青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

笑う20世紀パート3 作:藤井青銅(青春アドベンチャー)

作品:笑う20世紀 パート3
番組:青春アドベンチャー
格付:C+
分類:コメディ
初出:1996年10月21日~11月1日(全10回)
作 :藤井青銅
演出:松本順
主演:信太昌之(その他下表のとおり)

全部で6作品制作された藤井青銅さん脚本の短編オリジナルラジオドラマシリーズ「笑う」シリーズの第3弾が、この「笑う20世紀 パート3」です。
この「笑う」シリーズとその後継作品であった「踊る」シリーズは、いわゆる「干支シリーズ」と並んで、青春アドベンチャーにおける藤井青銅さんの代表的な作品です。
しかし、時事ネタを扱っていたことから全く再放送されなかった「干支シリーズ」と違って、「笑う」シリーズは頻繁に再放送されました。

さて、本作品も前作前々作と同様に、少しシニカルなコメディ作品になっていますが、毎回、嘲笑に近いシニカルな笑い声で終わっていた前作までと異なり、明るいテーマ曲で締める構成になっており、全体的に陽気で明るい雰囲気の作品になっています。
これは演出が前作までの川口泰典さんから、松本順(すなお)さんに変わったことが大きく影響しているのだと思います。
そして演出の交代は出演者にも影響を及ぼしています。
前作までは、前田悠衣さんや、山西惇さん、海津義孝さんといった、いかにも川口さん演出作品らしい方々でしたが、この「パート3」の出演者は、中村元則さん、伊沢勉さん、信太昌之さん、横田砂選さん、島津冴子さん、小椋あずきさん、島田沙羅さん、峯尾進さんの8人であり、前作までの出演者は一掃されています。

それでは、各回の内容をご紹介いたしましょう。
いつもどおり、各話の主演俳優、格付け、粗筋、一言を表にしてあります。

話数 タイトル 主演 格付け 粗筋 一言
1 抗菌の乱 伊沢勉 C+ 抗菌グッズで部下の好評を得た部長。更なる若手のやる気醸成のために取った策とは。 徐々にエスカレートする藤井さんお得意のパターン。タイトルは黄巾の乱のパロディ。
2 観光ごっこ 信太昌之 B 南国・ハニャモネラ共和国の新婚旅行にやって来た二人がトラブルに巻き込まれるが。 あまり笑えないが、ひょっとしたら何らかの真実を鋭く指摘しているのかも?知れない。
3 OEM 信太昌之 B- ライバル会社のクラクションを製造することになった。釈然としない社員は… わかっていても過剰だと笑ってしまう。ところで確かにOEMは何となく釈然としない。
4 格安物件 信太昌之 B- 格安のマンションを手に入れた男。しかし夜になると何かが聞こえてきた… 「住専」などの言葉に時代を感じる。ただし社会批判色はない単純なコメディ
5 マルチメディア万歳 伊沢勉 B- パソコンにもFAXにもついて行けない。そんな中年サラリーマンが立ち上がった? 会員が増えた時点でオチが読めるなあ。
6 激安の秘密 中村元則 B なぜか終わらない携帯電話の安売り。その背後には、ある国家的な陰謀があるのだった。 本作から20年経つのにまだ安売り競争は続いている。1人1台には収まらなかったが。
7 カメレオン男 信太昌之 C+ その男の特徴はこれといった特徴がないこと。しかしそれは特別な能力でもあったのだ。 面白い設定だけどオチがイマイチ。
8 天秤の男 伊沢勉 B- 幸不幸が交互に起こる男。大きな商談を前に、確実に不幸になっておきたいところだが。 予想どおりのオチだが意外と楽しめた。信仰はなくてもジンクスは気にしちゃうよね。
9 最終面接 伊沢勉 B- 科学的に善人・悪人を判断できる機械を作った会社。早速、新人採用に活用したのだが… 予想どおりの展開で、びっくりするようなオチもなくおわってしまった。
10 記念日ころがし 中村元則 C そうだ!耳かき専門メーカーのわが社も記念日を造って売り上げアップを図ろう! これもあまりオチが印象に残らない。アンダルシアの下りは面白かったが。

