」(ふたりの部屋、1983年)や「穴(HOLES)」(青春アドベンチャー、2005年)などが地中世界を舞台にした作品です。
考えてみると、真っ暗で音しか聞こえない地底世界を舞台とした作品は、全てを音だけで表現しなければならないラジオドラマと非常に相性が良いのではないかと思います。
本作でも、暗闇に耳を澄ます行動をラジオのチューニング音で表現したり、DJ調でリスナーに語りかけるナレーションが途中で「全てを知っているこの暗闇の世界のニュース屋」が実況しているという設定であることがわかったり、ラジオドラマの特長を生かした作劇上・技術上の工夫がなされています。
しかし、残念ながら、この「地中世界を音で体験する」という試みをあまり上手く体感できなかったというのが個人的な感想でした。
その他、「この世界では子供産むと母親は死んでしまう」という独特の設定が特にストーリーに生かされていなかったり、序盤で存在感のあるギャングや、キーアイテムとして登場するクリスタルが終盤、あまり存在感がなかったり、面白そうな要素が随所にある割には上手くいかされていない感じを受けました。
そもそも、この世界ではなぜ上に上がるものは異端者とみなされるのか、なぜアリスは記憶喪失になったのかという、ストーリ上、とても重要な要素についても分かったような分からないような...
...などと、少し後ろ向きなことも書きましたが、基本的には素直な若者達の冒険譚として楽しめる作品です。
最後にアリス達が辿り着いた「あの場所」で迎えるエンディングは、大きなカタストロフィーがあるものではないのですが、私としてはむしろあの落ち着いた結末が感慨深いと感じました。
ちなみに木下さんは「645~大化の改新・青春記~」の中でも光を求めて地上を目指すモグラの話をたとえ話で出しています。
闇に中から光を求めるというのは木下作品の何らかの共通テーマなのかもしれません。

ところで、大変失礼ながら、実は本作だけではなく、上で紹介した地底世界を扱った他の2作(「二分割幽霊綺譚」・「穴(HOLES)」)も、本作と同様に少々突飛な内容でついて行くのが難しい作品でした。
そのため、本記事の最初に「地底世界はラジオドラマ向きの舞台だ」と書いたのですが、まだ「地底世界ドラマの最高傑作といえるものには出会っていない!」と感じています。
地底世界がラジオドラマの舞台にあっているという推測は、同じように音が作品の印象を決定づける山岳冒険もの(例えば「北壁の死闘」)や海底もの(例えば「スフィア」)に良作が多いことからも確かだと思います。
青春アドベンチャーのスタッフの皆様には是非、また「地底世界もの」にチャレンジして頂きたいものです。
ちなみに私の青春アドベンチャー化のお勧め作品は小川一水さんの短編集「老ヴォールの惑星」に収録されている「ギャルナフカの迷宮」です。
この作品は広大な地下牢に閉じ込められた囚人が特殊な環境で工夫を重ねて社会を築いていく話しです。
ジメジメした地下迷宮で、精神的にも肉体的にもジメジメした人間同士のぶつかり合いを閉塞感満点に描いた、実にナイスな作品です(「老ヴォールの惑星」はこちらの記事で紹介しています)。
短編なので5話×15分くらいで十分、青春アドベンチャー化が可能だと思います。
皆様、是非、ご一読下さい。

出演は主役の3人組(ジェット、アンバー、クオーツ)は、小林高鹿さん、三島嘉崇さん、塩湯真弓さん。そしてヒロインのアリスは宮本裕子さん。。
小林さんはTOKYO-FMのラジオドラマ「NISSAN あ、安部礼司-BEYOND THE AVERAGE」の主人公安部礼司役で一部で(一部ってどこだ?)有名な方です。
そして語りは細井治さん。
やはり細井さんの軽妙なナレーションが本作の売りだと思います。



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