青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

すやまたけし短編集「帆船の森」より (サウンド夢工房)

作品:すやまたけし短編集「帆船の森」より
番組:サウンド夢工房
格付:B-
分類:多ジャンル 初出:1990年6月11日~6月15日(全5回)
原作:すやまたけし
脚色:すやまたけし
演出:江澤俊彦
主演:茅野イサムほか

すやまたけしさんは、雑誌「詩とメルヘン」にて、同誌の名を冠した賞を受賞して本格デビューされたメルヘン作家さんです。
Amazonで検索すると、「火星の砂時計」(1987年12月)、「ナーガラ町の物語」(1988年10月)、「帆船の森」(1990年1月)の3作品が出てきますが、いずれも絶版のようです。
ちなみに、すやまたけしさんご自身も2011年に亡くなられているようです…
時間の流れを感じますね。

さて、本作品は1話完結、全5回の形式で放送された短篇ラジオドラマ集です。
各回ごとに内容が異なるだけでなく、出演者も少しずつ異なります。
一応、1作品で主演し、2作品でナレーターを務めた茅野イサムさんが主演格でしょうか。
内容はファンタジー色が強く、幻想的もとても雰囲気です。
サウンド夢工房」は「アドベンチャーロード」の直接のあと番組ですが、「アドベンチャーロード」のような冒険色は強くなく、その少し前に放送されていた「ふたりの部屋」、「カフェテラスのふたり」に近いリリカルな作品の多い番組でした。
本作品はそういった「サウンド夢工房」の雰囲気を代表する作品のひとつです。

なお、各回の概要は以下のとおりです。
ちなみになぜか表題作の「帆船の森」がこのラジオドラマでは選ばれていません。

話数 タイトル ジャンル 格付け 出演者 粗筋 一言
1 地下鉄の鳩 幻想(日本) B- 茅野イサム、増田裕生、柳谷寛 帰宅する途中、地下鉄のホームから鳩が飛んできた。少年とトンネルの中を歩むと… まあファンタジーだねという程度の感想。長野に地下鉄があるのは知らなかった。
2 女優 職業 B- 八木昌子、茅野イサム 取り壊し予定の古い劇場で、女優がひとり語り始める。古き良き時代のことなどを。 女優が半生を語っているのか、それとも語り自体が台本なのか。雰囲気はある。
3 香りの伝言 幻想(日本) B 相沢恵子、八木昌子、茅野イサム 調香師の女性が初夏の夕暮れに嗅いだのはバラの香り。しかも悲しそうなバラの香り。 ちょっと短めでネットで10分程度。テーマ曲と丸山みゆきさんのトークで時間調整。
4 月光の落下傘 幻想(その他) B 増田裕生、内山森彦 父は戦争に行ったはず。しかし、ある夜、父は息子の前に落下傘で降下してきた。 予想通り救いのないオチ。しかし救いなんてなくて良い話ではある。
5 トランジスター・ラジオ 幻想(その他) B- 朝倉圭矢、七森美江、八木昌子、磯村千花子、松尾銀三 公園で古いラジオに電源を入れると、僕と彼女の前に不思議な番組が流れ出した。 ジャズの名曲「煙が目にしみる」をフィーチャーした作品。オチは予想どおり。

なお、上記の5作品の他に原作小説集では、「ハイウェイ・スター」、「オリーブ色のバス」、「泣き石」、「トナカイよ、永遠に」、「フレスタ旅行」、「風の呼び声」、「ガラス湖」、「エルドの斜塔」、「サーカス・タンカーの密航者」、「ミードの旋盤」、「水への帰郷」、「夏のクリスマス・ツリー」、「帆船の森」、「〇・五光年通信」の各作品が収録されているようです。

最後に、本作品で特筆すべきことを挙げると、「サウンド夢工房」が開始された1990年4月から毎回、番組のテーマ曲として流れていた「涙ながすその前に」を歌っている丸山みゆきさんが出演されていること。
といってもドラマ中に役を持って出演されているわけではなく、案内役(放送中では「お相手」、「ご案内」と表現)として、冒頭とエンディングに登場します。
特にエンディングでは、ごく短いながら各回のドラマの内容に沿ったテーマでのフリートークの時間があり、特に第3回ではドライフラワーについて熱く語っていらっしゃいました。