「笑う20世紀」第1弾では女性が主演する作品もあったのですが、第2弾はすべて男性が主演。
この第3弾も女性が主役並みに活躍するのは、第9話「最終面接」の島津冴子さん(「絶句」、「家族ホテル」、「カムイの剣」など)くらいです。
脚本家の藤井青銅さんが男性なので当たり前といえば当たり前ですが、「不思議屋」シリーズ「ライフ」シリーズのように女性を含めた多数の脚本家が競作するアンソロジー作品との違いが、こういうところにも表れていると思います。

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タイムライダーズ 原作:アレックス・スカロウ(青春アドベンチャー)

作品:タイムライダーズ
番組:青春アドベンチャー
格付:AA+
分類:タイムスリップ
初出:2017年4月3日~4月21日(全15回)
原作:アレックス・スカロウ
脚色:小松與志子
音楽:山本清香
演出:真銅健嗣
主演:吉永拓斗

1912年、沈みゆくタイタニック号Eデッキで老人の声が響き渡る。
「君の命は残り4分。答えろ、生き延びたいか。さあリアム、決断の時だ。私に付いてくるならこの手を掴め。」
2011年、ボストンから西海岸へ向かう旅客機の中で老人はマディに語り掛ける。
「数分後、この旅客機の乗客全員が死ぬ。だが、君だけ生き延びることを選択できる。さあ手を握り給え、早く。」

沈みゆく豪華客船から、墜落する旅客機から、ムンバイの業火の中から、メフィストフェレスの手にひかれて3人の若者が集められた。
彼らの新しい人生の舞台として用意されたのは2001年9月10日。
翌日に起きる「あの事件」があまりに人々の記憶に鮮烈に残ったために、逆に人々の記憶から抜け落ちてしまった、その前日。

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本ラジオドラマ「タイムライダーズ」は、イギリスの作家アレックス・スカロウの少年少女向けのタイムトラベルファンタジー?を原作とする作品です。
原作小説は、日本語版だけでも「タイムライダーズ」、「タイムライダーズ 紀元前6500万年からの逆襲」、「タイムライダーズ 失われた暗号」の3作品が発表されていますが、母国イギリスでは合計9作品(完結)の長編シリーズなのだそうです。
昨年2016年末に「元禄の雪」で藤井靖さんの「白狐魔記」が完結したのですが、それに代わる真銅健嗣さんの新シリーズの始まり…だったらいいな。

さて、本作品は典型的なタイムトラベルSF、それも主人公たちがいわゆる「タイムパトロール」役になる古典的なSFです。
この種の作品は星の数ほどあるわけで、本作品の2作品前に制作された「つばき、時跳び」もタイムトラベルものでした
しかし、ごく狭い世界を舞台とした「つばき、時跳び」とは異なり、本作品は、有名な事件が再現されるわくわく感、歴史が改変され世界が変わってしまう緊張感、それに時間移動を利用したトリックなどを主体とした王道のタイムトラベルものです。
ただ、シリーズものの第1作という位置づけから、序盤を「タイムライダーズ」結成までのエピソードに割かざるを得ず、本編の冒険は中盤以降となります。
そのためか、冒険の舞台となるのは第2次世界大戦末期と比較的身近であり、スケール感はあまりありません。
ただ逆に身近であるが故の緊張感もあり、タイムパトロールものらしい緊張感にあふれた良作になっています。

