青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

あなたがいる場所 原作:沢木耕太郎(青春アドベンチャー)

作品:あなたがいる場所
番組:青春アドベンチャー
格付:B
分類:日常
初出:2014年3月17日~3月28日(全10回)
原作:沢木耕太郎
脚色:原田裕文、井出真理、オカモト國ヒコ、永津愛子、蓑輪京子
演出:小見山佳典
主演:国広富之ほか(詳細は下表のとおり)

沢木耕太郎さんといえば「深夜特急」、「テロルの決算」、そして「一瞬の夏」。
主にスポーツや旅をテーマにしたノンフェクション、ルポルタージュで有名な方ですが、本作品は沢木さんの初の短編小説集「あなたがいる場所」を原作としたラジオドラマです。
「直球ど真ん中の作品は採用しない」という青春アドベンチャーの方針(などというものがあるのかどうか知りません)を忠実に守った、微妙にずれた原作選択ですね。
青春アドベンチャーでは「ふたつの剣」や「闘う女。」のようにスポーツノンフェクションを原作にしたラジオドラマの実績もありますし、沢木さんでつくるならもう、ノンフェクションで良い気がしてならないのですが...

さて、本作品は公式ホームページの紹介によれば、「深い孤独の底に一筋のひかりが差し込むような物語」であるけども、「沢木耕太郎は、この短編をどんな幼い子が読んでも分かるような“わかりやすさ”を主眼に書いたという。」とされています。
実際、少年少女が主人公の回も多いのですが、実際はほぼ大人向けの内容。
子供にはわからない、と言ったら言い過ぎですが、少なくとも、青春アドベンチャーに少年ジャンプ的な展開を求める層には全く訴求しないだろうと思われる作品です。
これは別に持ち上げているわけでも否定しているわけでもなく、ただ単にそういう作品だといっているだけです。
個人的には数ある作品の中にはたまにはこのような作品も十分にアリだと思っています。
ただ、本作品の前に放送されたのが「幻坂」で、さらにその前が「秘密の花園」。
さすがに3作品も大人向きというか、地味というか、つまりはアドベンチャーではない作品が並ぶと、少しやりすぎのような気もしました。
青春アドベンチャーは基本的には娯楽作品の枠であってほしいと思っていますので...

さて、本作品の各回の概要とは以下のとおりです。
第5回・第6回だけが続きの作品になっており、全9作品の小品の集合体です。

話数 タイトル 脚色 主演俳優 粗筋 一言
1 銃を撃つ 永津愛子 岸田茜・富岡英里子 中学受験に失敗した少女がバスの中で出会ったのは、受験以来疎遠になった友達だった。 自然と知人をランク付けしてしまうのは、大人も子供も同じか。
2 迷子 蓑輪京子 坂口湧久・日下由美・稲葉菜月 夕方の公園で見知らぬ幼い少女に出会った少年。家まで送るべきか、無視すべきか。 大人は子供を相手にするとなぜか自分の考え方を押しつけてしまう。自省せねば...
3 虹の髪 オカモト國ヒコ 浅野雅博・富岡英里子 キャリア官僚の生活におけるただ一つの光は、毎朝バスで見かける女性の髪だった。 一歩間違えると痴漢。でも確かに通勤電車で美人を見かけると1日幸せですよね。
4 ピアノのある場所 永津愛子 渡辺優奈 少女が福島に行くことになったのは、お父さんが働かなくなってしまったからだった… 女の子の気持ちもよく分かるが、「ガソリンが切れる」と父親は当然のごとく捨てられるというのも切ない。
5、6 天使のおやつ(前・後編) 原田裕文 国広富之・清水詩音 娘が幼稚園のすべり台から落ちたと連絡を受けて駆けつけた父親。元気そうな娘を見て安心するが… きつい。きつすぎる。しかも前編から2日を空けて後編が放送されるスケジュールがしんどかった。本当に「一筋の光」しかない話しだが、光は光か。
7 音符 井出真理 金沢碧 不倫の末に結ばれ長年連れ添ってきた夫婦。夫の植えたあじさいを見る妻の気持ちは。 介護が大変なのは分かるが、“これ”を他人が肯定するような作品はどうなんだろう。
8 白い鳩 井出真理 本城雄太郎 少年が学校から帰ると父親から呼び出される。「お前は学校でいじめとしているのか」 この父親は子供に何を伝えたかったのだろう。自分は所詮カラスだということか。
9 自分の神様 蓑輪京子 富岡英里子・手塚祐介 不倫相手との関係を清算するために神社にお参りをした女性の前に青年と犬が現れた。 今回の9作品の中で最も微温的な作品。特段の感想なし。
10 クリスマス・プレゼント オカモト國ヒコ 岡本富士太 男が息子へ送る荷物を詰める。他界した妻と遠い所にいる息子との日々を思い出しながら。 “一筋の光”が過去の思い出だけという、これもなかなかに切ない話。

