青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

スピリット・リング 原作:ロイス・マクマスター・ビジョルド(青春アドベンチャー)

作品:スピリット・リング
番組:青春アドベンチャー
格付:AAA-
分類:伝奇
初出:2004年8月2日~8月20日(全15回)
原作:ロイス・マクマスター・ビジョルド
脚色:富永智紀
演出:吉田努
主演:高木珠里

モンテフォーリア一の金細工師にして偉大な魔術師だった父プロスペロ・ベネフェルテは教えてくれた。
「スピリット・リング」とは、死者の霊を生きている者の奴隷にする禁断の黒魔術だと。
そんな黒魔術を使い、詐術と裏切りで故国モンテフォーリアを乗っ取ったロジモ公フェランテに従うわけにはいかない。
しかし、フェランテの手の者の追跡を受けた父はあっけない最期を遂げ、遺体さえもフェランテの手のものに奪われてしまった。
このままでは、スピリット・リングの力によって、父自身がフェランテの奴隷にされてしまう。
こうなったら、この不肖の娘フィアメッタが父の敵を打って、故郷に平和を取り戻すっきゃない!
私だってもう16歳、単なるおてんば娘じゃない。
父の真似事程度なら魔術だって使えるし、特に炎の魔術は結構、得意だ。
でも頼れる人はひとりもいない。
どうしたらいいだろう。

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ネビュラ賞も受賞しているアメリカのSF作家ロイス・マクマスター・ビジョルドの手によるファンタジー小説を原作とするラジオドラマです。
ファンタジー小説といっても舞台は完全な架空の世界ではなく、15世紀(いわゆるルネサンス期)の北イタリアということになっています。
ただし、「モンテフォーリア公」も「ロジモ公」も聞いたことがないので、実在の歴史の中に架空の舞台を織り込んだ、青春アドベンチャーでいえば「ゼンダ城の虜」に似たタイプの舞台設定のようです。
ただし「ゼンダ城の虜」があくまで知恵と力で道を切り開いていく現実的な物語であるのに対して、本作品は魔術が普通に存在するパラレルワールド的な設定になっており、そういう意味で本作品にもっとも近い青春アドベンチャー作品は「仮想の騎士」なのではないかと思います。

さて、NHK-FMの青春アドベンチャー公式ホームページでは本作品を「冒険ファンタジイ好きのリスナーに送る、夏休み特別版青春アドベンチャー」と称してます。
まさにそのとおりのストーリーで、アクションあり、魔法あり、恋ありの冒険物語です。
また、第1回のほとんどすべてを舞台設定と登場人物の紹介に使う構成や、印象的なオープニング、それに効果的なSEと派手な音楽など、とにかく娯楽作品として特化しています。
またナレーションやセリフも、訳者の梶元靖子さんの功績か、脚色の富永智紀さんの功績かわかりませんが、翻訳ものとは思えないこなれた日本語で、聴いていてストレスを感じさせません。
この辺、いかにも翻訳調だった「らせん階段」などとは大きな違いです。
出演者もなかなかこの作品にあった配役であり、明るく元気な主人公フィアメッタを演じた高木珠里さん(2016年の「文学少年と運命の書」ではまた違ったタイプの役を演じられました)といい、どこか胡散臭い父親のプロスペロ役の塩屋浩三さん(声優・塩屋翼さんのお兄さん)といい、この明るく楽しい娯楽作品にぴったりです。
また、ベテラン声優の小山茉美さんもこういうナレーションは抜群にうまいです。
小山さんといえば今までに紹介した「オルガニスト」と「砂漠の王子とタンムズの樹」の両方とも当ブログではAAAクラスの格付けをしています。
サハラの涙」や「P」など今一つの作品もありますが、小山さん出演作品には面白いものが多い印象です。

という訳で、本作品には深い哀感も、涙がちょちょ切れるような感動も、社会的な問題提起も何もありません。
主人公の女の子はあくまで明るく前向き、相手役の男の子(トゥール=三島嘉崇さん)は気弱だけど責任感の強い好青年、主人公のあこがれの彼(ウーリ=東地宏樹さん)は勇敢で誠実、協力してくれる司祭(池田鉄洋=高橋長英さん)は清廉潔白な人格者、そして悪役(フェランテ=小須田康人さん、ニッコロ=田鍋謙一郎さん)はあくまで悪いやつ。コテコテです。
さらに架空の生物であるコボルトを演じるのがアニメ端の声優さんである半場友恵さんであるなど細かいところまで随分と「狙った」配役です。
でも良いのです。
井之頭五郎(孤独のグルメ)風に言えば、「俺にお似合いなのはこういうもんですよ。」なのです。
青春アドベンチャーは娯楽作品の枠であり、そうである以上、素直に楽しめるのがまず第一。
作者や制作者に何か伝えたいメッセージがあるとしても、それを本当に伝えたいのであれば、まずは娯楽作品としてきちんと成立させるのが先決です。
この観点から、私は今でも宮崎駿監督の最高傑作は「ルパン三世 カリオストロの城」だと思っていますし、庵野秀明監督の最高傑作は「トップをねらえ!」だと思っています。
本作品はそんなことを考えた作品でした。
なお、娯楽作品としてみても、本作品は勢いだけの作品と思いきや、序盤に提示された「ウーリそっくりのペルセウス像」、「ピア卿と清めの塩の一幕」、「トゥールは元鉱山技師」、「トゥールが行商人と同行して登場すること」などがすべてちゃんと伏線になっているなど、意外とよく考えられた構成であることにも気がつきます。