演出面でも、小松與志子さんのナレーションが全くない脚本を、セリフと効果音だけでうまく表現していることが印象的です。
セリフについて出色なのは、「タイムライダーズ」を招集する謎の男、冒頭の紹介では「メフィストフェレス」と比ゆ的に表現しましたが、特に序盤はどうにも胡散臭いフォスターを演じる山崎たくみさんの声。
作品中でフォスターの容姿を説明するナレーションは一切ない(フォスター自身が「ただの老人だ」いうのが数少ないヒントでしょうか)のですが、この声だけで十分怪しい雰囲気が伝わってしまいます。
ナレーションが全くない以上、声質やしゃべり方でキャラクターを表現することは必須。
はっきりいってかなり過剰な演技ですが、この作品にはこれくらいでちょうどいいと思います。
それにしても山崎さんの声を聴いていてふと思ってしまったのは、「(若くして亡くなられた)塩沢兼人さん似ているなあ」ということ。
常に似ているわけではないのですが、時々、「すごく気取った声を出しているときの塩沢さん」とよく似た雰囲気の声になります。
調べてみると、山崎たくみさんは塩沢さんの死後、その持ち役の多くを引き継がれた方とか。
NHK-FMはアニメ畑の専業声優さんをあまり使わないのですが、塩沢さんは1980年代から1990年代までずいぶんとNHK-FMに重用されていました。
妖精作戦」、「サラマンダー殲滅」、「マージナル」、「オルガニスト」などなど懐かしい作品が目白押しです。
山崎たくみさんのお声を聴いていて何だかとても懐かしい気分になってしまいました…
懐かしいといえば、妙に脱力系のエンディングテーマもちょっと懐かしいように感じました。
アドベンチャーロード時代にはこういったちょっと軽い感じのエンディングテーマも多かったように記憶します。
本編とはちょっと雰囲気が違う曲を掛けることによってちょっとしたクールダウンの効果があったような気がしますね。
特に最終話は、最後の場面から出演者紹介にうまく音楽がつながっておりなかなか印象的でした。
本作品の音楽を担当している山本清香さんがそこまで意識していたかはわかりませんが。

さて、出演者の話に戻りますと、その他の出演者さんも、礼儀正しく責任感の強い元客室係リアム・オコナー少年役の吉永拓斗さん(青春アドベンチャー初主演!)、世慣れたプログラマー(趣味はハッキング)のマディ・ガーター役の占部房子さん(「泥の子と狭い家の物語」、「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」など)などキャラクターの色分けが見事。
特にまっすぐな性格で仲間思いでもあるリアムが主人公であることが、吉永さんの素直な声と相まって、この作品をとても気持ちの良いものにしていると思います。
強いて言えば、マディ役の占部さんと、インド人少女(2026年出身)サリーナ・ビクラムを演じる磯部莉菜子さんの声としゃべり方にもっとはっきりとした差を付けてよかったような気はします。
ただ、残念ながらこの「タイムライダーズ」の3人の中では、「実行役」で出番の多いリアムと、他のふたりの間にはかなりの差がありました。
キャラ付がはっきりしてくるのは第2作目以降なのかも知れないと思うと、次作を期待してしまうところです。
そして、マディとサリーナがいまひとつ印象が強くないのと対照的に、本作品で存在感が強いのは様々なオジサマ方。
先ほど述べたフォスターがまずそうなのですが、他にも、「ベルリンの秋」のシュタイナーや「封神演義」の聞仲が懐かしい大友龍三郎さんが演じた「支援ロボット・ボブ」が準主役といってもよい活躍だったことは「肯定」せざるえをえないところでしょう(笑)。
そのほか、これもおじさんである敵役コンビ、石橋徹郎さん(「晴れたらいいね」の佐治軍医、「獅子の城塞」の次郎左)が演じたクレイマー博士と、信太昌之さんが演じたカールのドラマも本作品のもうひとつの聴き所といってもよいと思います。
そういえば、実在の人物であるアドルフ・ヒットラーを演じた酒向芳さんも、「闇の守り人」のジグロ役で印象的な方でした。
この方面ではずいぶんと豪華な配役です。

それにしても全15話を聴き終わって残った最大の謎は、そもそも「タイムライダーズ」とは何なのかということ。
作中ではスポンサーや設立経緯などは全く明かされませんでした。
役割の重要さから言って、国家規模、あるいはそれ以上(全人類規模)のバックはあってもおかしくない割には小規模な?組織。
この辺は第2作目を聴けば明かされるのでしょうか。
やはりこれは2作目を期待せざるを得ないところです。


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