作品ごとに主演俳優はバラバラなのですが、ひとりを挙げるとするならば、唯一前後編で放送された「天使のおやつ」で主演された国広富之さんでしょうか。
1970年代から1980年代に一世を風靡された俳優さんで、青春アドベンチャーの前々身である「アドベンチャーロード」では「遙かなる虎跡」(1989年)で主演されていました。
四半世紀を経て、すっかり老成されたお声と演技をお聴きできるのは嬉しい限りです。

また、第8話主演の本城雄太郎さんは、2009年放送の「世界でたったひとりの子」で主演された頃はいかにも子役といった感じの声でしたが、2013年の「泥の子と狭い家の物語」や「僕たちの宇宙船」ではすっかり青年の声になっていました。
本作品で(失礼ながら)上手くなったなあと感じます。


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あたしの嫌いな私の声 原作:成井豊(青春アドベンチャー)

作品:あたしの嫌いな私の声
番組:青春アドベンチャー
格付:A
分類:幻想(日本)
初出:1992年6月8日~6月19日(全10回)
原作:成井豊
脚色:成井豊
演出:川口泰典
主演:土屋智子

あたし、君原友里(ユーリ)は声優学校の1年生。
女らしくない自分の声が嫌いだったけど、この声を活かせる職業である声優を見つけてからは声の仕事で一人前になりたくて頑張っているところ。
ある日、代役で舞い込んできた「メアリーポピンズ」の出演者の顔合わせに出向いたときに、あたしとそっくりの声を持つ音楽家の波多野さんに出会ったの。
波多野さんは冷たそうだけどとても綺麗な男性。
だけど、本当はそれだけではないの。
波多野さんが話すと、あたしには表向きの波多野さんの声と同時に、感情むき出しのもう一つの声が聞こえてくる。
でも、そのもう一つの声はあたしにしか聞こえないみたい。
冷たく憎悪の込められた、あたしそっくりの声を聴いていると、とても不安になる。
波多野さんって一体、何者なんだろう。

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演劇集団キャラメルボックス所属の劇作家・成井豊さん作のラジオドラマです。
番組名が「青春アドベンチャー」となってから5作品目の作品で、今まで紹介した青春アドベンチャーの作品の中では最も初期の作品です。
ちなみに、本作品の放送中では「作、成井豊」とアナウンスされますが、実はこのラジオドラマの前年に本ラジオドラマの原作にあたる成井豊さんの小説「あたしの嫌いな私の声」が発表されていますので、このブログでは「原作:成井豊、脚色:成井豊」という表記といました。
既に紹介済みの作品では「愛と青春のサンバイマン」(藤井青銅さん)、「昔、火星のあった場所」(北野勇作さん)、「恋愛映画は選ばない」(吉野万理子さん)を同じような表記にしています。
いずれの作品も、原作者が作家であると同時に脚本家又は役者でもあることから、実現できた例だと思います。
なお、本作品は後に成井豊さん自身の手で舞台劇「嵐になるまで待って」として舞台化もされています。
また、更に余談ながら青春アドベンチャーではもう1作品、成井さん原作の「サンタクロースが歌ってくれた」もラジオドラマ化されていますが、こちらは別の方が脚色されています。