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テーマ:ラジオドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

無頼船長トラップ 原作:ブライアン・キャリスン(FMアドベンチャー)

作品:無頼船長トラップ
番組:FMアドベンチャー
格付:AA-
分類:冒険(山岳海洋)
初出:1984年4月2日~4月13日(全10回)
原作:ブライアン・キャリスン
脚色:田辺まもる
演出:伊藤豊英
主演:伊東四朗

一体、ジェームズ提督はなにを考えているのだ。
2800回もドイツ軍からの空襲を受けた孤立無援の島・マルタ。
最近ではろくな物資も入ってこないこのマルタと北アフリカの間を、非武装で、レーダーも無線も持たず、しかも機雷の情報もなしに1年2か月も往復を続けた船がいるというのか?
しかもトラップなる無頼漢が率いるその船はドイツアフリカ軍団の横流し物資で闇商売をしてきた旧式の小型貨物船だというのだ。
そんなことはありえないはずではないか。
しかし、一番信じられないのはそのことではない。
なんと提督は、ようやく拿捕したそのボロ船をそのまま英国海軍に編入し、北アフリカのドイツ・ロンメル軍団の補給路を断ち切る任務に就かせろというのだ。
しかもその責任者として、この私、ミラー大尉を任命するというのだ。

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四半世紀の歴史を誇るNHK-FMのエンターテイメント・ラジオドラマの帯番組「青春アドベンチャー」。
その歴史をさらにさかのぼると「FMアドベンチャー」という番組にたどり着きます。
NHK-FMで最初にタイトルに「アドベンチャー」と付けられたこの番組の、そのまた一番最初に放送された作品が、この「無頼船長トラップ」です。
すなわち現在放送されている青春アドベンチャーの各作品の源流、直系のご先祖様こそがこの「無頼船長トラップ」なのです。
放送されたのは1984年。
優に30年を超える昔の作品ですが、まさに「記念碑」というべき作品でしょう。

その「記念碑」で放送された作品を一言でいうならば、「戦争もの」+「海賊もの」。
舞台が第二次世界大戦中なので当然、人が死にます。
そして主人公のトラップは一応、「少佐」に任官して(させられて?)いますが、基本的な行動原理が拝金主義でアウトロー。
一言でいえば悪党です。
実は本作品が放送されたFMシアターはピカレスクロマンがかなり多い番組で、各作品の主人公を見ても、「泥棒」(「女たちは泥棒」)、「視聴率のために手段を択ばないTVプロデューサー」(「魔の視聴率」)、「テロリスト」(「ペテルブルグから来た男」)など、近年の青少年向けのぬるい青春アドベンチャーとはかなり雰囲気が違います。
当時はラジオドラマが大人の娯楽として成立していた最後の時代だったのかもしれません。
さらにいうなら、小説の世界においても、翻訳ものの冒険小説が輝きを保っていた最後の時代といえると思います。
いまは両者ともなかなか厳しい状況であるとは思いますが、たまには本作品のようなハードな作品も聴いてみたいものです。