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ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ 原作:滝本竜彦(青春アドベンチャー)

作品:ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ
番組:青春アドベンチャー
格付:B
分類:幻想(日本)
初出:2002年4月1日~4月12日(全10回)
原作:滝本竜彦
脚色:北阪昌人
演出:岡本幸江
主演:原田篤

彼女に出会ったのは、ある冬の夜。
友人との賭に負けて、一人で「特上霜降り肉」を買いに行かされた帰りのことだ。
彼女は、小雪の舞う林の中の獣道、ケヤキの根元で、名門中央高校の制服を着て体育座りをしていた。
シュールな光景だ。
しかし、その後に展開されたのは、シュールというより過激な光景。
チェーンソーを持って襲いかかる怪人と、木刀を振りかざしセーラー服の裾を翻して怪人に立ち向かう美少女。
沈んだ毎日を過ごす高校生・陽介の日常が急展開を始める。

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本作品「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」は、「NHKへようこそ!」などで人気のライトノベル作家・滝本竜彦さんのデビュー作を基に、NHK-FMの「青春アドベンチャー」で放送されたラジオドラマ作品です。
原作は2008年には市原隼人さん主演で映画化もされています。

さて、フリー百科事典wikipediaを見ると、青春アドベンチャーは「原作にライトノベルや少年少女向け文学作品を多数起用している」と書かれています。
しかし、詳細に見てみると、児童文学や漫画、比較的若年層向きの小説を原作とする作品が多いのは確かですが、いわゆる「ライトノベル作家」の作品はほとんどありません。
どちらかというとまだ「ライトノベル」という用語がなかった時代、青春アドベンチャーではなく、前身番組の「サウンド夢工房」や前々身番組の「アドベンチャーロード」が放送されていた頃の方が、ライトノベル的な作品は多かったように思います(例えば「なんて素敵なジャパネスク」や「西風の戦記)。
一方、青春アドベンチャーになって以降(1992年以降)の作品で、今までにこのブログで紹介した作品から探すと、「超能力はワインの香り」(1992年・藤井青銅さん原作)、「これは王国のかぎ」(2000年・荻原規子さん原作)、「バッテリー」(2000年・あさのあつこさん原作)、「イカロスの誕生日」(2000年・小川一水さん原作)くらいしか見当たりません。
しかも、これらの原作者は皆さん、あまりライトノベル作家として認知されているとは言いがたい。
作家面で言うと2014年放送の「93番目のキミ」の原作者である山田悠介さんは、かなり「柔らかい」作家さんですが、ライトノベル作家という言葉から受けるオタクっぽさはあまり感じません。
また、「ダーク・ウィザード~蘇りし闇の魔導士~」も電撃文庫というライトノベルレーベルから原作が発行されてるものの、原作者の寺田憲史さんは、ラノベ作家とは少しニュアンスが違う方のようです。
そういった青春アドベンチャーの実情において、本作品「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」は明確にライトノベル原作と言って良い、数少ない作品です。

さて、空を舞うチェーンソー男と美少女・雪崎絵理との深夜の決闘を目撃した主人公・山本陽介(演:原田篤さん)ですが、「今の出来事は一体何だったのか」と戸惑いつつも、これを運命の出会いと位置づけて、絵理へのアプローチを開始します。
その結果、チェーンソー男の正体について特段の説明もないまま、昼は学校、夜は決闘の日々が続いていきます。
絵理の主な武器はナイフ、陽介はカメラの三脚。
チェーンソー男はもちろんチェーンソー。
チェーンソー男の登場とともになぜか常人離れした運動能力を身につけたらしい絵理ですが、それにしても毎日、激戦、苦戦の連続。命がけです。
日常のすぐ隣に非日常が存在し、しかもその非日常の理由について理屈っぽい説明がないあたりが、ライトノベルっぽい展開です。
ただ、このラジオドラマは、NHKらしく真面目に「青春」に向き合ったような作りであるからか、ややシュールな要素はあるものの、全般としてあまり山がなく淡々と話が進んでいくように感じました。
あくまで個人的にですが、SEや演技など、もっと非日常っぽく、敢えて言えばアニメっぽく作った方が面白かったのではないかと感じました。
アニメっぽくといえば、本作品でヒロイン・絵理を演じる占部房子さんは「泥の子と狭い家の物語」や「闘う女。」、「僕たちの宇宙船」でも、絵理と似たような陰のある少女を演じていらっしゃいますが、本作品では「おりゃあ」というかけ声に象徴されるように少し生々しすぎるように感じました。
占部さん、本作放送時点で24歳のハズなので、決して年齢的に無理があるわけでもないんですけどね。
やっぱり現実離れした美少女が戦うことにこの作品の面白みがあるのですから、一見、楚々と(あるいは淡々と)していて欲しいものです。
勝手な願望でごめんなさい。

また、本作品の脚本はTOKYO-FMの「NISSAN あ、安部礼司」やNHK-FMの「AKB48の“わたしたちの物語”」といったラジオドラマの脚本で有名な北阪昌人さんです。
青春アドベンチャーでは、オリジナル脚本としては「ラジオの前で」を、原作付きの作品の脚色としては「エンジェル」と本作品を担当されています。
これも個人的な感想ですが、あくまで日常の出来事を扱った「ラジオの前で」が出色の出来であるに対して、非日常的(あるいは超常的)なテーマの残りの2作品はいまひとつぱっとしません。
この辺、作品と脚本家さんとの相性もあるのかも知れませんね。





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