青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

金魚姫 原作:荻原浩(青春アドベンチャー)

作品:金魚姫
番組:青春アドベンチャー
格付:AA-
分類:幻想(日本)
初出:2017年7月24日~8月4日(全10回)
原作:荻原浩
脚色:原田裕文
演出:佐々木正之
主演:窪塚俊介

ダメだ、眠れない…
恋人との収入格差を縮めるために転職した仏壇の販売会社は予想以上にストレスフルな環境だった。
しかも、彼女には逃げられ、結局、残ったのはストレスから来る不眠症だけ。
もはや睡眠導入剤が欠かせない。
転職しようにも転職活動をする時間も気力もない。
その日もようやく起き出したらすでに夕方だった。
だるくて仕方がないが、近所の祭り囃子に誘われて夕食は屋台で調達することにした。
そして出向いた祭りの屋台で彼はその金魚と出会った。
金魚すくいの水槽の中で水草に隠れていた一匹のリュウキン。
連れて帰ったそのリュウキンが家で女性に変化するとはそのとき彼は想像だにしていなかった。

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本ラジオドラマ「金魚姫」は、2016年に「海の見える理髪店」で第155回の直木三十五賞(いわゆる「直木賞」)を受賞した荻原浩さんの小説を原作とするラジオドラマです。
青春アドベンチャーでは2007年にすでに「僕たちの戦争」、「押入れのちよ」の荻原さん原作の2作品をラジオドラマ化していますので、いわば「凱旋帰国」の趣があります。

さて、内容を紹介しますと、2007年にラジオドラマ化されている2作品と比較するならば、どちらかといえば本作品は「押入れのちよ」寄りの作品です。
すなわち、本作品も「押入れのちよ」も、一種の「怪異」が中心にある作品なのですが、怪異といってもホラー作品に分類できるほど、怖がらせること自体を目的の作品ではありません。
何せ本作品のヒロインは人の姿をした金魚(あるいは金魚になった人間)で、しかも絶世の美女。
実は、本作品でも序盤にはホラーチックな音響効果が施されたセリフもあったりするのですが、すぐに有名CMネタ(NHKだからか微妙に名前が変えてあるが元ネタは明らか)のセリフが飛び出したりして意外と明るい展開が続きます。
とはいえ、このまま明るい展開が続くのかというと…
本作品、オープニングテーマ曲は少年少女向きのタイムスリップものででも使われそうな明るい曲なのですが、エンディングテーマは打って変わった静謐でダウナー系の曲。
このテーマ曲の2面性は作品自体の2面性を象徴しているようで、恨みや心残りといった人間心理の負賦の側面を底流に孕みながらストーリーは進行していきます。
そもそも、主人公が仏壇・仏具を扱う会社に務めているということ自体が、単なるブラック企業ぶりを象徴しているだけではなく、作品展開の方向性を暗示している…というか、実際、作劇上の重要要素になっています。
なかなか一筋縄ではいかない作品です。
個人的には、後半に解き明かされるリュウの目的(本人も忘れている)が全く予想外で虚を突かれたのも印象的です。
ただ、謎解き結果が少し唐突な印象を受けたのも確かで、もう少し伏線があるともっとよかったように感じました(どこか前半で主人公の「名字」が提示されていましたっけ?)。

さて、出演者に話しを移しますと、まず主役の江沢潤(えざわ・じゅん)を演じているのは俳優の窪塚俊介さんです。
同じ俳優の窪塚洋介さんの弟さんとして有名ですが、慶應義塾大学卒業、劇団青年座所属で、多くの舞台にも出演されており、とても地に足の付いた活動をされている方のようです。
本作品は、江澤潤のモノローグが非常に多くを重要な作品であり、窪塚さんの安定した演技が作品をとても聞きやすいものにしていると思います。

また、人間になるとなぜか中国風の赤い衣装をまとっている(なぜかは実は作品冒頭から暗示されているのですが)美女・リュウを演じるのは女優の梅舟惟永(うめふね・ありえい)さん。
こちらは早稲田大学在学中に演劇サークルを始めたバリバリの舞台女優さん。
2015年にFMシアターで放送された主演作「夜市」もホラー系の作品ですので、すっかりこの手の作品の常連になりつつあります。
ちなみに梅舟さんの特技は中国語(北京語)だそうですので、それも本作品への起用理由なのだと思います。
また、第2ともヒロインいえる潤の元恋人・亜結(あゆ)は、「93番目のキミ」の好演が印象的な杉本有美さんが演じています。
なんと「幻想郵便局」に続き、○○役です。
○○はネタバレを防ぐための伏せ字です、ご容赦を。
でも「幻想郵便局」を出した時点でバレバレかな。

さて、大人向けのファンタジーとしてなかなかの良作だった本作品。
大人向けといっても、例のシーンがあったから言っているのではありません。
殺伐とした現実社会に立脚していながら、あくまで叙情的な雰囲気が大人向きだろうと思います。
(とはいえTV内の音声という位置づけであるにしろえ、あんなにちゃんとanan言うシーンが入った青春アドベンチャー作品がかつてあったでしょうかね)。


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