さて、改めて本作品のストーリと登場人物を紹介しますと、まず主役は伊東四朗さんが演じるカロン号船長・エドワード・トラップ。
このトラップ船長は元々英国海軍の軍人だったが、「くそ海軍」に嫌気がさし出奔。
以降は裏の世界を歩いてきた男、という設定です。
ジェームズ提督に弱みを握られ、やむなく英国海軍に復帰し、カロン号を率いて対独戦に従事することになりますが、基本的に面従腹背。
一応、指令どおり通商破壊活動に従事はしますが、その過程で必要があれば味方の軍艦を砲撃したり、お気に入りの銀の皿の強奪を個人的に続けるなど、通商破壊活動というより実質的には海賊です。
海賊といっても「俺は海賊王になる!」などと息巻いている少年たちの楽しい海賊ごっことはわけが違います。
トラップは世界の正しさ、優しさを全く信じておらず、部下の命を無駄に危険にさらすことも躊躇しません。
とはいえ、トラップを「雇う」英国海軍側だって実は似たようなものです。
考えてみれば英国自体、エリザベス1世時代以降に大体的に私掠船(要は国家に承認された海賊)を活用して海洋国に伸し上がった国。
命令する方もされる方もどっちもどっちというところでしょう。
そして面白いのがトラップ船長の率いるカロン号。
何と最高速度8ノットという超鈍足の旧式船。
作中では「密輸貨物船」、「英国仮装軍艦」などとカッコよく呼ばれることもあるのですが、トラップやミラーなどの乗組員からは「虫食い腐れ船」、「くそったれ船」など言われ放題。
しかし、そのドンガメ・カロン号は、○○艦に偽装することによって巧妙にドイツ軍の目を欺き商船を襲撃していきます。
このまま順調に戦争が続いていくのだと思いきや、後半に物語は急転直下。
他の悪漢が登場することにより、「トラップ戦争ぼろもうけ会社」、「トラップ戦争商事」の「地」があらわれ、戦争ものではなく、やはり悪漢小説への急転直下していきます。
最後は少し楽しいエピローグまでついており、なかなか楽しめる展開でした。
ちなみに本作品の原作には「無頼船長の密謀船」、「無頼船長と中東大戦争」、「Crocodile Trapp」(日本未訳)、「Trapp's Secret War」(日本未訳)という続編があるそうですが、このラジオドラマは単体で完結した内容になっているので、恐らく結末は、脚本家・田辺まもるさんによるラジオドラマオリジナルなのではないかと思います。

と、ここまでこの作品の良いところを述べてきたのですが、残念なところがあるのも事実。

説明不足というか、何となく納得いかない展開が多いんですよね。
例えば、カロン号の乗組員たちが英国海軍への編入をどう納得したのか、逆にカロン号に乗り組んだ軍人たちが「海賊化」をどう納得したのか、といったあたりがよくわからない。
簡単にいうと4人の主要メンバー(船長のトラップ、副長のミラー(演:羽佐間道夫さん)、カロン号古参のウイリイ(演:内藤陳さん)、砲術班長のクロッカー兵曹長(演:石田太郎さん))以外の心情が描かれることがほとんどなく、いわゆる「空気」状態なのが物足りない。
また、肝心のエピローグにつながる「○○ポンドの○○がまだ○○に埋まっている」という事実が非常にわかりづらい。
言い換えればそのことについての伏線が少なすぎてエピローグがかなり唐突になってしまっているのも残念。
総じて、10分×10回という枠がやはり窮屈すぎて、脚本に無理があるよう感じます。
また、昔の洋画風のBGMも今となってはさすがに古めかしすぎるかな…
ただ、色々欠点もありますが、伊東四朗さん演じる悪漢・トラップの生きざまがある種の爽快感を感じさせます。
後の青春アドベンチャーでは、正統的な「海賊もの」として、「海賊モア船長の遍歴」(1999年)、「レディ・パイレーツ」(2012年)の2作品が制作されているのですが、本作品はそれとは少し毛色は違ったながら、なかなかの良作です。

さて、最後にここまで漏れている出演者のご紹介を。
上で書きましたが、準主役というか、語り手として実質的な主役とも言えるミラー大尉(副長)は要が吹き替えでは大御所声優であった羽佐間道夫さんが演じています。
トラップ役の伊東四朗さんが少しこもったような発声(これはこれでトラップにあっている)であるのに対して羽佐間さんは堂々たる美声です。
正直、最初の数話は気負い過ぎというか張り切り過ぎというか、その美声ゆえに少し浮いている感もありましたが、回を追うごとに溶け込んでいくのはさすがです。
FMアドベンチャーはどの作品も、羽佐間さんによる「えふえむ(リフレインでもう1度「えふえむ」)・あどべんちゃ~」という番組名のコールから始まるのですが、その第1作たる「無頼船長トラップ」にナレーション役で出演された際に収録された番組名のコールがそのまま使われ続けたということかもしれません。

そのほかジェームズ提督役の久米明さん、ヘレン少尉役の田島令子さんといったあたりが主要なキャストです。


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