さて、本作品は「声」がテーマの作品です。
声優志望ながら自分の声にコンプレックスを持つユーリ、声に特殊な力がある波多野、そして声を持たない波多野の姉・雪絵。
この3人に、ユーリの思い人である幸吉(演:渡辺いっけいさん)が絡んで、ストーリーが進んでいきます。
そしてその重要な要素である「声」に関する本作品の最大の特徴は、主人公ユーリとその敵役である波多野の声を、両方ともに土屋智子さんが演じていることだと思います。
ユーリと波多野は作中で何度も「声がそっくり」と他の登場人物から評されており、実際、同一人物が演じているので同じ声なのですが、土屋さんは波多野を演じるときは宝塚の男役の様なトーンで、ユーリを演じるときは女性っぽいしゃべり方で演じているため、聴いていて混乱することはありませんでした。
というより、ひょっとしたら言われないとすぐには同一人物が演じていると分からないくらい、雰囲気を変えていらっしゃいます。
ネットで検索しても今ひとつ土屋さんの来歴がわからないのですが、なかなかの熱演です。
あと、上に書いたとおり波多野の姉・雪絵はしゃべれないという設定なのですが、本作品では雪絵が紙に書いた文章を読むという形で前田悠衣さんが演じています。
悲しみの時計少女」、「五番目のサリー」などの名演が強烈な印象を残している前田さんですが、本作品でも終盤にしか登場しない前田さんの演技がとても効いています。
さすがは青春アドベンチャーを代表する常連出演者さんです。
ちなみに、雪絵との会話シーンでは、文章を書いてメモを手渡す都度に、メモを切り取る効果音が入ります。
この音だけで筆談中であることが自然にわかるだけでなく、一定のリズムとドキドキ感が生まれており、なかなかの効果だと思います。
まあ、今、この作品を作ったらキーボードへの入力音になるのかも知れませんが。

その他、上川隆也さんや西川浩幸さんといったキャラメルボックスの看板俳優さんがちょい役で出演しているのも本作品の面白いところです。
特に上川さんは、その後の青春アドベンチャーでは、「サンタクロースが歌ってくれた」や「天使のリール」でそれなりに重要な役で出演されるのですが、本作品が放送された当時はまだまだ一般にはブレイクしていない時期でした。
そのためか本作品では実質的に序盤にしか登場しない端役です。

なお、本作品は「声」をテーマにしていることもあって、当時の青春アドベンチャーで頻繁に用いられたダミーヘッド(バイノーラル録音)を使用して制作されています。
このダミーヘッド、どこまで効果を実感できるかは微妙なところもあるのですが、ラジオドラマならではの表現をしたいという意欲は素晴らしいと思います。
本作品では序盤でタイトルナレーションの渡辺いっけいさんがダミーヘッドだということをしつこく強調しているのが印象的です。
最近の青春アドベンチャーではダミーヘッドという言葉を聞かないのですが、やっぱり制作するのが相当大変なのでしょうか?
また、ラジオドラマならでは言えば、この作品の選曲も相変わらず冴えています。
エンディングテーマがあの曲であるだけで、この作品の印象はかなり強まっていると感じます。
選曲を担当したのは先年亡くなられた(らしい)伊藤守恵さんですが、伊藤さんを亡くしたのは青春アドベンチャーにとって大きな損失であった気がしてなりません。

本作品、正直なところ、昔聴いた際にはさして面白い作品だとは思わなかったのですが、記事を書くにあたって再聴してみたところ、出演者は豪華だし、音の使い方など演出も意外とドキドキさせられるもので、意外と聴かせる内容でした。

さて、物語は波多野が不思議な力を使ってユーリの声を奪ってしまうあたりから大きく展開していきます。
自分の声が嫌いだった少女が声を奪われてどのような変わっていくのか、その辺は聴いてのお楽しみにしましょう。





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